北上次郎 著
カバー ビデオ・リチャード
角川文庫
ISBN4-04-347102-5 \743(税別)
日本で冒険小説を語るときにこの人の存在を抜きにはできないのが北上次郎さんでしょうね。その北上さんが「本の雑誌」で、1979年から1994年の間に読みまくった新刊に次々とコメントを付けまくる本。一人の人間が、よくもまあこれだけの本を読めるもんだ。まさに「めったくた」なハイペース。しかもその読了した本に対する短く鋭い評がすばらしい。
とにかく出る本出る本読みまくって、それらをまとめてコメントする訳ですから、古いほうの本なんか覚えていられるんかいななどと余計なお世話的心配までしてしまうんですが、北上さんは読んだ本のエッセンスを抽出するのがとても上手。ですからわずか2、3行のコメントでも、その本の魅力がこっちに伝わってくるんですね。こういうのは本読みとしてお手本にしたいとしみじみ思います(が、むずかしいんだよなぁ)。
基本はオモシロ本の紹介なんですが、単なるオモシロ本ウォッチングにとどまらない、本を通じてみる世相の批評にも冴えたものがあり、本の紹介本であると同時に、そのときどきの文明時評としてもなかなかなものなのではないかと。1991年のこんな文章はいかがかな。
なぜマスコミを含めた観客があれほど熱狂するのか。競馬は走破時計でないと承知しているが、そしてオグリを決して嫌いではないものの、その反応はあまりに常軌を逸しているように思える。みんなが勝手に感動したがっているとしか思えない。昨年のダービーで、ダービー・ジョッキー中野栄治に対する突如沸き起こったナカノ・コールにしても同様。共通体験を持つことに過剰に反応したがる最近の観客の生理は、アホらしいというよりも恐ろしくすらある。
うーむ、常々オレも思ってることなんだけど、オレにはこういうふうに書けないなあ。自信なくなっちゃうなあ(^^;)
00/5/17