Kawasaki Live in Japan 02.07.89
(アルバム, '03)
RCA, 82876 550882(英盤CD)
曲目
1. Winter Rose/Allelujah
2. The Waltz Continues
3. The Moon Is Mine/Get Happy
4. Don't Be A Stranger
5. Dangerous
6. I Know Why the Willow Weeps
7. Home to Heartache
8. Fear Is the Enemy of Love
9. Find My Love
10. Broken by A Breeze
11. Whispers
12. Goodbye to Songtown
13. Fairground Attraction
14. Clare
15. Perfect
16. Moon on the Rain
(ボーナスディスク)
1. Watching the Party
ここ(全曲)で試聴出来ます。
歌詞はMark Nevinのオフィシャル・サイトに掲載されてます(DiscographyまたはSongsからどうぞ)。
クレジット
(ソングライティング)
1〜10, 12〜16. Mark E. Nevin
3(Get Happyのみ). H.Arlen & T.Koehler
11. Eddi Reader
(プロデュース)
Fairground Attraction
解説
Fairground Attractionの唯一の来日公演となった'89のツアーから、7/2の川崎クラブチッタ公演を収録したライブ盤。これまで公式に発売されたライブ音源は、ビデオのLive at Full Houseを別にすればわずかに3曲のみであったので、待望のライブアルバムと言える。しかもこのライブでは、後にSweetmouthとして発表されることになる当時未発表の新曲8曲がEddiによって歌われており、このアルバムではこれらのすべてが収められている。来日公演後間もなくバンドが分解してしまったため(Markのライナーノートによると、レコーディング3日目だったらしい)、Fairground Attractionの名で公式に発表されることはもう永遠にないものだと思われていただけに、今回の発売は画期的と言うことが出来る。
この日のコンサートはGraham Hendersonによるアコーディオンのイントロで始まり、最後のMoon on the Rainまで21曲が演奏された(こちら参照)。このCDにはその時の演奏が完全収録されているわけではないが、当日演奏された自作曲のほとんど(A Smile in A Whisperが入っていないのは惜しい!)はCDに入るだけ収められており、しかも歓声等をうまく使って曲間がなめらかにつながれているので、このときのライブをその場で体験しているような感覚を味わうことができる。音質的にも満足できる出来映えとなっていて、Eddiの歌声や各楽器の音はクリアに聞こえるし、観客の歓声や拍手も臨場感たっぷりに収録されているので、Eddiの緩急を付けた表現力溢れる歌唱や、聴かせどころを心得たバンドのバランスの良い演奏をたっぷりと楽しむことができる。
Fairground Attractionのライブバンドとしての魅力は、ClareからPerfectにかけての盛り上がりを聞くだけでも理解できるだろうが、The Waltz ContinuesからThe Moon Is Mineにかけての淀みない流れや、Home to HeartacheからFind My LoveにかけてのMarkのギターを核とした、バンドとしてまとまった演奏、スローなナンバーでのEddiの歌声とそれを引き立てるバンドの演奏も聞き逃せない。
Eddiの声は当然のことながら今よりも元気に溢れており、Fear Is the Enemy of Love、Clareなどといったアップビートな曲ではとてもはじけた歌声(とパフォーマンス)を聴かせてくれる。対照的にAllelujahやBroken by A Breeze、Whispersといった曲ではしっとりとした歌声を聞かせてくれ、当時からEddiが幅広い表現力を持った優れたシンガーであったことがよく分かる。
今回収録された”新曲”群での演奏は、ストリングスなども交えてスタジオで丁寧に音を作り込んだSweetmouthのバージョンとはだいぶ趣を異にする。全体的に明るく開放的なEddiの歌声が大きな違いを生んでいるのは当然だが、Graham Hendersonのアコーディオン、そしてRoger Beaujolaisのビブラフォンの存在も大きいと感じる。ツアーメンバーを活かすようなライブならではのアレンジをしたというのはもちろんあるのだろうが、Sweetmouthのアルバムでは、Roger Beaujolaisはやはりビブラフォンで参加しているものの、このライブで聞かれるほどは目立つ使われ方をしていない。Graham HendersonのアコーディオンはSweetmouthのアルバムでも大活躍しているが、このライブで聞かれる演奏の方がより明るく、ライブならではの躍動感に溢れている。たとえライブだったとしてもBrianだったらこのようなメリハリのついた演奏は想像しにくいが、声質が明るく多彩な変化を付けられるEddiだと、このような音作りが活きてくる。そう考えると、SweetmouthでMarkは、Brian Kennedyの声を活かすように全体のトーンを低音主体とするように配慮したように思われてならない。
EddiとBrianの持ち味の違いは、Home to HeartacheやFear is the Enemy of Love, Broken by A Breeze, Goodbye to Songtownといったところで顕著に感じられる。Home to HeartacheでのEddiの歌声は「泣き笑い」という表現がぴったりで、ひたすら伸びやかな歌声を聞かせながらも声の高低や強弱を変えることで、明るい曲調なのに聞いていて切なさをも感じさせる。Fear is the Enemy of Loveでの突き抜けるような楽しさは、Eddiの明るい歌声があってこそだし、Broken by A Breeze(いまのEddiがこの曲を歌ったら、The Right PlaceやKiteflyer's Hillなどに匹敵する出来となるであろうことを私は疑いません)でのゆったりと丁寧に歌うEddiの歌声は、Moon on the Rainなどと同様に聞き手の想像力を刺激する。これと対照的に、Goodbye to Songtownで聞かれる歌声は、まるでR&Bの歌を聞いているかと思わされるほど力強い。この曲は、Eddi自身が「当時一番歌うのが好きだった曲」と語るだけあって、他の新曲群よりも歌い込まれているという印象を受ける。これらの曲でのEddiの歌声を聞くと、もしセカンドアルバムのレコーディングがうまくいっていて、Eddiのボーカルでこれらの曲が正式に発表されていたら、とあらためて思わずにはいられないが、だからといってSweetmouthの存在価値が下がるわけではない。このアルバムは、楽しかったコンサートの貴重な記録として楽しむのが、やはり正しい聞き方なのだろう。
ブックレットには歌詞が載っていないが、その代わりにMarkとEddiによるライナーノートが載っていて、Markの文章では解散前後の状況についても簡単に触れられている。国内盤の初回盤ではさらにWatching the Partyが収録されたボーナスディスクが付いていた。
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