だじゃれイソップ

 ―1時間目〜アリとキリギリス

「えー、今日の一限目の題材は『アリとキリギリス』です。これを
使って小話を作成してもらいます」
 今では、どこの駅前にもある駄洒落教室「洒落 WE ざんす」で
教師が生徒に言った。

「先生!できました」
「お、早いですね。じゃあ聞かせてください」
「はい。――キミの尊敬する格闘技家をあげなさい。アリと猪木っ
す」
「うーん、かなり苦しいです、がまあ最初はそんなとこでしょう。
駄洒落というのは、先回説明したように、多少苦しい方がウケる場
合もあります。ただし、苦しすぎるのはダメです。足首までならい
いと覚えておいてください」
「先生!今の意味わかりません」
「くるぶしすぎるのはダメという意味です。他、ありませんか?」
「はい!――今年は冬を越せそうですか?とアリがキリギリスに訊
きました。まあ、わりとぎりぎりっす」
「ははは、いいじゃないですか。その調子でいきましょう」
「はい!――夏の間、のんきに歌ばかり歌っていたキリギリスは図
々しくもアリに食糧を分けてほしいと頼みました。むかついたアリ
は、米や麦のかわりに胡椒の実をわたしました。お味はいかが?わ
りとピリピリする」
「まあ、いいですが、わりとなんとかってのは、もうやめましょう。
地面がわりとグラグラっす、とか肩がわりとこりこりっすとかなん
でもアリだとギスギスしてしまいますから」
「はい先生!」
「どうぞ」
「兄貴が動物園でキリンと接吻をしました。アニとキリンキス」
「なるほど。いいですね。光景が目に浮かびそうです。綺麗にまと
まったところで、しばらく休憩しましょうか。次の時間は、『オオ
カミ少年』でやってみましょう。では十分間休憩です」


 ―2時間目〜オオカミ少年

「はい、では2時間目を始めます。オオカミ少年の話では、少年の
叫び声『オオカミが来たー』が誰もが知っているフレーズですから、
これでやってみましょう」
「はい先生!」
「おや、早いですね。さては休み時間の間に考えていましたね。い
いことですよ。では、どうぞ」
「今度は誰も信用してくれません。もう駄目だ。そう思った時、空
から光とともに、一番頼りになるお方が現れました。少年は叫びま
した。おお神が来たー」
「おー」教室から歓声があがった。
「最初にいきなりうまいのが出ましたね。次はやりにくそうだなあ」
「はい先生!」
「お、ではどうぞ」
「少年は料亭通いが趣味でした。今日も、狼が来るからかくまって
くれと嘘をついて、女将さんに酒を振舞わせています。そこへ、先
代の女将がやってきました。先代は海千山千で、とても少年が騙せ
る相手ではありません。少年は驚いて叫びました。大女将が来たー」
「おおおかみですか。なかなかいいですよ。そういう馬鹿馬鹿しい
のはウケる可能性が高いですから。はい、次ありませんか?できれ
ば、『来たー』の部分もだじゃれたのがいいかな?」
「はい!」
「どうぞ」
「これが、狼が来た証拠です。少年は洋服ブラシをかかげて、村人
に言いました。何故それが証拠なんだという村人に少年は説明しま
す。狼は口が大きいから、普通のハミガキでは、歯が磨けないんで
す。「大ハミガキだー」村人は納得して叫びました」
「く、苦しいですね。実は、先生も考えてみたんですが、もっと苦
しいのしか思いつかなかったんで、正直言うと羨ましいです」
「先生は、どういうの考えたんですか?」
「え、言うんですか?つまらないですよ『少年は嘘の才能を利用し
て、お城に召抱えられました。でも仕事は、王冠磨きだー』とか『
赤巻紙黄巻紙千葉みやげ、あ間違えた、青巻紙だー』とか、そうい
うやつです。はは、つまんないですね。みんなも、疲れたって顔し
てますね。休憩入れましょう。3時間目は、『北風と太陽』です。


                         (つづく)