20世紀特派員 4

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産経新聞「20世紀特派員」取材班 著
カバーデザイン sakana studio
カバー写真 AP/WWP
扶桑社文庫
ISBN4-594-03113-7 \695

 3冊同時に発売された"20世紀特派員"。あえて統一テーマが何なのか考えてみるなら、イメージの世紀としての20世紀、って事になるのか。収録されているタイトルは、「冷戦が始まった!」「素敵な商売」「大観衆がやってきた」の3つ。得体の知れない恐怖に突き動かされた冷戦時代、あっという間に大衆の娯楽の王様になった映画、そして、アマチュアリズムから、巨大なビジネスの現場となったスポーツ、というテーマについて語られるわけだけど、冷戦が生んだ"赤狩り"という狂乱、順調に業績を伸ばしてきた映画産業に暗い影を落とす"赤狩り"の嵐、アマチュアの祭典であるが故、深刻な赤字に悩むオリンピックを救ったものが、映画に端を発する、映像による宣伝効果であった、とまあテーマが何となくリレー形式につながりを持っているあたり、狙ってるのか偶然なのかはよくわからないけどなかなかうまいことできている。

 この巻で述べられているのは、共産主義独裁のソ連という国の得体の知れない不気味さ、その得体の知れないものに、たいした根拠もなく恐れおののき、パニック状態に陥ってしまうアメリカの状況が見えてきてなかなか興味深い。

 興味深いと言えば、今まで知らなかった、とても大きな情報が(個人的には)あったんでお買い得巻は高かったな。それはドルトン・トランボという人。

 オレの大好きな映画の一つに、「ジョニーは戦場へ行った」ってのがあるのだけれども、この作品をつくったのがドルトン・トランボ。他にも「栄光への脱出」や「パピヨン」といった大作の脚本を手がけている人なのだけれども、この方、赤狩り旋風が吹き荒れていた時期に当局ににらまれ、投獄された経験もあった、てのは知っていたのだけれども、その後、正体を隠して密かにハリウッドに復帰していたそうな。で、その時期に使っていた匿名のまま、アカデミー脚本賞を二度もとってたんだって。しかもそのかた一方は、名画中の名画、「ローマの休日」だったんだって。おー、やっぱトランボはすげーや(^o^)

 全体に薄味(このシリーズ全体に言えるのだが、リサーチは充分すぎるくらいしっかりしているんだが、書き手の顔が見えてこないのがちょっと寂しいのだ)だったんだけど、知らなかったことを一つ教えてもらえたので、ま、収支トントンってことで。

01/4/14

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