「二人がここにいる不思議」

表紙

レイ・ブラッドベリ 著/伊藤典夫 訳
カバー装画 木内達朗
新潮文庫
ISBN4-10-221105-5 \705(税別)

 えー、世の中には通勤電車で読んだりしちゃあいけない本ってのがある訳で、ブラッドベリのこの短編集なんてのはそういう類いの本なんではないかなあ、と思ってしまいます。ではどう読むか。ゆったりした椅子に座り(畳でごろ寝は不可)、ビル・エヴァンズのピアノなんぞを小さくならしながら(大音響の"マトリックス"サントラCDなどは不可)、お気に入りのお酒(何でもいいけどビールとワンカップは似合わないかも)を横において一日一つだけ、読んで残りはまた次の日に読む、って感じがよろしいのではないかと(^^;)。

 どこかで書いたかもしれないですけど、ブラッドベリってどちらかというと苦手なタイプの作家さんです。掴みどころがなくて、叙情豊かで、どこかあやふや、って感じがしてしまいまして。「たんぽぽのお酒」症候群ってわけでもないんですけどね(苦笑)。

 とはいえそこは米国を代表する小説家ブラッドベリと、日本を代表する翻訳の名手、伊藤典夫さんが組んでできあがった本、「ぶらっどべりぃ?」と尻込みせずに読んでみると、やっぱりいいんだな、結構これが(笑)。

 名作「火星年代記」につながる感じのある、火星を舞台にした叙情SF、ふっと背筋に冷たいものがはしるホラー、ふと心温まる(また別なときには苦いものの込み上げる)恋愛小説などなど、バリエーション豊かに描き出されるブラッドベリ・ワールドを存分に楽しむことができる本。電車のなかで読んだことだけが心残りではありました(^^;)

00/3/14

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