Fairground Attracion: "Live at Full House"
− かくも短き蜜月
山下えりかさんも以前書いていたし、最初で最後になった来日公演の時も思ったし、このビデオでも再確認したのだけど、やっぱりエディってどっかヘン。”おばあさんが若かった頃着てたお古”みたいなフレアのスカートで、フォークダンス風の踊りを踊る彼女。今の日常的な感覚からもポップ・ミュージック界の価値基準からもちょっとズレたノリがある。僕は彼女を見ていると、カポーティの「クリスマスの思い出」を始めとするいくつかの作品に出てくる小人症の男と暮らすカフェの女主人を思い出す。本当にピュアで無垢であるからこそ、社会のひねた決まり事に同化することが出来ずにそのまま歳を重ねてしまった女。エディもそうした女性の一人ではないのだろうか。彼女のたたずまい、うたに満ちた哀しみはそんないびつさから生まれているように思う。
けれども、フェアグラウンド・アトラクションのライブには、そんな彼女を本当に素直に受け入れたくなる微笑ましい雰囲気が漂っている。このビデオの中でも、しっかりとしているのだけどきちんと肩の力の抜けた生楽器主体の演奏に、客席では男女一組になって、ダンスがはじまる。そしてステージ上のエディもまた、本当にそれがうれしそうだ。あっという間に過ぎ去ってしまったこのバンドは、エディにとっての”クリスマス”や”カフェ”であるような、実に短く、大切な時間だったに違いない。
評者:川崎和哉
from rockin' on '90/10号