ディック作品集
フィリップ・K・ディック 著/浅倉久志 他 訳
カバーイラスト 野中昇
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワSF文庫
ISBN4-15-011313-0 \740(税別)
ディックの1960年代中盤の短編集。量産型ペイパーバック作家と、その後のカルトSF作家のちょうど中間期にあたる作品群といえますか。スーパーコンピュータが国政をあずかる世界、最新鋭の軍事コンピュータが、突然狂った指示を出したとしか思えないパニック、人口問題とその解決のための冷凍睡眠、等々、今から見れば少々手あかのついた、と言える素材を、これまた手あかのついた、と言えそうな手法で描く作品集、一言で言って「古い」のですが、それは今読むからそうなんであって、30年以上前にこのビジョンを観た、ディックって人はやっぱたいしたもんだ。
本邦初訳の「聖なる争い」がなかなか、良かったです。前述した「狂った軍事コンピュータ」のお話なんですけど、ここには後のディックの一大特徴、「オレってホントにオレ?」ってテーマの裏返しとでもいえそうなお話。他の作品も、いかにも'60年代SFっぽい、オチの効いた中短編でなかなか楽しめました。昔のSFはいいですねぇ(^^;)
00/6/23