男たちの大リーグ

表紙

デヴィッド・ハルバースタム 著/常盤新平 訳
カバーイラスト 山下セイジ
カバーデザイン 岩田友仁
宝島社文庫
ISBN4-7966-1835-X \933(税別)

 1949年、不世出の大打者、ジョー・ディマジオを擁するニューヨーク・ヤンキースと、当代随一の名バッター、テッド・ウィリアムスを擁するボストン・レッドソックスは、ともに前年惜しいところでその手に取ることがかなわなかった、アメリカンリーグのペナントを奪取すべく、万全の態勢でシリーズに臨もうとしていた。ディマジオを中心とするベテラン勢の力とアメリカ第一の球団の誇りにかけて、優勝を奪取しようとするヤンキース、若手の台頭でめきめきと力つけてきた、ヤンキースの宿命のライバル、レッドソックス。両者の死闘を軸にした1949年のア・リーグは、球史に永遠に残る伝説的なシーズンとなったのだ。

 特に野球が好きって訳でもないんですが、アメリカ人の描く野球にまつわる物語はどれもこれもめったやたらに面白くって、ついつい読んでしまうんですが、本書はあのっ、「ベスト&ブライテスト」や「メディアの権力」など、骨太のルポルタージュで知られる、デヴィッド・ハルバースタムによる、1949年のア・リーグの激闘を綴る本。

 ジョー・ディマジオ、なんて言ったってさすがにワタシの歳では、モンローのダンナさんだった野球選手、ってこと、ヘミングウェイの「老人と海」やS&Gの「ミセス・ロビンソン」の中にその名前が出てくることぐらいしかわからん訳で、それ以外の綺羅星の如きスター選手にいたっては、かろうじてテッド・ウイリアムズとジャッキー・ロビンソンの名前にかすかに聞き覚えがあるぐらいなもんで、言ってみれば先代の若乃花がどんなスゴい相撲取りだったかを読むようなもんなんですが、それにもかかわらずこの本を読んでいると、50年以上も前のアメリカのボールパーク(敢えて"野球場"、とは書かない(^^;)の様子が鮮やかに眼前によみがえってくるような気がするのはなぜでありましょう(^^;)

 ハルバースタムはこの本で、たとえば一人の選手がいたときに、その生い立ちや考え方、私生活でどんなことがおこったかなど、ワキの部分を膨らませ、歴史的な試合をドラマチックに盛り上げるような、ルポルタージュの常套手段をとらず、ひたすら野球だけを描写します。500ページにわたるこの本のほとんどは野球なんですよ、ただひたすら。これがもう、読んでてやたらに楽しくなってくる(^o^)。

 アメリカさんが野球を愛する気持ちってのは、日本人が野球を見て楽しむのとはちょっと違うんでしょうねえ。なんかちょっといいですねえ、こういうのは(^^;)。野茂や伊良部やイチローがむこうで野球したいと思う理由もわかろうってもんですわ(^o^)

 そんなアメリカ野球もきっと、この時代が一番輝いていた時期だったのだろうな、というちょっと淋しげな気分になってしまうところもあって、なかなか複雑なところではあるんですが(^^;)

 それどころか、テレビを通じて得た名声は消えるのも早かった。映像の洪水にファンが飽きてしまうのだあまりにも多くのスポーツのシーズンが重なり合って画面を賑わせ、同じ選手のプレーの録画が何度となく放映される。ラジオが聴くものの想像力をかきたてることで選手の魅力を高めてきたのに対し、テレビは憧れのスターを世俗の次元にまでおとしめてしまった。

 本書がひたすら野球だけを描写していることと、この一文の間には意外に深いつながりがあるような気がしますね。思えばテレビの登場と共に、真の意味でカリスマ的なスーパースターは軒並み殺されていったと言えるのかもしれませんねぇ(^^;)

00/5/31

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