Sheryl Crow & Friends: Live from Central Park
アルバム評
Bill Murrayに紹介されて演奏するEveryday is A Winding Roadは来日公演の記憶をすぐに呼び戻してくれる。Sherylの声は冒頭で少しかすれているが、間奏部での"One, two, shake your ass!"とのかけ声も一際威勢がよく、Sheryl自身ノッテいるのがよくわかる。観客が"Everybody gets"の後の言葉をちゃんと返しているのが嬉しい。この曲は実際には"Friends"を迎えた第2部のトップの曲で、Sarah McLachlanのバンドメンバーで夫の、Ash Soodがパーカッションを叩いている。
My Favorite Mistakeを挟んで3曲目のLeaving Las Vegasは今まで聞いたことのあるライブテイクの中でもトップクラスの出来。日本公演では演奏しなかった日もあった曲だが、Sherylの声がダイレクトに聞こえるライブバージョンはやはりアルバムバージョンとは比較にならない。それを裏付けるように演奏後の観客の反応も一段と大きい。ファルセットを使うところ等はライブならではといえるもので、Sherylは非常に丁寧に歌っている。
観衆の声援が続く中演奏するのは最初のゲスト、Dixie Chicksを迎えてのStrong Enough。最初のパートをSherylが歌い、以降はDixie ChicksのNatalie Mainesにリードを任せてSherylはコーラス主体になるが、曲の最後ではSherylがファルセットで歌って締めている。かん高い声を持つNatalieは時々トリッキーな歌い方となって声が裏返ることがあるが、新鮮な魅力を加えることに成功している。
この後2曲、"Friends"なしの曲が続くが、実際には"Friends"を迎える前にSherylバンドだけの演奏で行った第一部の演奏から取られている。
ライブで最も映える曲の一つ、It Don't HurtはSherylバンドだけの演奏。Sherylのハーモニカがなんといってもこの曲のハイライトだが、何度聞いても飽きないイントロからこの曲は全編かっこいい。この曲の最後のインストパートなど、Sherylの曲の中でもSuperstarと並んでヘッドバンギングが似合いそうな気がする。欧米のニュースメディアでは誤って"new song"と伝えられたが、Sherylの演奏前の曲紹介での発言が誤解されたのだろう(もちろんThe Globe Sessionsの収録曲です)。次のA Changeは実際には1曲目に歌われた曲で、オープニングだけに観衆の声援が凄い。
そしていよいよここから"Friends"を迎えての曲が続く。ここからはだいたいの曲でSherylはコーラスに回っている。まずFleetwood Macのフロント・ウーマン、Stevie Nicksを迎えて、演奏されるのはGold Dust Woman。Stevieのソロツアーでも演奏される曲で、Stevie NicksにとってだけでなくFleetwood Macにとっても重要な曲と言える。The DanceにおけるStevieのこの曲の歌いっぷりは(ちょっと怨念がかって^^;;)印象深かった。名作Rumoursに収録された曲で、Rumoursの収録曲中でも異彩を放つ、ドラッグの影響も感じさせる歌。ほぼいつも通りのアレンジで演奏されているがLindsey Buckinghamのギターがないぶん幾分おとなしめか。もうちょっとアドリブで2人の掛け合い等、変化をつけても良かった気もする。しかしこの二人が同じステージに立って共演しているのを生で見られるのなら私は幾らでも払います。
If It Makes You HappyではChrissie Hyndeと共演しているが、低いドスの効いたChrissieの声と芯の強いSherylの声は意外な相性の良さを感じさせる。リードを交互に取りながら仲良く歌っていく様子は映像で是非見たいと思わせる。このライブでのハイライトの一つと言えるだろう。
All I Wanna Doは実際には最後の最後に歌われた。最近は時々歌がラフになることもある曲だが、"Friends"達との共演の余韻を残しつつ堅実な演奏を聞かせてくれている。最後の方の観衆の大歓声がこのコンサートに対する満足度の高さを示している。
さりげなく出てきてMCに続いて演奏を始めたように聞こえるのはRolling StonesのKeith Richards。演奏しているストーンズ・ナンバーのHappyはSherylの初来日公演でも歌われた歌だが、この曲をこの二人の共演で生で見られるアメリカのファンは非常に幸せだと思う。Chrissie Hyndeも加えて3人でボーカルを取っている。
The Difficult KindはSarah McLachlanとのデュエット。Chrissie Hyndeの時ほどは声がマッチしてない感じはするが、二人がデュエットしている様は音声だけではあまりにもったいない。こういうのを聞いてしまうと、日本では少し格差があるもののアメリカでは同等の人気を持つこの二人の共演が日本で見られたら!と思わずにはいられない(当初予定されていたLilith Fair in Japanが実現されなかったのは甚だ残念)。しかしこの曲でのSherylの歌は聞き込むほどに味があり、感動的。シングルカットされるという話があったが、どうなったのだろう?
次のWhite RoomはCreamの代表曲でEric Claptonを迎えての演奏。SherylはClaptonと交互にボーカルをとっているが、この曲の場合歌は付加的な要素と思わせる、Claptonのギターが唸る。当日はJimi HendrixのLittle Wingも演奏しているが、Claptonのギターは自曲ということもあってこちらの方が遥かにいい出来でしょう。
There Goes the Neighborhoodは当日は本編の最後で演奏されているが、やはりライブでこそ本領を発揮できる曲だと思う。ストーンズ的なタメを感じさせる曲だけに、Keithがゲストで演奏しても良かったのではと思ってしまう。この曲でみんな一旦下がってアンコールとして演奏されたのがTombstone Blues。Bob Dylan作のこの曲は出演者全員が参加してのジャムで、Sheryl, Dixie ChicksのNatalie, Chrissie Hynde, Sarah McLachlanの順でリードをとっているが、やはり一際際立っているのは主役の声。Stevie Nicksの声が聞けないのは少し残念(歌ってない時はいつもタンバリン。。。)。SarahよりはむしろStevieの方がこの曲には合っていたのではないだろうか。
やはりこのコンサートはビデオを完全版で正式発売するべきでしょう。