乱数

 三木老躯(みきろうく)博士は数学の権威である。現在彼が取り
組んでいるのは、某菓子メーカーから依頼された、特殊な乱数の作
成である。
 いい遅れたが私は、博士の助手の、寺音魯運(じおんろうん)と
言う者である。

「ついにできたよ、寺音くん」博士が言った。
「おめでとうございます」
「わしはこれを、三木乱数と名付けようと思うんじゃが、どう思う
かね?」
 博士は、うすら笑いを浮かべている。
「なんか、そのまんまという気もしますが、いいんじゃないですか。
博士が発明されたんですし。ところで、そろそろ僕にだけは、その
乱数をお菓子のどんなところに使うのか教えていただけませんか?」
 博士は、今まで身内にも詳細は明かしていなかったのだ。
「うむ。もういいじゃろう。これは、ある菓子のサイズや色をラン
ダムに決定するための乱数なんじゃよ」
「サイズや色をですか?なんか、ちっともわかりませんけど、いっ
たい、どんなお菓子に使用するんですか?」
「キミはいくつかね?」
「はあ、今年25になりますが」
「そうか、その年だとわからんでも無理はないかのう」
 博士は、遠い目をしてたそがれている。
「は?どういうことですか?」
「昔は、ミキ・ラン・スーといえば、誰でもキャンディーを思い浮か
べたものなんじゃが。こりゃ、駄洒落にもなっとらんかのう」

(了)


<あとがき>

読者層を限定する駄洒落で申し訳ない。
昔、普通の女の子に戻りたいといって解散した彼女達は、結局…。