宝くじ

「あなた、あなたっ!」
  俺は、妻の呼ぷ声で目をさました。
「ん?なんだ?日曜の朝くらい、ゆっくり寝させてくれよ」
「大変なのよ!おとなりの鈴木さんが宝くじに当たったの!」妻が
大きな声で言った。
「なんだ、よかったじゃないか。おやすみ」俺は、ふとんを頭から
かぷった。
「なに言ってんのよ!あの例の宝くじに当たっちやったのよ!」
「例のって?」俺は、ふとんから頭だけ出して訊いた。
「なにねぼけてんのよ!あの、逆宝くじじゃない!ほら、買うとき
にお金もらえて、当たると逆に、お金払わないといけないという…」
「そんなのあったっけ?」
「もーいやだ。この人ったら。この前も、借金をかかえた零細企業
の社長が、やけくそで100万ぱかり買ったら、1億当たっちゃっ
たっていう話、したじゃない!」
「そう言われれば、聞いたような気もする。けど、なんで鈴木さん、
そんな宝くじなんかに手を出したんだろ?お金に不自由しているわ
けでもないのに」
「運の悪い人っているのよねえ。鈴木さん、その日、買い物の帰り
にお財布を落としちゃったらしいの、それで、電車賃欲しさに1枚
だけ買ったら、それがなんと1000万の大当り!はんとに気の毒
だわ」
 妻は、とてもうれしそうな顔で言った。

「あなた、あなたっ!」
 俺は、妻の呼ぷ声で目をさました。
「あ、なんだ、夢か…。しかし変な夢だったなあ。あのなー」
「そんなことより、大変なのよ。おとなりの鈴木さんが宝くじに当
たったの。それも1000万!ついこの間も、お財布拾って、お礼
もらったぱかりなのに…。運のいい人っているのよねえ」
 妻は、とてもくやしそうな顔で言った。