かびチップス

『こんにちは
 かびチップスおいしく食べさせてもらってます(^.^)
 最初見た時は、かびの模様があまりにもリアルで、まずそう(ご めんなさい!)とか思っちゃったけど、ポテチ命のわたしにとって は、キモい模様のおかげで食べ過ぎが防止できて助かってるのだ。
 白かびはデンプンかなんかでしょ?黒かびはゴマかな?青かびは 青海苔だよね!
 どれも、本当のかびみたいで、驚きです(゚-゚)
 そうそう、最近は恥かしい話だけど、お通じもよくなって、ダイ エットにも成功したんだよ!
 もう、かびチップスさまさまって感じですm(__)m
 評判あまりよくないみたいだけど、私はずーっと買うつもりだか ら販売やめないでね!

 1ファンより』

「部長、こんなメールがきてますが...」
 部下のひとりが、僕のところへプリントアウトしたメールを持っ てきた。
「キミだったよな、このアイデアを出したのは。食欲を押さえるカ ラーリングの食品も、消費者のニーズがあるに違いないとか言って」
「ええ、この飽食の時代にマッチしてると思ったんです」
 「理由はどうあれ、食品会社が食欲を押さえてどうするんだとい う意見が大多数だったのに、僕がゴーサインを出したのは、実は他 に理由があったからなんだ」
「と言いますと?」
「昨年の時点で、今年の夏の異常高温は予想がついたんだ。おそら く、かびが生えたとかいって消費者の苦情が殺到する ということ も。そうすると自主回収やらなんやらで当社のような二流の会社は 倒産しても不思議じゃない」
「では、かびが生えても気づかれないように、かびチップスを売り 出したというのですか?」
「そのとおり。木の葉を隠すには森の中というわけだ」
「なんか、企業倫理を逸脱してるような気もしますが、この業界で 苦情がきてないのはうちだけだという事実を考えると、正 解だっ たんでしょうね。それにしても、私の発案にはなかった、白かび模 様までくっつけてしまうなんて、用意周到としか言 えません。感 服です」
「ごほん。実は、白かび模様はつけていないんだよ」
「えー!!じゃあ、この子のメールにある白かびって、あっ、そう か!お通じがどうのこうのって関係ないと思ってたけど、本当にか びが生えたの食べたから下痢しちゃったんだ」
「しーっ!そのための偽装なんだから、ほっときゃいいの。相手も 感謝してるんだから。そんなことより、とかげチップスの開発急い でくれよ」