ドミノ夫婦

「おい、どうだ、観客は集まってるか?」
 俺は、部下に言った。
「ええ、すごい数です!建物をぐるっと一周するぐらい並んでます !」
「そりゃそうだろう。世界新記録達成の瞬間を目のあたりにできる なんて、そうあるもんじゃないからな」
「しかし、ノミの夫婦ならぬドミノ夫婦ですか。夫婦を順番に並べ てドミノ倒しをやるなんてこと誰が考えたんでしょうね?」
「誰が考えたなんてことは、どうでもいいんだ。肝心なのは、今日 俺が記録を作れるかどうかだ」
「5000人ですからね。これが成功すれば、当分破られない記録 になりますね」
「だからこそ、夫婦限定で観客を募ったにもかかわらず、大勢の客 が来てくれるんだ。よし、そろそろ会場に入れるぞ!」

「では、みなさん。順序よく入場してください。席は十分にありま すので、おさないで…あっ!」
「大変です。大変です!観客が将棋倒しになってます!」
「どうしたんだ!整理係はなにをやってるんだ!ケガ人でも出たら どうするんだ!」
「そんなことより、もう1万人以上倒れてしまってるんですけど」