虐待
子供を虐待する親が増えているという。
子供が可愛くない親なんかいない−そんな決まり文句も最近では
通用しなくなってきた。
虐待といっても、体罰やせっかんに代表される肉体的虐待と、言
葉でののしったり、さげすんだりする精神的虐待があるが、今日相
談所の職員をやっている私のところを訪れた少女は後者であった。
「お嬢ちゃんは、いくつかな?」私は訊ねた。
「9歳です」女の子は小さな声で答えた。
「お嬢ちゃんをいじめるのは、パパかな?それともママかな?」
「ママです」
「どんな風にいじめるの?ぶったりするのかなあ?」
女の子は、首を横に何度も振った。
「じゃあ、ひどいこと言ったりするんだ」
女の子は、こくっとうなづいた。そして言った。
「私、ママがわからないの。どうして、あんなこと言うのか…」
「そんな、ひどいことを言うんだ。なんて言われるのか、おじ
さんに教えてくれないかなあ?」
「絶対に笑わない?」女の子は上目遣いに私を見ながら言った。
「笑わないさ」
「おまえのかあさん、でーべそ、って」
「‥‥‥」私は笑いを噛み殺すのに必死だった。
(筆者注)兄弟喧嘩でというシチュエーションは今までにありま
したが、親が子を虐待するような世の中だと、こういうのもショ
ートショートとしてなりたってしまいますよね(たぶん)