正義の味方

 それは、クリスマスの夜の出来事。地球上に一機の円盤が飛来し
た。
「ここだよ、我々が侵略しようとしている地球という星は」宇宙人
の隊長が言った。
「ヘえー、なかなか住みやすそうな星ですね。我々の苦手な、あれ
もないし」操縦担当が言った。
「いや、ないわけじゃない。今は、この星が、夜の状態にあるだけ
なのだ。いずれにしろ我々は地底に住むしかあるまい。もちろん、
邪魔な生き物は処分してからだが」隊長は長い爪をさすりながら言
った。
 ウィーン。ハッチを開けて生命体の調査に行っていた小型円盤が
帰ってきた。
「おお、早いではないか。地表まで行くのには、もう少し時間がか
かると思っていたぞ」
「はあ、実は、地表までは行ってないんですよ。燃料満タンにして
おくの忘れちゃったもんで。一度引き返そうと思ってたところに、
こいつが飛んできたもんだから、これ幸いとぱかりに捕まえてきた
というわけなんです」
 調査員が連れてきたのはサンタクロースだった。
「ほう、この星一番の高等動物である人間ではないか。いや結構、
結構。で、どうだ、文明の方は進んでいそうか」
「それが、よく判らないんですよ。こんな妙な乗り物で空飛んじゃ
うから、さぞ進んでいるのかなと思えぱ言葉の方はそれはどでもな
さそうだし」調査員は、ソリとサンタクロースを交互に見ながら説
明した。
「しゃぺらないのか?」
「いえ、しゃぺらないことはないんですが、何を訊いても『メリー
クリスマス』としか言わないんですよ」
「ううむ。で、そいつが持っている袋は何だ?」隊長は、プレゼン
トの袋を指差した。
「あ、これですか。母船に戻ってから調ぺるつもりでしたので、何
が入っているのかわかりません」
「よし、調ぺてみよう」
 調査員が袋から取り出した物は、おびただしい数のおもちゃ。
「何だ、これはいったい」隊長はおもちゃの中から1つをつまみあ
げると首をかしげた。「人間に似てはいるが、ずいぷんと小さい」
 隊長があちこちいじりまわしていると、究然、そのおもちゃの一
部が、ピカッっと光った。
「うわあ、何だこれは。人間というのは、こんな恐ろしい物を持ち
歩いておるのか。退散だ、ひとまず逃げるぞ」
 モグラから進化した宇宙人達は、サンタクロースとトナカイとソ
リとおもちゃを捨てて、一目散に自分の星へ逃げていった。

「ママー、サンタのおじさん、ビームマンの人形プレゼントしてく
れるかなあ」
「そうね、坊やがいい子にしてれぱ、きっとね。だから、もう、ね
ましょうね」
「うん−。ビームマンはすごいんだよ。目からスーパービームを出
して、悪い宇宙人なんか簡単にやっつけちゃうんだから」