クリストファー・プリースト 著/柳下毅一郎 訳
カバー写真提供 ギャガ・コミュニケーションズ
デザイン 木場貴信(オクターヴ)
竹書房文庫
ISBN4-8124-0618-8 \590(税別)
アンテナ・リサーチ社が開発した画期的な体感ゲーム、"イグジステンズ"。人体に直接埋めこまれた"ポッド"に直接ゲーム機を接続して得られるリアルな仮想現実のなかでプレイする、さまざまなゲームのなかでも、この"イグジステンズ"はこれまでのゲームたちとは明らかに一線を画したものになるといわれていた。アンテナ・リサーチに所属するスター・デザイナー、アレグラによって開発されたこのゲームの発表セレモニーには、熱狂的なファンが集まり、そのお披露目を今や遅しと待ち受けている………。
デヴィッド・クローネンバーグ監督の新作映画のノヴェライズ版。なんとこれを担当しているのが「スペース・マシン」や「ドリーム・マシン」のクリストファー・プリーストって訳で、少々興味を惹かれて読んでみました。
これから映画が来るってことで、あまり内容に突っ込むのは避けますが、ま、映像を文章に置き換えたことでどうしても読み物としては印象が薄味になってしまう恨みはあるものの、お話自体はなかなかおもしろいと感じました。実にクローネンバーグが好きそうな題材です(^o^)。ヴァーチャル・リアリティがめざす行き着き先ってのは、おそらく本書でも描かれているような仮想と現実の区別がにわかにはつきかねる世界ということになるのだろうと思います。それはつまり、とりもなおさずディック的な世界、あるいは"マトリックス"的世界とでも言えますか、そういう世界を描写していくことになるのだろうな、という感じがします。その辺の確かなモノが何か解らない世界を、プリーストもうまく表現していると思うんですが、それとは裏腹にお話のなかで描かれるゲームの内容については、あまり突っ走ったところがなく、逆に古くさいゲームの方法論に縛られちゃってるかな、てな感じは持ちました。本来映像で表現したらそれなりにリアルに感じられるものが、文章になったとたんに陳腐になってしまう、っていうこともあるのかもしれないですけど。クローネンバーグがどういう絵を作ってくるかを想像しながら読むと楽しいのかもね。
でも久々のプリースト作品ってことで、気負って読んだオレっち的にはがっくりだったですねー(苦笑)。
00/4/27