馬鹿が風邪をひかない理由

「あ、キミ、キミ、この前頼んでおいた調査の結果は出たのか?」
 博士が助手に訊いた。
「あ、はい。電話アンケートの件ですよね。先ほどようやくデータ の整理が終わりました」 「で、どうだ?」 「ええ、やはり昔から言われているように、馬鹿は風邪をひきにく いようです」 「やはりそうか。これを学会で発表したら世界中が驚くぞ。実は最 近、DHAが風邪を悪化させるという研究結果が発表されたんだ。 ところでキミ、DHAは知っておるよな?」 「簡易型携帯電話のことですよね?僕も持ってます!」 「それはPHSじゃな。DHAというのはドコサヘキサ塩酸といっ て、青身の魚とかに多く含まれていう物質じゃよ。頭が良くなると いうことで最近では粉ミルクとかにも配合されておろうが?」 「あ、そうでしたそうでした。で、そのエッサホイサと馬鹿が風邪 をひかないのとどういう関係があるんです?」 「つまりこういうことじゃ。DHAを多く摂ると頭がよくなる。し かしDHAは風邪を悪化させる。つまり頭のいい人間は風邪をひき やすいということになるじゃろ?」 「ああ、ええ、そういう理屈になりますね」 「これはまた逆も真なりじゃ。DHAを摂らないと頭が悪くなるが、 風邪は悪化しない。くしゃみや鼻水が出る前の段階で治ってしまう から、本人も風邪をひいたとは思わない」 「なるほど!博士、これは凄い理論ですよ。早速インターネットで 発表しましょう!」 「まてまて、科学者たるもの、確実な裏付けをとらんでどうする。 調査に使った被験者から、特に頭の悪そうな者を3人ばかり連れて くるんじゃ。彼らの血液を調べてDHAが通常より低い濃度であれ ば、この理論は完璧ということになる」 「わかりました。早速集めてきます」 「キミたちは、風邪をひいたことがないそうじゃが、本当かね」博 士が訊いた。 「うん、ひいたことないよ。へっくしょん」 「ぼくもだよ。へっぶーー」 「わたしもよ!くちゅん」 「おい、どういうことじゃ。みんなクシャミをしとるじゃないか。 真中のやつなんか鼻水までたらしておるぞ」博士が助手に小声で言 った。 「おかしいですね?でも本人達はひいたことないって」助手も小声 で答えた。  そのとき、鼻水をたらしたひとりが口を開いた。 「ところでおじちゃん。カゼってなーに?」