コードレス社会

「コードなんてのは、もともと人間には要らないものなんです」

「ほほう」

「電話だって、昔は本体にも受話器にもコードがついてたけど、今
や携帯電話の時代でしょ?」

「だから?」

「掃除機だってそうですよね。お母さん持ち運びがとても便利だっ
て言ってます」

「それで?」

「あ、アイロンだってコードレスのがあるでしょ。あれなんか。絶
対不可能だって、ちょっと前ならみんな思ってたはずです」

「要するに、時代を先取りしてるって言いたいわけだな。しかし、
そのコードレスなわとびだけは、先生は絶対認めんからな。なぜ素
直に、なわとび忘れました、すいませんって言えないんだ。妙な言
い訳ばっかりするな!」

「わー、ごめんなさーい」

「こら、まてー。だいたいお前のような屁理屈ばっかり言うような
子供は、先生大嫌いなんだ。今日という今日は堪忍袋の緒が切れた」

「コードレス堪忍袋ですねー」