「聖十字旗のもとに」

海の勇士/ボライソー(23)

表紙

アレグザンダー・ケント 著/高橋泰邦 訳
カバー 野上隼夫
ハヤカワNV文庫
ISBN4-15-040932-3 \880(税別)

 ナポレオンの強大な権力にも翳りの見えはじめた1813年冬。だが、ナポレオンの力が衰えるのと時を同じくするように、若く強い力が大英帝国に立ち向かう。それこそが新生国家アメリカ。フランスと呼応し、英国の補給線を絶とうとするアメリカに対し、遅まきながら英国もボライソー大将を指揮官に立てた高速フリゲート艦隊で対抗しようとする。だが、アメリカも英国の動きを察知、ネルソン亡き後英国最強の提督、ボライソーを抹殺すべく強力な艦隊を派遣してきていた………

 おなじみ"ボライソー"シリーズ最新刊。いよいよボライソーの余命は一年(彼が倒れる時期はシリーズスタート時にすでに決まっています)。優美な帆船同士の戦いの時代もそろそろ下り坂にさしかかろうかというこの時代、すでに海上の戦闘の主役は、巨大な戦列艦から快速で機動力の高いフリゲートへと移って行こうかというころのお話。先見の明に富むボライソーはいちはやく時代の変化を見抜き、新しい戦法をあみ出して行きますが、彼と共に戦う忠実な一団もその数はずいぶんと少なくなってしまい、残った仲間たちの中にもさまざまな変化が起りつつあります。

 ま、などということはずっとこのシリーズを読んで来ていれば先刻承知で、後はただ、このステレオタイプながらじっくり練り上げられたストーリーの流れに身を任せて行けばいいという、じつにありがたいシリーズ。時間を忘れて本を読むということの楽しさをたっぷり味わえる、大好きなこのシリーズの魅力は今回も健在。楽しく読めるんですがなぜか今回、訳がちょっと変かなあ、って気がしないでもないです。こう、メチャクチャな訳とかそういうんじゃないんです。いつもどおり名手、高橋泰邦さんが訳してらっしゃるわけだし、基本はいつも通りなんですが、なぜか微妙に"ちょっと感じが違うなあ"って気がして。漢字の使い方とか、そういう些細なところなんですけどね。気のせいなんだろうとは思うんですがしかしなにかこの(^^;)………

99/12/22

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