新・屈せざる者たち

表紙

辺見庸 著
カバー絵 西方久
デザイン 坂川栄治(坂川事務所)
角川文庫
ISBN4-04-341705-5 \590(税別)

 「屈せざる者たち」に続き、朝日新聞社のオピニオン誌、"RONZA"に連載された、辺見庸さんの対談集。今回も学会の研究者や評論家、弁護士などに混じり、畠山みどりさん、ジャイアント馬場さん、広岡達朗さんなどという、一癖ある人びとを相手にそれぞれの人なりの人生観、世界を見る目が明かされてまいります。

 前作のときに感じた、辺見さんの"しゃべりすぎ"のイメージも今回がかなりほどよく抑制が効くようになり、その分対談相手の皆さんの言葉に多く接することができるようになったのはありがたい。故・ジャイアント馬場さんのまとまったインタビューって、もしかしたらこれが最後になるんじゃないかな。「おさんぽ大王」での登場がこの後になるのか。それだけでも貴重といえますが、もちろん本書の価値はそれだけじゃあない。25億もの借金をかかえながら、破産を宣言せずその借金を返し続ける歌手、畠山みどり。山谷地区のホームレスを相手にボランティア活動を続ける水田恵、麻原彰晃の弁護を担当する三島浩司と、いずれ劣らぬくせ者論客との丁々発止。辺見さん自身が自らを決して行儀の良い人物であるなどと認識していないだけに破天荒な面白さがある。

 読んでいくうちにわかってくるのは、登場する対談相手の皆さんに共通していることが一つあって、それは「はじめに個人ありき」ってコトだと思います。組織のなかで安穏と、何よりも自分が所属する組織と、その組織内での保身のみに汲々としている限り、経済にせよ教育にせよ今現在の閉塞状況など突破できはしない、とする考え方には全く賛成。今必要なのは、多分、いろんな肩書をいったん取っ払って、個人同士が向き合い、意志を伝える行為なんでしょう。しんどいコトだと思うし、個人的にはそうでなければならないことであるのは判っているにもかかわらず、それを実践するのはまた話が別だったりするワケですが(^^;)。

00/8/3

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