幽霊船

異形コレクション(18)

井上雅彦 監修
カバーイラスト 藤田新策
カバーデザイン 奥沢潔(パークデザイン)
光文社文庫
ISBN4-334-73113-9 \762(税別)

 版元が変わっても快調に巻を重ねる"異形コレクション"、18巻目のテーマは"幽霊船"。水モノって事だと、"水妖"以来って事になるか。水モノ、とりわけ船がテーマって事になるとついつい期待してしまうわけですが、んー、"ホラー"って点から考えるならば、怖さに物足りなさの残るアンソロジーかなあ、って気がしないでもない。

 以前から、日本には海洋冒険小説がない、なんてな言われ方をしてきていて、それはとりもなおさず日本って国が、国を挙げての大航海時代を経験しなかった、って歴史的事実があるんだと思うんだけど、そういう下地が、海と船をテーマをした作品の、層の手薄さに反映されちゃうのかなあ、思ってしまう。ホラーの名手たちが集まった、このアンソロジーにおいても、やはりバリエーションの少なさと、しばしばネタがかぶる状態が起きてしまっているような気がしてしまう。川に浮かぶ船の話も、湖の小舟の話もいいけど、360°見渡す限り水平線、って世界で繰り広げられる恐怖譚を、もうすこし読ませてほしかったかな。

 そんな中で今回のお薦めは、編者である井上雅彦氏の「極光」、菊池秀行氏の「渡し船」(これはかなり重い)、ホラーと言うよりは良質のSF短編、って感じの草上仁氏、「パンとワイン」あたりかな。どうしようもなく退屈な作品、てのはなかったと思うから、これはこれでお買い得かも。

01/2/22

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