舌切り異聞

 あれから3年後、すずめのお宿にて。

「あの、おばあさん2人はあれからどうなったんじゃ?」
 長老らしいすずめが言った。
「いいおばあさんの方は、小さいつづらに入っていた大判小判で死
ぬまで幸せに暮らしました」
 若いすずめが答えた。
「おお、そうかそうか。それはよかった。ん?死ぬまでって、おま
え、まだ3年しか経っておらんじゃろうが」
「正確には殺されるまで、ですね。大金があるのを知った盗賊一味
にばっさりと...」
「そうか、それは気の毒なことをしたのう。金なぞ渡さねば貧しい
ながらももっと長生きはできたじゃろうに。して、もうひとりのば
あさんは?」
「大きいつづらを帰る途中で開けてしまい、中から出てきたオバケ
に驚いて腰を抜かしました」
「それは知っておる。その後じゃ」
「出てきたオバケを再びつづらに閉じ込めると、そのまま家まで持
ち帰ったそうです」
「はて?何でまたそんなことを?」
「見せ物小屋を開いて儲けるためですよ。それが結構あたって、今
じゃ全国に20の支店がございます」
「いくら大きいつづらでも、そんなにオバケは入っておらんかった
じゃろ?」
「悪知恵だけは働くばあさんでしたから、ほとんどの小屋では作り
物や扮装をした人間を使ってるそうです」
「あのばあさんらしいわ。どうせあくどく稼いでおるんじゃろう」
「怖いもの見たさの町民が連日押し寄せて、小さいつづらに入って
いたお金の何十倍も稼いでいるとか」
「うぬぬぬ。それでは舌を切られたチュン吉も浮かばれんのう。な
んとか仇を討ってやらねばのう」
「わたしもそう思います。チュン吉も、いいおばあさんも不憫でな
りません」
「どこぞの映画のように、仲間を1000羽ほど集めて襲うという
のはどうじゃ?」
「それは絶対に駄目です!」
「なぜじゃ?」

「人間が言ってました。今や飛ぶ鳥を落とす勢いだって」