ブレードランナー2

レプリカントの墓標

表紙

K・W・ジーター 著/浅倉久志 訳
カバーイラスト 木島俊
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワSF文庫
ISBN4-15-011307-6 \740(税別)

 ネクサス6シリーズとの死闘の末、愛するレプリカント、レイチェルとの密やかな生活を選んだ腕利きのブレードランナー、デッカード。4年の寿命しか与えられていないレイチェルとの暮らしを少しでも引き伸ばすため、レイチェルを冷凍睡眠状態に置き、大部分の時間を眠り続けるレイチェルと共に暮らすデッカードのもとに前ぶれもなく現れた訪問者、それはレイチェルにうりふたつの女性だった………

 屈指のカルト映画、ブレードランナー。続編を望む声(もちろん望まない声も)が後を絶たないこの作品、ではだれが続編のストーリーを書くのか、という点に置いて、しばしばディックの後継者という言われ方をする"ドクター・アダー"などで知られる作家、ジーターの名前が上がった時には、かなりツボをついた人選かもしれんな、などと感じたモノです。映画のほうがどうなったのか、僕はよく知らないのですけれども、ジーターの続編のほうはこうして文庫で読むことができるようになりました。

 さて興味津々で読んでみた本ですが、うーむこれはなんといったモノか(^^;)………

 映画をご存じの方であれば随所でニヤリとしてみたり、おおそう言えば的な気分に浸れたり、意外にディック的な「オレってホントにオレ?」的世界を楽しめたり、決して悪い出来ではないと思うんですが、どうもこうしっくり来ないものを感じてしまいます。まず、これが映画の脚本として書かれた小説であるとするならば、本書を読みながらイメージに浮かぶ絵というのが、どうも前の"ブレードランナー"から繋がって来ない感じがあるんですよね。なんというか、ここで語られる世界は、"あの"ブレードランナーの世界の後日譚の世界にしてはあまりにその世界観が異なったイメージがある、ってこと。

 ではこんどは、これが"ブレードランナー"にテーマを借りたジーターの作品としてはどうなのか、というと、これがまたジーターの作品が本来持っている、ダークな魅力って点でかなり劣っていると言わざるをえないのではないか、って感じで。

 お話としての面白さはしっかりあるし、前の映画でおなじみの人物やアイテムなども次々と登場して、はっきりいって楽しめる作品なんですが、でも、これで久々に"ブレードランナー"を体験したなあ、って気にはなれなかった、てのも正直なところでありまして。うーむ、って感じです。

 とりあえずタイレル本社ビルがなぜああいうデザインになっているのかがわかったのは収穫だったんですけどねえ(^^;)

00/4/24

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