第二段階レンズマン

レンズマン・シリーズ(3)

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E・E・スミス 著/小隅黎 訳
カバーイラスト 生頼範義
カバーデザイン 岩郷重力+WONDER WORKZ
創元SF文庫
ISBN4-488-60318-1 \900(税別)

マイ・フェイヴァリット・スペースオペラ

 幾多の冒険の末、宇宙海賊ボスコーンの真の首領、アイヒ族の本拠地を壊滅させ凱旋したグレー・レンズマン、キムボール・キニスン。お互いの愛を確かめ合った相手と、新しい生活へ向けての第一歩を踏み出そうとしたそのとき、聞き間違えようのないあの声がキニスンの歩みを止めた。「待て、若者よ!

 キター!!!

 世の中には何冊か、ページを開いた瞬間に「うわあ」って思う本があると思うんだけど、間違いなくこの本はオレにとってそんな一冊。厨房のころ、少ない小遣いを工面して買ってきた4冊目のSF小説(ちなみにその前の3冊は、『銀河帝国の崩壊』、『銀河パトロール隊』『グレー・レンズマン』だったんだけどね)のページをめくった瞬間に飛び込んでくるこの台詞。いやーしびれた。かつての小西宏氏の訳されたものでは、いきなりこの台詞から、本書は幕を開けるのである(このへんの経緯は訳者、小隅黎氏の後書きを参照されたい)。もう、一行目からワクワクしたのを今でも覚えてる。

 一般的にこのシリーズの白眉は「グレー・レンズマン」だと言われてて、そのことに特に異論はないんだけどそれとは別に、こっちの気分をぐいぐい燃えさせてくれる要素、って点では、個人的には圧倒的にこっちに軍配を上げたいのだよね。どこに燃えるか?そりゃもう宇宙空間での艦隊戦の圧倒的なスケールのでかさ。地球にぶつけるために惑星(!)を持参して超空間チューブを通って太陽系に出現する数十万隻のボスコーン艦隊、待ち受けるパトロール隊もまた百万に及ぶ戦闘艦を展開し、完成したばかりの超兵器、太陽ビームをまさに稼働させようとしていた…。こんなシーンが読み始まって50ページ足らずで展開するんである。燃えるなと言う方が無理だよ(^^;)。

 お話的には前述したとおり、「グレー・レンズマン」の面白さの方が上だと思う。全体にこちらの方は、お話がうまくいきすぎる嫌いがあることは確かだ。前作のフォーマットをもう一度なぞってる感じもするし。ただ、あれから30年近く、そこそこの数のSF(小説でも、映画でも、テレビでも、マンガでも)を見てきたけど、未だに「第二段階レンズマン」での宇宙戦闘のスケールに達している物は無いと思う。SF的新兵器、戦闘の規模、敵味方の駆け引き、それから、なんというかな、「味」みたいなもの、これらが全部高いレベルでこっちを燃えさせてくれたのはこれだけだ。

 もちろん今回初めて、"レンズマン"を読む人はそこまでの盛り上がりは感じないだろうとも思うけど、個人的にはなんつーか、「やっぱこれだよなあ」って気分でいっぱいですわ。解説で金子隆一さんがとてもすてきなことを言っておられる。ちと長くなるが、

 SFファンなら誰にでも、自分とSFのもっとも幸福な蜜月時代を象徴する、忘れられない何冊かが必ずあると思う。たいがいの場合、自分の生活のほぼすべてを純粋にSFを読むという行為にのみ捧げる最初の熱狂期は、中学生時代前後に訪れる。その当時読んだSFの一節一節を、そのときの周囲の情景、自分の感情などもひっくるめて、今なお鮮明に覚えているという人は、もちろん今これを読んでいる皆さんの中にもたくさんおられるに違いない。とりわけ、日本のSF出版の黎明期を知っている現在四十代以上の方々にとって、《レンズマン》シリーズはひとしお特別な感慨を呼び起こす作品なのではないだろうか。

 ああもう、小数点以下十九位までまったくその通りですッ!

 最後に、言っても詮無いんだけどやっぱり言う。生頼画伯、このカバーイラストはレンズマンじゃないですぅぅぅ(泣)。

02/11/14

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