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白倉美紗さん交通死事件 支援のページ
~事件から高裁不当判決以降まで~

since 2005.12.  last up 2008.7.20.
(写真は白倉美紗さんホームページより)
当時中学3年の白倉美紗さんは2003年9月1日早朝、登校途中に暴走トラックにひかれ、わずか14歳でそのすべてを奪われました。ご両親とご家族は事件の真相解明と厳正な処罰を求めたたかい続けました。
詳しくは白倉さん自身の下記サイトをご覧下さい
白倉美紗さん交通死事件

この事件の概要この事件の経過報道記事・関連

事件の概要
「北海道交通事故被害者の会」の会報15号(2004年8月10日)掲載の記事より

美紗は飛び出していない、真相解明を

南幌町 白倉 博幸・裕美子

■ 平成15年9月1日  娘は暴走トラックの犠牲に 

美紗の大きな元気のいい声が聞こえなくなってから、もう11ヶ月になります。平成15年9月1日月曜日。いつも通りに犬の散歩を済ませ、「じゃあ、行ってくるわ」と、いつもより30分早く出掛けた美紗が元気に「ただいま」と帰ってくる事はありませんでした。暴走してきた4tトラックに撥ねられたのです。
美紗が出掛けてしばらくしてから、救急車の音が自宅まで聞こえてきてきましたが、さほど気にも留めていませんでした。その直後、自宅と携帯電話が同時に鳴り、今さっき聞いた救急車の音は、事故に遭った美紗の為だと知らされたのです。狂乱し、電話での「心肺停止の状態です」と言う言葉が今でも忘れられません。
「何かの間違い。軽い怪我で済んでいるはず」と病院に向かいましたが、現場を通ったときに、美紗の赤いスニーカーと大きな血溜りを見てからは震えが止まらず、そこから病院までの事、病院に到着してからの事、美紗が14歳という人生を終えてしまったという事、何もかもが現実と思えませんでした。病院に着き、いくら声をかけても反応しない美紗。「助かるよね、助けてよ」と言ったとき、静かに横に首を振った医師の事を忘れることが出来ません。

■ 加害者の言うなりの捜査に怒り

事故から3日目の通夜に、加害者と上司が来ました。「こいつが美紗を殺したのか」と怒りが込み上げてきましたが、真相を知りたい私達は、出来るだけゆっくりとした口調で状況説明を求めました。しかし何度聞き返しても、「目の前に飛び出してきた」と、返ってくる言葉は同じでした。時速約65kmで走行中の乗用車を追い抜き、その後、美紗を撥ねたのに、加害者は「70km/hくらいで走っていて、回避できないくらい目の前に飛び出してきた」と言うのです。それは絶対に有り得ない事です。35m以上のブレーキ痕を残し、更に、路外逸脱後12mも畑を走行し、電柱を折って停止しているのにです。そんな嘘が警察で通る訳が無いと思っていたのに、加害者の供述どおりに捜査は進んでいました。話せる者の勝ちなのかと、怒りが加害者ではなく警察に対しての怒りになり、何を信じればいいのか分からなくなりました。

■ 謝罪の言葉すらない加害者

美紗を殺した本人からは謝罪も焼香も一切ありません。更に、運送会社の人間は、美紗の遺影に指をさし「お前の所の娘が飛び出して来たんだろう」と罵声を浴びせ、その後、事故はもう終わったことだとさえ言われました。その身勝手な言い方に震えるほどの怒りが湧き起こりました。人を殺しておいて、その態度は全く理解できません。
美紗がいない毎日を事実として受け止めなければいけないという葛藤と、でももしかしたら全部夢かもしれないという現実逃避と、美紗は飛び出したりしていないと信じる事と、今も逮捕もされず普通に生きてる加害者を頭の中で何千回と殺し続ける事で、何とか自分を保っています。

■ 科学的捜査で真相解明を

何より、事故の無い日々のために
民間調査会社への調査依頼、自分たちでの証拠収集、目撃者探し、事故鑑定人への鑑定依頼などを行い、やっぱり美紗は「飛び出し」などしていないと確信し、現在検察庁へ科学捜査による真相解明を求めています。
遺族の当然の権利としての捜査調書の開示、警察各署に事故鑑定者の配置と科学捜査の必要性、更にはドライブレコーダーの搭載、事業車のタコメーターの全車搭載等を訴えて行きたいと考えます。私達は事故の無い日々が訪れる事を心から願っています。美紗のように希望も夢も全てが叶わぬものとなる人がいなくなるように。(2004年8月)

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《経過》

2007/9/19 札幌高検は、最高裁への上告断念を通告
札幌高検に出向き、上申書の趣旨の上告を再度要請。北海道交通事故被害者の会(前田)も同席し、応対した野口検事に粘り強く要請したが、最終的に上告断念の通告。同日夕、記者会見し不当な高検の姿勢と、どこまでも被告有利の司法界について訴える。毎日新聞
2007/9/10 上告を求める上申書を札幌高検検事長宛および最高検察庁へ送付。最高裁判所には判決不服申し立て書を送付。毎日新聞
2007/9/6 同判決公判 札幌高裁は速度の認定を82.7キロとしたものの、暴走とは認めず、執行猶予とした原審支持の不当判決
2007/6/19 同第4回公判
2007/5/29 同第3回公判
2007/1/16 同第2回公判(報告) 
2006/12/20 札幌高裁にて控訴審第1回公判
2006/8/3 札幌地検岩見沢支部は、量刑不当として、札幌高裁に控訴 (報告)(報道記事
2006/7/13 同第5回公判(報告
2006/7/6 同第4回公判(報告
2006/6/22 同第3回公判(報告
2006/6/15 同第2回公判(報告
2006/6/1 札幌地裁岩見沢支部にて第1回公判、被告は、速度と衝突位置について否認
2006/5/18 札幌地裁岩見沢支部は、両親が美紗さんの遺骨を法廷に持ち込み共に公判を傍聴することを認める。(この件の地検支部宛2月8日上申書
2006/3/6 「公判前整理手続き」の公正な運用に関連し、傍聴席の確保についての上申書提出。「公判前整理手続き」による事前協議が非公開で開催:1回目 2/23  2回目 3/23 ・・・ 4回目 5/18
2006/2/2 「公判前整理手続き」の公正な運用に関連し、地検岩見沢支部に意見陳述についての上申書提出。
2006/1/27 札幌地裁岩見沢支部は、突如「公判前整理手続き」適用を通知
2005/12/3 札幌地検岩見沢支部は、被告を在宅起訴。(報道記事とご両親の報告
2005/8/12 札幌高等検察庁検事長宛に再度上申書を提出
2005/7/28 上京し、民主党主催の犯罪被害者等基本計画検討ワーキングに出席。未だ起訴となって        いない事件の実情を訴える。
2005/2 札幌高等検察庁検事長宛に真相の徹底解明を求める上申書を提出
2004/3 医師および専門家の照会書と意見書を添えた上申書提出。(その後も上申書は断続的に多数提出)
2004/1 科学的捜査を求める上申書提出
2003/12 栗山署は札幌地方検察庁岩見沢支部に書類送致
2003/9/1 早朝、南幌町南13線西4の道道交差点で自転車で通学途中の白倉美紗さん(14歳、中3) が、暴走トラックにはねられ犠牲に。運転手は逮捕されず。

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控訴審 第2回公判報告(前田記)

2006/12/19

12月19日14:30~15:30、札幌高裁8階2号で行われた初公判は、92席の傍聴席が支援者と報道関係者で埋まり、入廷できない支援者も10人以上という中で行われました。長島孝太郎裁判長は、裁判所としてできるだけ実態に即した審理をしたいとの意向を示し、検察側に速度にかかわる実験鑑定の検討を提案。公判前整理手続き適用で「争点整理」の名のもと真相解明に不当な制限も加えられた一審とは異なる展開が期待されます。
この日の公判は、この後遺族の意見陳述のみ行われましたが、最初に母親の裕美子さん、次に父親の博幸さんが計30分にわたって真相解明と実刑による厳罰を強く訴えました。
・・・家族は今も美紗さんの死を受け入れていない。信じたくない、美紗さんを返して欲しい。「不誠実ながら謝罪している(だから執行猶予)」という非常識な一審を覆し、裁判所はあくまで犯罪事実で裁いて欲しい。時間が遺族の心や体の傷を癒すというのは嘘。PTSDなど心労とそれが原因の病気ともたたかいながら、真実を知るためにここまできた。・・・などなど
峻烈な遺族の思いが語られ、説得力あり胸に響く陳述に法廷は厳粛な空気に包まれました。
たくさんの傍聴支援ありがとうございました。
次回公判(1月16日(火)11:00~鑑定士の証人尋問が行われます)もよろしくお願いします。

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第6回公判・・・2006年7月27日  岡部豪裁判長は執行猶予の不当判決

月27日、札幌地裁岩見沢支部での第6回(判決)公判で岡部豪裁判長は、被告に禁錮3年執行猶予5年という不公正極まりない判決を下しました。

何より真実を求め、事実に即して公正に裁いて欲しいことを願った美紗さんのご両親始めご家族の最低限の願いすら踏みにじり、さらには不可解極まりない速度認定(78.8キロ以上)ですが、制限速度を30キロ近く超過した危険運転の責任を「暴走とは言えぬ」と不問にする一方で、命を失った美紗さんの注意が足りなかったかのようにいう言語道断の判決でした。 加えて、なぜか被害者も望まない公判前整理手続き適用となり、被害者遺族を蚊帳の外に置き、裁判所と検察そして被告および被告弁護士による「争点整理」がおよそ4か月に渡ってじっくり行われた挙げ句の、たった2か月の加害者のための「茶番的裁判」の結幕でした。
そこには昨年4月施行の「犯罪被害者等基本法」にいう、「犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ、その権利利益の保護が図られる社会の実現に向け・・・」(前文)や「(犯罪被害者等が)刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講じるものとする」(第18条)の理念は霧散し、残るは刑事司法に対する限りない不信ばかりです。
真実に基づく公正な裁きを求める遺族のたたかいは続きますが、検察庁はただちに控訴の手続きをとるべきです。
以下は白倉さんからのメールです。

判決公判を終えたわけですが、執行猶予判決に至った判決文が何より納得できず、即日検事に控訴をお願いしました。横断を終え、反対車線で美紗をはねたことを認定しながら「トラックが反対車線に行ったことは、不運だった」の一言で被告の過失を問いませんでした。
速度認定も、裁判官による再計算で出されたのですが、根拠のない摩擦係数を裁判官の独断で勝手に採用し、科学的根拠のない数値を多々用い、鑑定士の鑑定を否定しました。
電柱を折損したときのトラックの衝突速度を0kmとするなど、信じられない速度認定です。証拠や供述がある事実までを否定し、裁判官の憶測で述べられた判決文。司法の信頼は完全に失墜です。
「制限速度28.8km以上超過は、被告の供述速度の範囲内であるから、暴走とは言えない」という言葉には、馬鹿じゃないかと思いました。法定速度は何の為にあるのでしょうか! 暴走とは何km以上の超過を言うのでしょうか!
ただの一度も謝罪も焼香もなかった被告が、裁判になり初めて謝罪の言葉を口に出したのですが、それを「事故直後から不十分ながら謝罪を行っている」とした事も、裁判官の良識を疑います。
公判前整理手続きで、重要部分は全て決められることや、裁判官と被告とは手続き中から接触があることからも、話の中で、執行猶予判決を初めから決めていて、それに合うようにこじつけた判決文が作られたように思えてなりません。
様々な部分から、公判前整理手続きには意見を出してしていき、制度を変えなければ日本の裁判制度は大変な事になると思います。「不公平」な裁判が横行する事になるでしょう。
検察の控訴を期待するしかありませんが、今まで応援頂いた皆様には本当に感謝を申し上げます。皆さんの支援は、本当に自分たちにとって大きな力です。ありがとうございました。
それから、これからもよろしくお願いいたします。
これからも、事件の真相解明と公判前整理手続きについて、引き続き頑張っていくと決めています。絶対に諦めません!!
美紗が横断を終え、反対車線で事件に遭ったことだけでも明らかになったことは私たちの今後の活動に大きな力を与えてくれます。やっぱり、美紗は飛び出していませんでした!!
7月28日 白倉博幸 裕美子

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第5回公判・・・2006年7月13日  結審、求刑は禁錮3年

札幌地裁岩見沢支部での第5回公判は7月13日、遺族の意見陳述、検察の論告求刑、弁護人の最終弁論が行われ、結審しました。求刑は禁錮3年でしたが、審理については根本的な問題を強く再認識させられる内容でした。(なお、判決は7月27日(木)13:15~です)

何より、唯一遺族が当事者として正当に意見が述べられる場である意見陳述に対し、裁判官が途中で内容変更を強制したことは極めて異例かつ許されない暴挙でした。
母親である裕美子さんが、美紗さんの名誉と尊厳のために裁判所は真実を解明して欲しいと要望し、遺族の処罰感情を述べるため事件の詳細と加害者の言動について意見を述べていた時でした。岡部裁判官は突然「証拠調べではないので、事件の詳細には立ち入らないように」と発言。数分のやりとりの後、陳述は続けられましたが、不当に内容の変更を余儀なくされた遺族は、怒りの矛先を裁判官に対しても向けざるを得ない状況となりました。

後から聞けば、制止の理由の一つが、事前に(被害者は蚊帳の外で)争点整理を行いそれ以外は審理しないという公判前整理手続を行ったからということで、改めて公判前整理手続きが被害者にとって多くの問題を抱える制度であることが浮き彫りになりました。
遺族の意見陳述は、不当な圧力を受けながらも、妹の紗穂さん、母親の裕美子さん、父親の博幸さんと約1時間にわたって行われました。切々とそして具体的に述べられる被害の実相と被告の非人間的な対応に、傍聴者の共感が漂う中、すすり泣きの声ももれていました。

そして極めつけは、裁判長に促されて発言した被告の最後の言葉でした。何と被告は「これからも運転をすることを許して欲しい。安全に運転することで反省と謝罪にしたい」と述べたのです。被害者遺族の気持ちなど微塵も考えず、逆なでするこの問題発言に、そしてそれを咎めることもしない裁判の不公正に対し傍聴席から、「運転するな!二度と!」と声が飛びました。岡部裁判官はこの「正当」な発言に対しては間髪を入れず「発言は慎むように」との「不規則」発言。司法への信頼は地に落ちました。
ご遺族は、今回も美紗さんの遺骨と遺影を抱きかかえての入廷でした。

以下は、白倉さんからのお礼文です。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++
裁判支援頂いた全ての方々に、心より感謝いたします。第5回裁判は、本当に許せない内容でした。
遺族の意見陳述に関し、前もって検察および裁判所に提出していたのですが、当日、開廷前に裁判所から内容の一部削除を求められ検事と共に、不本意ながら裁判所の意見を受け入れ一部削除を行いました。その中で、始まった意見陳述で、あろうことか、裁判官が意見陳述の制止をかけました。「被告に関する処罰感情と、美紗に対する感情以外を述べるな」と言い出したのです。事件内容に触れることなく、感情を述べることなど出来ますか?
更に「被告とのやり取りについても、遺族調書に記載されいる以外の言葉を使うな」と言われました。意見陳述は、証拠ではないのですし、事件の内容に触れることなく言うのであれば、意見陳述の意味が全くありません。
裁判官は「もし、法廷の場で言いたかったのなら、公判前整理手続きに付す前に、証拠として残しておけばよかったのだ」と遺族に対し、無謀極まりない言い分で、圧力をかけてきました。
結果、意見陳述で意見を述べることが出来ませんでした。とても不満です。
裁判書類に、美紗の自転車の写真も一枚もなく、自転車の関する鑑定資料もありません。その、指摘すら許されなかったのです。公判前整理手続きで、途中で新たな証拠提出が認められないことは分かっていますが、遺族として意見をして述べると、裁判の証拠として出ていないことだし、公判前整理手続きに反する事になりかねないというのです。
被告の最後の言葉も、許すことは出来ませんし、被告があのような事をいっても裁判官の制止はないのですから、不公平そのものです。
この事件で、どんな判決が出ようとも、証拠自体がまるっきり不十分な中での審議ですし、真相解明を、望むことは不可能であり、裁判官に対しても、公判前整理手続きに付いても強く、批判していきたいと思っています。中村、青野弁護士も信じられないと、大変驚いていました。

求刑3年に対してと言うよりも、裁判自体が納得できない内容であり、全くの茶番劇です。否認事件でデリケートだからと、意見陳述を認めないなど、言語道断です。
7月14日 白倉博幸 裕美子

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第4回公判・・・2006年7月6日

札幌地裁岩見沢支部での第4回公判は7月6日、約3時間にわたって被告人質問が行われました。裁判所の対応は今回も改善されず、1名しかいない記者のために7席は空席のまま。16席は抽選となり、私たち札幌方面からの支援遺族8人は互いに譲りあい審理を注視しました。

被告人質問では、第1回公判同様、何らの反省もなく、自己保身の言い逃れの供述を繰り返す被告の姿が浮き彫りにされました。こんな不実の男の言い分のためにこれだけの時間を費やす意味があるのだろうか。そして、物証に基づく厳正な初動捜査がなされていれば、加害者にここまで言い逃れの余地を残すことがあり得たのだろうかという思いと、白倉さんご一家の無念を改めて強く感じました。法廷内に怒りとともに、半ば呆れ果てたという空気が漂っているように感じたのは私だけではないと思います。

やりとりの中での象徴的な被告人発言(ほんの一部)を紹介します。
★美紗さんが自転車で出てきた位置について、当初はわからないと供述していたにも拘わらず変えたのは「記憶にはないが、(2年3か月後)起訴されてから写真や図面を見て、いろいろな人の協力のもと、詳しい人の話も聞いて、(こうだろうと)判断した」と、公判対策のつじつま合わせをしたことを吐露。
★検察に遺族に謝罪するように言われ電話をした後の2年間、一切連絡がないことについて「裁判で事故状況が明らかになれば謝りに行く」と開き直り。(被告は鑑定結果の時速95キロ以上を否認し、70キロの速度と主張していますが、仮に70キロであっても死に至らしめた危険運転に変わりはないはずです)
★事件後、会社には直ぐ電話をしているのに救急車も呼ばず、警察へも連絡をしなかったことについて、「事故状況がわからなかったから」と全く不可解な言い訳。
★会社の社長が事件当時、美紗さんの遺骨の前で「お前の飛び出しが原因」と暴言を吐いたことに、その発言は「仕方ない」と調書で供述しながら、「言葉は思い出せないが、後で遺族に謝った。しかし社長には世話になっているので、自ら詫びてくれとは言っていない」と理解不能の言い訳。
などなど。

※次回以降の予定は、第5回 7/13:遺族の意見陳述(3人で計60分)が行われ、論告求刑、最終弁論で結審(抽選が12:45分に行われます。)
第6回 7/27:判決です。よろしくお願いします。
ご遺族は、今回も美紗さんの遺骨と遺影を抱きかかえて見守っていました。

以下は、白倉さんからの7月7日のメールです。
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毎回、岩見沢まで来て頂いてのご支援に感謝しています。まだ体調が完全回復していないためか、すぐに疲れてしまい、裁判後から翌日は、ほとんど寝たきりのため、なかなかメール出来ずすみません。
6日に行われた被告人質問ですが、正直、何と言っていいのかわかりません。怒りも通り越し、呆れるという感情でもなく、無念さが強いです・・・
「実況見分調書は警察官のでっち上げ、起訴後に事件内容を周りの人と相談して否認した。」という、被告が作り上げた物語の為に、こんなにも長い時間振り回されてきたのか・・・と。
こんな人間に美紗は殺されてしまったのかと。うまく感情を言葉に出来ない内容の被告人質問でした。
ともかく来週13日は、意見陳述で思いを訴えようと思っています。13日で結審し、27日判決ですが、皆さんのご支援、引き続きよろしくお願いいたします。
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第3回公判・・・2006年6月22日

札幌地裁岩見沢支部での公判は今回も一般傍聴席の16席が抽選で、6名(私もそのうちの1人)がはずれてしまいました。元々40席しかない法廷ですが、記者席8席は全て空席のまま(前回も8席中記者は3名のみ)という何とも不条理な裁判所の対応でした。支援遺族は6人でしたが、互いに譲りあい、途中交代するなどやりくりをして審理を注視しました。

今回は、検察側証人として、鑑定を行った山崎俊一氏((財)日本自動車研究所 主席研究員)の尋問が行われました。争点の制動開始前速度と衝突角度について鑑定人への尋問ということでしたが、弁護側の反対尋問には本質的な部分での追及はなく、有る意味些細な修正を求める尋問に終始していました。尋問で明らかになったのは、ブレーキ操作前の速度が少なくとも90キロ以上ということが疑えなくなったことで、被告が70キロと言い張っていることや衝突態様なども根拠のない言い逃れであることです。
そして、こうした理不尽な言い逃れの余地を与えた初動捜査の不公正さと杜撰さも今後厳しく追及されなければなりません。
白倉さんのご遺族は、今回も美紗さんの遺骨と遺影を抱きかかえて見守っていました。裁判後電話で「皆様の傍聴など支援が本当に心強くありがたく思っています。特に今回は6時間にも及ぶ傍聴支援に感謝します。これからもよろしくお願いします。」との伝言を受けました。

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第2回公判・・・2006年6月15日

昨日の公判傍聴ありがとうございました。今回も札幌や旭川から9名が駆けつけ、傍聴席は抽選となりました。報告は以下の白倉さんからのメールを紹介する形で致します。
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初公判に引き続き、多くの方の支援の中、昨日第2回公判を終えることが出来ました。皆さんの暖かなお言葉とご支援が、何よりも心強いものであり、心より感謝しております。
これから22日の鑑定人尋問
7月6日の被告人質問(前回報告では6/29でしたが変更されました)
13日の意見陳述・論告求刑
27日の判決
と続きますが、引き続きのご支援の程よろしくお願いいたします。

今回の公判では、警察の実況見分調書が不同意にされていたため、証人尋問と言う事で当時の捜査員の尋問が行われたわけですが、まず、はっきりしたことは、警察の実況見分調書自体に計測していながら、書き入れるべき数値を記入していない事等が明らかとなったり初動捜査のやり方などにも、問題があるのではないかと言う事です。なぜ、事故当日に捜査員が直線ブレーキに気付いたのであれば、すぐにでも被告を呼び戻し実況見分を行い、逮捕する事が出来なかったのでしょうか・・・・・
結果的には、同意となったのですが、被告の指示説明の部分に付いては争うとのことです。警察自体、もっと根本から改めなければいけないことが明らかになった証人尋問でした。
相も変わらない、驚くほどの軽装で、まるで他人事のような顔で、大股を開き、偉そうに被告席に座り、反省の色ひとつ無い被告に怒り爆発です。
(6月16日、白倉博幸・裕美子)

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第1回公判・・・2006年6月1日

事件から2年と9か月、ついに公判の日を迎えました。
ご両親は美紗さんの遺骨と遺影を抱いて法廷へと入りましたが、母親の裕美子さんは極度の心労から先日緊急入院をしたばかりで、医者の許可を得ての車椅子での入廷となりました。
傍聴希望者が多く、開廷前に抽選も行われ、32席の狭い傍聴席は報道と遺族の関係者、そして札幌方面や旭川から駆けつけた支援の遺族(入れなかった人も含め支援に駆けつけた遺族は14人)で埋まりました。双方の冒頭陳述の後、証拠調べに入り、被告人質問が行われましたが、トレーナー姿という場にふさわしくない軽装の被告は、根拠もなく走行速度の95キロ、および衝突位置を否認するなど依然不遜な言動を繰り返していました。尊い命を奪っておきながら薄笑いを浮かべながらの返答に、この人に人間の血は流れているのかという思いがよぎりました。
同時に、杜撰な初動捜査こそが、起訴まで2年以上、判決予定までおよそ3年と不当に長引かせた要因であることも明らかにされました。審理も初動捜査の問題が取り上げられます。なお、裁判所が示した今後の審理予定は以下の通りです。
(いずれも木曜日、13:15~で、2時間ほどと想定されます。第3回は3時間ほど)
第2回 6/15 (証人尋問:、紺井(当時、栗山署巡査部長)
第3回 6/22 (証人尋問:山崎鑑定人)
第4回 6/29 (被告人質問)
第5回 7/13 (被害者遺族の意見陳述、求刑、結審)
第6回 7/27 (判決)
公判前整理手続き適用のため、非公開で争点整理が行われ、被害者遺族だけが蚊帳の外に置かれてきたという問題もあります。申し入れで一定の期間を置いての公判日となりましたが、審理を見守り、真実に基づく公正な裁きをさせるために今後も傍聴など支援が大切と思います。よろしくお願いします。

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この件の地検支部宛2月8日上申書

上 申 書

札幌地方検察庁 岩見沢支部   ○○ ○○ 検事 殿
平成18年2月8日

空知郡南幌町 白倉 博幸 印
裕美子 印

被告 ○○○○に対する業務上過失致死事件において、被害者本人である白倉美紗の裁判傍聴席の確保をお願いしたく上申いたします。

刑事事件捜査および現在の状況は、被害者の人権・権利全てを無視し被疑者の人権ばかりが考慮されている事、今回事件に適用となった「公判前整理手続」においても、被害者に対しての明記は一切無く、尊い人命を奪った被告人には権利が明記されている事にも強い憤りを感じています。
事件当事者である白倉美紗は、現在も自宅にて家族と共に過ごしております。○○○○の悪質運転により、生命は奪われ話をすることは出来ません。
しかし、美紗は話すことは出来なくとも家族と共に毎日過ごしていますし、存在しています。
現在、法廷への遺影持込みはある程度認められているようですが、遺影は当事者である美紗ではありませんし、この犯罪があっての美紗の姿なのですから、裁判に関わる誰もが直視すべき姿であり、遺族だけが現実を直視させられる事は公平ではないと考えます。遺骨となったとの理由のみで、当事者の裁判出席を拒む理由があるのであれば、それは美紗を人間として扱っていないものと考え、私どもとしては到底納得できる事ではありませんし強く抗議いたします。

当事者本人の裁判傍聴を阻害する理由は何一つ無いものと思いますし、この申し出を被告に対しての威嚇等と捕らえられては、大変心外であります。犯罪事実を明らかにする裁判なのですから、美紗にも当然裁判を見届ける権利があり傍聴を認めないのは不公正の何ものでもありません。裁判傍聴を否定される理由は無いものと考えます。真実を明らかにする場に当事者が不在である状況は理解できません。これから明らかにされる事実関係および判決を当事者である被告・○○○○と被害者である白倉美紗がきちんと聞くべきは当然の事であるものと考えます。

遺影はもちろんの事、美紗本人の法廷での傍聴を認めていただきたく上申いたします。私どもとしても、美紗はもうすぐ17歳になる年頃の女の子ですから、多くの方々の目に触れることになる事も考慮し、自宅にいるままの姿での傍聴は考えておりません事を付け加えお伝えしておきたいと思います。
御庁からの返答については、文書にて早急にお返事いただきたくお願い申し上げます。

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経過の詳細(報道記事なども含めて)

※ 当初、「出合い頭」という報道がされていることに注目してください。加害者も「さんづけ」です。

2003/09/01北海道新聞夕刊全道
トラックと衝突 女子中学生死亡 自転車で通学途中  南幌

【南幌】一日午前七時十五分ごろ、空知管内南幌町南一三線西四の道道交差点で、自転車に乗っていた同住所、中学三年生白倉美紗さん(14)が、北広島市西の里一、運転手荒川周一さん(43)のトラックにはねられ、頭などを強く打ち間もなく死亡した。栗山署によると、現場は信号機のない交差点。同署は自転車とトラックが出合い頭にぶつかったとみて調べている。白倉さんは通学途中だった。

2004/09/03北海道新聞朝刊地方
命の大切さ考えて 生徒事故死から1年 南幌中で集会  

【南幌】南幌中三年だった白倉美紗さんが昨年九月、自転車で通学途中にトラックにひかれ死亡して一年がたち、同中は一日、白倉さんを悼んで「命を大切にする全校集会」を開いた。町内では今年一月に南幌小六年の女子、六月には同小二年の男子が交通事故の犠牲になり、この一年間に小中学生三人が尊い命を落としている。山田恭久校長は集会で「自分の命は自分で守らなくてはならない。集会を機に命の大切さを考えてほしい」と、生徒約四百人に語りかけた。
渡辺晴佳生徒会長は「一度失われた命は二度と戻らない。一人ひとりが命を大切にして精いっぱい生きることが自分たちの使命です」と訴えた。最後に、各学級代表者十二人が交通安全宣言文を読み上げ、事故撲滅への決意を新たにした。(荒木太郎)
【写真説明】交通事故の悲惨さをあらためて胸に刻んだ集会

2004/03/13北海道新聞朝刊地方
昨年9月 交通事故で亡くなった中学3年生美紗さん 
君を忘れない 南幌中卒業式で名前呼び黙とう
父母席に両親 涙こらえきれず

【南幌】南幌中で十二日、三年生百七十一人を送る卒業式が行われた。卒業証書の授与で、一人ずつ呼ばれる卒業生の中に、交通事故で亡くなった白倉美紗さん=当時(14)=の名前があった。悲惨な事故を風化させまいとする学校側の配慮だった。(鈴木隆仁)
事故は、昨年九月一日午前七時すぎ、美紗さんの自宅すぐそばの道道交差点で起きた。早出しようと自転車で道路を横断中、トラックにはねられ、死亡した。
この事故後、同校は「僕たちは事故の悲惨さ、白倉さんの命日を、忘れてはいけない」(沢田忠治校長)と誓い、月命日の毎月一日を交通安全の日とし、朝のホームルームで事故に注意するよう指導を続けている。
この日の卒業式も、最初に「当時三年生だった白倉美紗さんの追悼のため、黙とうをあげます」という呼びかけで、全員が黙とうをささげた。この後、A組から順に壇上に上がり、一人ずつ卒業証書を受け取った。名前を呼ばれ、「はい」と応える卒業生。最後のE組、美紗さんの名前も呼ばれたが、続く一瞬の静寂に、父母席で立ったまま式典を見守っていた美紗さんの父博幸さん(32)と母の裕美子さん(34)も涙をこらえきれなかった。式の途中で退席し、博幸さんは「(学校の配慮は)ありがたいことです。でも、卒業させてあげたかった」と声を振り絞っていた。
この事故後、博幸さんらは事故の真相を知ろうと、警察とは別に独自に調べている。「(美紗さんが)道路に飛び出した」という責める声を耳にしたためだ。学校にとっても遺族にとっても、事故はまだ終わっていない。
【写真説明】亡くなる2日前の白倉美紗さん【写真説明】亡くなった白倉美紗さんに黙とうをささげる卒業生ら

2005/02/15「北海道新聞」
捜査、遺族に開示を 娘事故死 南幌の白倉さん 真実求め運動 検事長にも手紙

北海道交通事故被害者の会が十四日、札幌高検などに提出した要請文は「当事者でありながら、真実を知ることができず、二重三重の苦しみを余儀なくされる」と指摘している。2001~2003年に発生した事故で、同会が交通事故捜査のあり方に問題があるなどとした例は十四件ある。03年に空知管内南幌町であった白倉美紗さん=当時(14)=の死亡事故もその一つだ。遺族は、捜査の不手際をなかなか認めようとしない捜査機関に苦しみ続けた。
03年9月1日午前七時すぎ。犬の散歩に出かけた美紗さんは、自宅近くの道道交差点を自転車で横断した。道路の制限速度は五十キロで、数キロ先も見通せる直線。そこで、運転手男性(44)のトラックと衝突した。即死だった。
男性は両親に「美紗さんが飛び出し、ブレーキをかけたが間に合わなかった」と説明。両親と栗山署とのやりとりを記録したテープなどによると、同署もこの主張に沿った形で調べを進めた。しかし、トラックは約三十五メートルのブレーキ痕を残し、対向車線の歩道を越えて交差点から路外に逸脱。さらに勢い余って約十二メートル畑を突っ切り、電柱を折って停止していた。両親は本当に美紗さんの飛び出しだったのか疑問を持ち、客観的で科学的な捜査を求め続けた。
事故から二カ月後、両親の強い要望で行われた再実況見分では、同署がトラックのブレーキ痕の一部を「無関係」と判断していたことや、現場写真が十分に撮られていないことなどが分かった。調書や証拠などは遺族にもほとんど開示されず、捜査の行方に不安を持った両親は、複数の専門家や医師らを頼り、独自の鑑定を進めた。
その結果、トラックが事故直前に前を走る乗用車を追い越し、時速九十キロ前後で走行中、車両挙動が不安定になったことなどにより対向車線に進入、交差点を渡りきったか渡りきる寸前の美紗さんをはねた-と推測された。
また美紗さんとトラックの衝突の仕方も、飛び出しや横断中ではあり得ないものだった。関係者は「初動の不手際がその後の捜査をゆがめたのではないか」と指摘する。
男性は○三年十二月、業務上過失致死の罪で書類送致され、近く起訴されるという。しかし、事故がなぜ起き、誰にどんな過失があるとみているのか、詳細は両親も、分からない。十四日、両親は札幌高検検事長あての手紙をしたためた。「私たちにとって一番重要なのは、真実を明らかにしていただきたいということなのです」。両親は「美紗に何が起き、どういう最期だったのか知りたい」と願い続けている。
【写真説明】白倉美紗さん。事故の2日前、自宅でのスナップ

2005年12月3日「読売新聞 」
南幌の14歳死亡事故 元運転手の男を在宅起訴 札幌地検=北海道

両親“捜査”悪質さ判明 時速「70キロ以上」→「95キロ」

2003年9月に北海道南幌町の道道交差点で、女子中学生がトラックにはねられ死亡した事故で、札幌地検岩見沢支部は2日、トラックを運転していた北広島市西の里東1、元運転手荒川周一容疑者(45)を業務上過失致死罪で札幌地裁岩見沢支部に在宅起訴した。この事故では、被害者の両親が専門家に鑑定を依頼した結果、警察の当初の認定より、トラックがスピードを出していたことが判明したという。
起訴状などによると、荒川容疑者は同年9月1日午前7時15分ごろ、南幌町南14線の道道で、制限速度を大幅に上回る時速約95キロでトラックを交差点に進入させ、自転車で登校途中の南幌中3年、白倉美紗さん(当時14歳)をはねて死亡させた。

起訴を迎えて

ご支援ありがとうございました
これからもよろしくお願いします。

「出会い頭」からはじまった事件が、反対車線側にいた美紗にトラックが突っ込んだという、全く違う事件である事が、科学的に立証されました。そして、2年3ヶ月という長い時間が掛かりましたが、やっと起訴になりました。前田さん、そしてたくさんの方の支援があってここまで来る事ができました。ありがとうございました。

子供の死の瞬間の検証という、親としては何よりも辛いことを繰り返し続けてきましたが結果として、100パーセントとまではいきませんでしたが事件内容が解明され、そして何より「美紗に過失なし」と検事の口から聞くことができました。

これから、まだまだ辛い事があるとは思いますが裁判と言うスタートラインに立てました。「自分は悪くないから謝らない」と事件から一度も、自ら現場にも自宅にも来たことの無い被疑者が、裁判の場でしっかりと厳正に裁かれる事を期待しています。

私たちのように、被害者が事件検証を行うようことの無いように、初動捜査の徹底と情報開示,そして被害者の知る権利を必ず確立しなければいけないと強く思っています。
これからも、ご支援よろしくお願い申し上げます。
(2005年12月3日 白倉博幸 裕美子)

「執念」1年半 目撃者から話、病院に資料開示請求「美紗は悪くない」知らせたかった

娘を失ってから2年3か月。白倉美紗さんの両親は、いくつもの障害にぶつかりながらも真実を追い求めた。運転手の起訴で、ようやく心に一つの区切りがついた。
母裕美子さん(36)の元に事故の知らせが入ったのは、文化祭の準備で早く登校する美紗さんを送り出した直後だった。現場は自宅の500メートル先。夫博幸さん(34)とともに、現場に残る赤い靴とカバンを横目に病院に駆けつけたが、既に意識はなかった。脳挫傷と外傷性ショック。額と口、あごに小さな傷があるだけの、今にも目覚めそうな娘を前に、「助かるんでしょ」と医師に詰め寄った。

両親によると、事故は当初、美紗さんの飛び出しも疑われた。民間調査会社に調査を依頼し、目撃者や加害者から事故当時の話を聞き、病院や消防署にも関連資料の開示を求めた。約1年半の調査で、警察が「時速70キロ以上」としたトラックの速度は90キロを超えていたことや、はねられた美紗さんは既に道を渡り終え、飛び出しではないことを突き止めた。検事の元にも通い詰め、「朝、行ってきますと言った子が、突然いなくなることを想像してみて」と泣いたこともあった。

美紗さんは、英語が得意で留学が夢だった。事故直前の夏休み、男性アイドルグループ「w―inds.(ウィンズ)」のコンサートに友人と大はしゃぎで出かけた。帰ってくると、博幸さんに興奮気味にコンサートの様子を話したという。家族は今年夏、美紗さんの写真を手にコンサートに出かけた。「まだ早い」と入会を許さなかったファンクラブに、今は美紗さんの名前で会員登録している。
生きていれば16歳。両親は「美紗は悪くなかったと皆に知らせたくてここまでやって来た。起訴は一つの区切り」と話している。
写真=「美紗は悪くないということを知ってほしかった」と話す白倉さん夫妻(北海道南幌町の自宅で)

2006/1/28「読売新聞」道内版
公判前整理手続き適用 地裁岩見沢支部 南幌の死亡事故被告に

2003年9月に空知南幌町の町道で、通学途中の南幌中3年白倉美紗さん(当時14歳)がトラックにはねられ死亡した事故で、札幌地裁岩見沢支部は27日までに、業務上過失致死罪で在宅起訴された元運転手荒川周一被告(45)(北広島市西の里東)の公判に、公判前整理手続きを適用すると決めた。道内での適用は2例目。
公判前整理手続きは、初公判前に裁判官と検察官、弁護士が集まり、争点を整理し、審理計画を立てる。非公開で行われ、検察側は従来より幅広く証拠を開示し、弁護側も主張を明確にすることが求められる。道内では、札幌地裁が昨年12月に、危険運転致死と覚せい剤取締法違反の罪で起訴された小樽市の男(41)の公判に、公判前整理手続きを道内で初めて適用。現在協議が進められている。

白倉美紗さん交通死事件の現状について
「公判前整理手続き」適用で新たなたたかいへ

昨年暮れ、ようやく起訴(後段に詳細)となりましたが、公判間近と思われた2006年1月末、突如、聞き慣れない「公判前整理手続き」適用という連絡を受けました。(1/28記事は下記)
これは、裁判員制度導入のために裁判の迅速化を目的とした制度なのですが、非公開の事前協議で争点整理が行われ、公判が始まったら連日開催が原則ということで、被害者の側の権利についての言及もないという大きな問題点を持つ制度です。3月12日現在、1回目の事前協議が2月23日に開かれていますが、当の白倉さんには争点整理の中身など何も知らされないという、不当な立場におかれています。

白倉さんご夫妻は、被害者の意見陳述について、第1回公判から少なくとも3週間以上の間をおいた2回目以降の公判で実質的な意見陳述ができるよう求めた上申書を弁護士を通して提出するなど、取り組みを強めています。以下、白倉さんからの現状報告です。

「裁判における意見陳述についてと、傍聴席の件で弁護士を通じ上申書を提出しました。
3月23日の第2回公判前整理手続き後、検察庁に再度確認する予定ですが、どのような日程、内容での裁判進行となるのか・・・・・。全てが非公開で決められてしまい、初公判から判決までの日時も手続きの中で決まってしまうのですから、理解に苦しみます。
事件の内容についても、業過での起訴も未だ納得できていない中、加害者がなぜブレーキを緩め自らの意思でハンドル操作を行い反対車線にトラックを進行させ美紗をはねたのか、その理由を裁判で知りたいと願っていたのですが、『争点以外のこと』は裁判で触れられませんから、私たちの願う、真相解明に近づく裁判が行われるとは到底思えません。被告側が何を否認しているのか、知る権利があるはずなのです・・・・・・ 」(3月12日 白倉)

なお、北海道交通事故被害者の会の法務省刑事局でのヒアリング(3月2日、東京)では、被害者が当事者として刑事裁判に参加する制度確立の必要性を強く訴える実例として白倉さんの事例を資料として提出しています。なお以下を参照して下さい

3月12日 前田

犯罪被害者等の刑事裁判直接関与の必要性(白倉)
法務省刑事局「犯罪被害者」等基本計画に関するヒアリング資料
犯罪被害者等の刑事裁判直接関与の必要性

平成18年3月2日 交通犯罪遺族  白倉 博幸 裕美子(空知郡南幌町)

娘・美紗の事件は下記のような経緯を辿り、事件から2年3ヶ月という長い月日を経て起訴に至った2年3ヶ月もの間、捜査機関は「捜査中」を理由に事件の詳細、捜査状況を教えてくれない為、遺族は「子供が死んだ」という事実のみで、「なぜ」については知る事ができず、苦しみが倍々に増えていった。事件の真相を少しでも知りたいという思いから、遺族自らが現場へ行き、証拠収集、事故の痕跡の写真・ビデオ撮影等を行わなければならない。鑑定も3度依頼した。そうしなければ被害者側には事件の原因と状況が全く分からないのである。
自分たちが調べた事実および鑑定結果等を踏まえ、何度も何度も捜査機関に通うが、警察の説明が二転三転する。このことでも不信感が募る。
加害者に話を聞くが、「飛び出してきた」「あとはよく覚えていない」を繰り返す。「咄嗟のことで覚えていない」という加害者の指示説明によって作られている実況見分調書の内容は遺族にとって当然知りたいものである。特に娘の事件では、加害者は逮捕もされていない事件の為、どのような捜査が行われ、何が原因で事件が起き、なぜ人命を奪った人間が逮捕されないのか知りたいのは当然である。
しかし不思議な事に、時間が経つにつれて加害者は、細かくはっきりと事故の状況を説明できるようになる。更に加害者と警察の担当捜査員が連絡を取り合い、加害者と被害者遺族のやり取りのほとんどを知っていた事、被害者に対して「こう言え」など警察官が言っていたことなどが分かった。加害者が「警察の人がこの辺でしょ、とか言ってくる事に返事をしただけだった」との言葉は、遺族を一層苦しめた。

客観的証拠を基に判明した科学的鑑定事実等を遺族が捜査機関に対し説明し、明確な答えを求め続けた結果、以下の事実を知るに至った。
1 加害者の「飛び出してきた」と言う言葉を鵜呑みにした警察官が、加害者供述に合わない真実のブレーキ痕を調書に載せていなかった。現在も一部ブレーキ痕は存在していない事になっている。
2目撃者の証言は、警察官が誘導し調書作成していた。目撃者本人は「分からないと答えた部分は警察官が記載した」と証言。しかし目撃者自ら警察署に再度出向き、調書の確認と訂正を行ってくれた。しかし。結果として供述調書の信憑性を疑われた結果となり、重要な目撃者の証言の裏づけは行われることが無かった。
3衝突地点についての警察説明も、最初は加害者の走行車線内、その後センターライン付近、更にその後は反対車線内と二度も変わった。そして実況見分調書上どのようになっているのかは、いまだに「捜査中なので見せられない」との事で見てはいないが、反対車線上であることが、遺族の鑑定結果同様、検察庁での鑑定結果でも明らかになった。
4 警察から「事故証明書の内容を『出会い頭』から『その他』に変えました」と言われたが、その経緯に付いて何の説明も無いまま事件は検察庁に送致されてしまった。
5 さらに私的鑑定を続け、計三度の鑑定結果から検察に対し「科学的捜査を」と訴え続けた。1年10ヶ月経ち、ようやく検察庁が鑑定を行った結果、これまで時速70kmとされていた加害者の走行速度が、最低でも時速90km以上であったこと、あろうことか加害者は、既に交差点を渡りきって反対車線にいた被害者に向かって行ったという事故態様も明らかになった。
6速度と位置関係などこれまでの捜査内容と異なる新たな事実が判明したことで、私たちは、これで杜撰な初動捜査が改められ、全容解明に近づくと大きな期待を持った。「進行を制御することが困難な高速度」であるから危険運転致死罪の可能性もある。制御可能で、娘がいる右へハンドルをきったのであれば「殺人」行為である。
検察庁による鑑定結果で『加害者が自分の走行車線を走っていれば事故になっていない。加害者がブレーキを緩めハンドルを切ったと証言している箇所では、被害者は反対車線にいたことは明らか』という事実が証明されたにも拘わらず、なぜ加害者が自らブレーキを緩め反対車線にトラックを進行させたのかなど、何より肝心な部分の解明はなされず「業務上過失致死罪」での起訴となった。

起訴までの2年3ヶ月と言う長い時間知る事ができない苦しさ、現行法制下の被害者の置かれた地位・立場の弱さを嫌と言うほど味わされ、「裁判になれば知る事が出来る」と言われ続け公判を待ち望んでいた。そして、起訴から2ヶ月経過しても何の連絡も無く「こんなにも時間が掛かるものなのか」と自分たちの弁護士に相談し、検察庁に連絡してもらって知った事実は、「公判前整理手続き」の適用決定だった。どのような制度なのか。刑事訴訟法を読み込み、とにかく制度を調べる日々が始まった。制度の意味はある程度把握できたが、被害者に関しての記載が一切無い。
現在「起訴」と「公判」となった場合は被害者に対して通知義務があるが、公判前整理手続きは起訴と公判の間に非公開で行われることから、被害者に対して制度の適用すら知らせる必要が無いという考えとの事だが、到底納得できる話ではない。
特にこの事件は「過失事件」での起訴である。本来は裁判員制度の適用されない「業務上過失致死罪」である。裁判所が認めればどの事件でも公判前整理手続きは適用できると明記はあるものの、遺族としては「適用に至った理由」は知る権利としてあるのではないか。
現行法律を理解した上で、公判前整理手続きへの「参加」を要望しているのではない。本来であれば法廷で知る事なのだから、不都合な点など存在しないはずである。やり取りを見ること、知る事が出来ない事がおかしいと言っているのだ。この制度は、被害者保護どころか司法が被害者に追い討ちをかけて苦しめているのではないか。確かに裁判の迅速化を求める被害者もいるとは思うが、なぜ被害者の意見を全く聞かないのか。犯罪被害者等基本法などやっと被害者に対しての権利が明記された法律と、被害者に対しての明記が全く無い『公判前整理手続』という刑事訴訟法の二つ全く逆行した内容の法律に、苦しむ事になるとは夢にも思っていなかった。

法務省に対し直接、公判前整理手続の件で問い合わせてみたのだが、4箇所の部署をたらいまわしにされた上、長い時間待たされ「良く分かりませんが、被害者に対しての明記はありませんね。詳しくは検察庁に聞いてください」という答えであった。
検察庁には、法務省の説明を受け「『非公開』と『被害者に対し説明してはならない』というのは意味合いが違うのではないか」「経緯、手続きの期日等知らせることに何の影響があるのか。この手続きが適用された経緯も知らされずに、更にはこちらから問い合わせを行わなければ、今現在なのも知らずに公判を待ち続け、裁判が始まって公判前整理手続が適用された事件であった事を知る事になっていたかもしれない。従来どおりの裁判であれば、当然知れる事を前倒しで行っているだけの事ではないか。何故その内容を『非公開』を理由に遺族に対し秘密にするのか。」「被害者の権利を明記した法律を施行し、それと全く相反する事を国が行っていいのか」との質問に答えは未だにない。『非公開=秘密』との解釈が、検察庁および裁判所の判断であるのか、法律自体の内容が、相反する法律の施行と定めているのか、明確にしていただきたいという思いが強い。

被害者遺族が「当事者」と位置付けされた今、当然当事者であるならば裁判に直接関与できることは当然で、直接裁判に関与できない「当事者」であるならば、それは飾りだけの位置づけである。
被告は事件の真相は当然のこと、捜査状況も知った上で調書作成も行われ裁判前に全て知る事ができる。反対に被害者は裁判になるまで何一つ知る権利が無い。私たち娘の事件はいよいよ裁判となり事件の真相が知る事が出来ると思えば、また何の説明も無いまままた蚊帳の外に放られたのだ。裁判が始まると『連日的開催が原則』とした裁判行われる可能性が高い。このような方式で行われる裁判で、どこまで「当事者」である遺族が事件の真相を理解する事ができるであろうか。唯一法廷の中に入り被告および裁判官に対して述べることの出来る「意見陳述」までも脅かされる事があってはならない。
刑事裁判の参加は「当事者」なのだから当然の事であり、私たちのように公判前整理手続き適用となった遺族は、この段階から刑事裁判は開始しているも同然である。しかし現状はまたも当事者の扱いは全くされていない。
『裁判の迅速化』つまりは『裁判員制度の成功』だけを目的とし、裁判員となる国民に分かりやすい裁判だけを考えた法律であり、犯罪被害者の事など考えてもいないと非難されても仕方の無い状況であり、この被害者の権利が明記されていない法律は当然改正すべきである。私たちはこの制度の適用により、記録の閲覧・謄写を経ての意見陳述までもが不透明な状況である。検察庁に直接話をしているのはもちろんの事、弁護士を通じて上申書を提出し裁判の迅速化を理由に、本来の意見陳述の意味を成さない状況の回避を強く要望している。

最初に経緯を述べたように、警察が必ずしも適正捜査を行っているとは限らない。遺族の持っている客観的証拠を、民事裁判同様証拠として使えるように変えることも時には必要ではないか。事実、遺族のほうが写真・ビデオ等で証拠を多く持っていたり、警察が知らないか若しくは捜査していない事実関係を多く立証している場合もある。捜査段階から被害者に適正に情報開示し、証拠に関しても積極的に認めるべきである。 そして、刑事裁判に被害者を積極的に参加させることが、被害者の権利確立に繋がると考える。

犯罪被害者は、事件が起こったその瞬間からなぜこのような犯罪が起こったのか、真実を知りたい、どのような捜査が行われているのか知りたいと思うのである。かけがえの無い、愛する家族・子供の命が奪われた者であれば、その気持ちはより強いものであり、どんなに時間が経とうとも苦しさや悲しみや悔しさや辛さが増幅されることはあっても、気持ちが癒えるとか悲しみが薄らぐ事も無いという事を理解して欲しい。
『犯罪被害者を救う目的の法律を』と言うのであれば、何より犯罪被害者にとってかろうじて1つの区切りとなりうる刑事裁判に関わる情報を開示し、裁判でも直接関与を認めることを強く要望する。遺族にとって刑事裁判が如何に重要な意味を持っているのかを考えれば、刑事裁判での権利と関与を認めて当然である。
「公判前整理手続き」の問題点について(前田)
白倉事件に適用の「公判前整理手続き」の問題点について

白倉事案が通常の裁判手続ではなく昨年11月導入されたばかりの「公判前整理手続き」の適用とされた。業過事件では道内初という。これには次のような問題点を指摘せざるを得ない。

一方で「犯罪被害者保護2法」や「犯罪被害者等基本法」で被害者等の尊厳が言われながら、裁判員制度新設に関連してつくられた「公判前整理手続き」では、それらの精神とは無関係に「迅速化」だけが至上命題とされ、公判前整理手続きの事前協議に被告は出頭できるのに、被害者遺族についての規定はなく、証拠についても被告・弁護人には開示されるが被害者への規定はやはりないなど、これまで「公開」で行われことによってチェックが可能であった部分が非公開で行われることに危惧を抱く。密室化により、裁判が「儀式化」され、「基本法」やこれにもとづく「犯罪被害者等基本計画」で指向されている「被害者の刑事裁判に参加する権利の拡大」という視点からは正に逆行ではないか。
「保護2法」で新設された、公判後訴訟記録を閲覧謄写でき、事件の詳細を知ったうえで意見陳述できるという被害者の権利も制限される。

白倉さん自身は既に取り組みを始めており、担当検事に対して弁護士を通して、
 ◎争点整理の内容について逐次教えて欲しい
 ◎事件の詳細を知った上で意見陳述したいので、2回目以降の公判は3週間以上開けて期日設定をして欲しい。
など、2月2日に申し入れ(上申書提出)をしている。しかし、検察庁は今のところ「規定に無いので何とも言えない。期日だけは連絡します」という不当な対応に終始。
先日(2006年3月5日、)札幌で内閣府犯罪被害者等施策推進室による基本法と基本計画の説明会があったが、上記の趣旨での私の質問(基本法の精神とこれと別建てで進んでいる裁判員制度導入のための「公判前整理手続き」との矛盾について)に、内閣府の担当官も今は調整されておらず今後の課題という主旨の説明。
上記の視点での問題提起と公正な運用を監視する必要を痛感している。
(前田 2006年3月12日)


※参考資料  「京都新聞」2005年12月2日の記事(白倉さん提供)
非公開の公判前整理手続き 裁判の「儀式化」懸念も
社会報道部・阿部秀俊

市民が刑事裁判に参加する「裁判員制度」の2009年5月までの実施に先行して、計画的で迅速な審理を目指す「公判前整理手続き」が今年11月、現行の刑事裁判に導入された。初公判の前に争点を整理する手続きで、京都地裁でも殺人未遂など2つの事件に適用することが決まった。弁護士や検察は導入を前に研修などを重ねてきたが、非公開で行われる手続きが公判の「儀式化」を招くのではないか、との懸念も残る。
弁護、検察、双方に影響
「公判の方向性を決め、裁判の勝負を分けると言っても過言ではない」。京都弁護士会刑事委員会の三野岳彦委員長は語気を強める。初公判の前に裁判官、検察官、弁護士が一堂に会して、証拠の採否を決めたり主張を整理し、その後の公判の審理計画を立てる。被告は参加することも参加しないこともできるが、手続きは非公開だ。
弁護側には、検察官からの証拠開示の範囲が従来より広がる利点はあるが、手の内も早い段階で示さなければならない。功罪があるため当初は弁護士会でも賛否が分かれたが、「決まった以上は有利な運用を目指す」と会員の意見はおおむね一致。1年前、弁護士十数人で始まった研修会は、11月初旬には100人を超え、関心も高まってきた。
検察側にも影響は大きい。「今までは公判途中に、予想もしていなかった主張で反論され、難しい再捜査を強いられることもあった」と京都地検の幹部は明かす。今後、同手続きが適用された裁判では、初公判の前に示さなかった事実や証拠を持ち出すことは原則禁止になる。「あと出しじゃんけんは、もうない」
市民チェック機能減
弁護側、検察側双方の思惑が交錯する同手続きだが、非公開で行われる部分が増えるため、傍聴する市民に届く情報は少なくなる。
例えば、知人を包丁で刺した殺人事件の裁判で、確定的な殺意を指摘する検察側に対し、弁護側は殺意を否定、傷害致死罪の適用を主張したとする。これまでの刑事裁判なら、互いの主張を裏付けるために証拠や証人の採否をめぐって法廷で激しいやりとりを繰り広げる。その結果、殺人罪の適用が避けられないと弁護側が判断すると、公判の途中で情状面の立証に力を入れることもある。ところが、新しい制度の公判では、いきなり情状立証からスタートすることもあり得る。事実認定について、正しい審理が行われたか、市民のチェック機能は減ぜられる。立命館大法科大学院の指宿信教授(刑訴法)は「非公開の手続きで、被告人不在のまま、司法取引的なことが行われる可能性も否定できない」と懸念を示し、「時間の短縮を理由に、公正な裁判が失われてはいけない」と注文をつける。

運用の注視不可欠
「裁判員になってもらう市民を長期間拘束できない」「法律の知識がなくても分かる裁判にしたい」。裁判員制度をPRするシンポジウムなどで、よく耳にする。しかし、事件を分かりやすくすることが、極端な単純化につながり、真実から離れてしまっては意味がない。
近い将来、審理に加わる市民に何を、どう伝えていくのか。4年後に迫った裁判員制度が目指す「国民の司法参加」を形骸(けいがい)化させないためにも、公判前整理手続きの運用を注視していかなければいけない。[京都新聞 2005年12月2日掲載]

2006/03/16 「北海道新聞」
危険運転致死事件で道内初適用 公判前手続き
スピード審理 懸念も 被害者 争点いかんで疎外感
弁護士 時間なく多忙極めた

昨年十一月から刑事裁判に導入された「公判前整理手続き」が道内で初適用された危険運転致死・覚せい剤取締法違反事件は、十五日に札幌地裁で判決があり、初公判から二週間で一審の審理を終えた。「裁判の迅速化」との目標は達した一方、争いのある点に重点を置く審理の進め方などについて、弁護士や犯罪被害者から懸念の声が上がっている。
十五日の判決は、昨年十一月に札幌市手稲区で起きた死亡交通事故などで、危険運転致死と覚せい剤取締法違反(使用)の罪に問われた小樽市の無職男性被告(41)に対して行われた。裁判長は「被告が自ら覚せい剤を使用した可能性を指摘した知人の証言は信用できない」と覚せい剤取締法違反について無罪とし、危険運転致死罪のみを認定、被告に懲役六年(求刑・懲役十年)を言い渡した。
長女の死亡事故をめぐる加害運転手の公判が現在、同手続きに付されている空知管内南幌町の農業白倉博幸さん(34)夫妻は、先行するこの裁判で制度の実態を確かめようと、同地裁に何度も足を運んだ。公判の進行に「一体、何の事件の審理をやっているのか」と疑問が膨らんだ。
事件は死亡交通事故の加害運転手の刑事責任が問われたはず。しかし目の前で繰り広げられたのは、覚せい剤の話ばかり。「事件の核心は事故で人一人を死なせたことだ。なぜ余罪ばかり調べるのか」。白倉さんは戸惑った。
この裁判は同手続きにより、弁護側が危険運転致死罪について争わず、「覚せい剤の故意使用があったかどうか」に争点が絞られていた。このため三回行われた公判のほとんどが覚せい剤事件に費やされ、事故についての審理はわずか十数分だけ。白倉さんは「この手続きは事件の本質を置き去りにし、真相究明を望む被害者の立場をないがしろにするのでは」と懸念する。

札幌高裁によると、道内の覚せい剤取締法違反の否認事件は昨年一-十月の平均で、起訴から判決までの期間が五・九カ月、公判回数は六回。今回の事件はそれぞれ四カ月、四回と短縮された。しかし被告の弁護人の田村智幸弁護士は、「特に公判が始まってからは多忙を極めた。裁判所の判断次第では公判が『セレモニー』と化す恐れがあった」と、スピード審理の弊害を指摘する。
公判は被告と対立する証人尋問の翌日に被告人質問を行うなど、時に連日行われた。田村弁護士は証人尋問の内容から、被告の携帯電話の発信履歴を徹夜で検討し、翌日の被告人質問を通じて、当時は覚せい剤を未入手だったことを裏付けた。「普通の裁判ならほぼ一カ月間隔で開廷され、じっくり検討できるが、今回はぎりぎりだった」と話す。一方、札幌地検は「裁判所も弁護士も初めてで、不慣れな点はあったが、手続き自体に問題はなかった。公判で必要な立証は十分尽くした」としている。

2006/05/02 「毎日新聞」(下記クリックで報道記事画像が開きます)
事件のすべて知りたいのに 公判前整理手続き 導入半年 情報開示 被害者から不満

報道記事を見る【PDF】

2006/05/16 北海道新聞
札幌地裁岩見沢支部・業過致死事件「公判前整理手続き」長引き…
起訴から5カ月 公判始まらず「迅速化に反する」元裁判官/「時間かけていい」北大大学院教授

札幌地裁岩見沢支部で、業務上過失致死の罪に問われた元トラック運転手の公判が、起訴から五カ月以上も始まらない異例の事態となっている。事件に公判前整理手続きが適用され、争点整理が長引いているためだ。裁判迅速化を目的に導入されたばかりの同手続きが、逆に長期化を招いている格好で、専門家からは、そのあり方をめぐって賛否両論が出ている。
公判前整理手続きは、刑事裁判で初公判を開く前に、検察側、弁護側、裁判所が公判の論点について話し合い、争点を整理するのが目的。裁判員制度が導入されるのを前に公判の迅速化を図ろうと、昨年十一月に導入された。適用するかどうかは事件ごとに裁判所が判断する。重大事件で適用される例が多く、業務上過失致死事件に適用されるのは珍しい。
岩見沢の裁判の被告は北広島市の男性(45)。二○○三年九月、空知管内南幌町で自転車の中学三年生白倉美紗さん=当時(14)=がトラックにはねられ死亡した交通事故をめぐり、業務上過失致死の罪で在宅起訴された。
同様事件では通常、起訴から一-二カ月で初公判が開かれるが、今回の被告は昨年十二月二日に起訴されたのに初公判の日程も決まっていない。関係者によると、弁護側が事故時のトラックの速度などを否認し、公判の長期化が予想されるため、整理手続きが適用されたとみられる。美紗さんの父で南幌町の農業、博幸(34)さんは「事故から二年三カ月もたってようやく起訴され、法廷で真実が明らかになると思ったのに、半年近くも非公開で(整理手続きが)進められている」といらだちを隠さない。
岩見沢支部での整理手続きはまだ三回しか行われていない。元裁判官で公判前整理手続きに反対している生田暉雄弁護士(香川)は岩見沢支部の対応について、「裁判迅速化の目的に反しており、異常な訴訟指揮。地方の支部で適用すること自体、疑問」と批判する。その上で、「争点整理後の公判は、実質のない抜け殻のような裁判となる。犯罪被害者基本法で定められた被害者の権利を無視するに等しい」と話している。ただ、北大法科大学院教授の中山博之弁護士(札幌)は、「争点整理は時間をかけてもいい」と岩見沢支部の対応を評価する。岩見沢支部は長期化の理由について「回答は差し控えたい」としている。

2006/05/20 北海道新聞
遺骨、法廷持ち込みOK 地裁岩見沢支部、両親の要望くみ

【岩見沢】二○○三年九月、空知管内南幌町で同町内の中学三年生白倉美紗さん=当時(14)=がトラックにはねられて死亡し、業務上過失致死罪に問われた男性(45)の公判で、札幌地裁岩見沢支部(岡部豪裁判長)は十九日までに、両親が美紗さんの遺骨と共に公判を傍聴することを認めた。遺骨の法廷への持ち込みを認めるのは、全国的にも極めて異例という。両親は「未成年の間は親元に居させてあげたい」と、美紗さんの遺骨を納骨せず、自宅に安置してきた。今年二月、札幌地検岩見沢支部を通じて美紗さんの遺骨の傍聴席の確保を要望し、同支部が認めた。同支部は今回の判断について「裁判長の裁量で認めることにした」としている。
裁判は、争点を事前に整理する公判前整理手続きが進められ、六月一日に初公判が開かれる。
法廷への遺影などの持ち込みは、「被告人に精神的な圧力がかかる」とする法曹関係者が多かった。しかし、ここ数年、犯罪被害者の権利確保の観点から遺影持ち込みを認める例が増えており、最近では長崎県で位牌(いはい)の持ち込みを認めたケースもあった。
ただ、遺骨の持ち込みは、希望者が少ないこともあり、日弁連犯罪被害者支援委員会の番敦子副委員長は「全国で初めてではないか」という。父親の博幸さん(34)は「美紗本人に、事故の事実が明らかになる裁判をきちんと聞いてほしかった。傍聴を認めてもらえてうれしい」と話している。

2006/06/02 北海道新聞
南幌の中3交通死訴訟 遺骨持ち込み初公判 地裁岩見沢支部、遺族「判決一緒に」 

【岩見沢】二○○三年九月、空知管内南幌町の道道交差点で中学三年生白倉美紗さん=当時(14)=をトラックではね死亡させたとして、業務上過失致死の罪に問われた北広島市西の里東一、無職荒川周一被告(46)の初公判が一日、札幌地裁岩見沢支部(岡部豪裁判長)で開かれ、美紗さんの両親が遺骨と遺影を持ち込んで傍聴した。遺骨持ち込みは裁判長の判断で認められたが、全国でも極めて異例。道内二例目の公判前整理手続き適用事件で、二月から計四回、裁判官立ち会いの下で検察官と弁護士が争点や証拠を整理してきた。荒川被告は罪状認否で、「速度は時速九十五キロではなく七十キロ程度だった」などと起訴事実を一部否認した。
美紗さんの両親は美紗さんの遺骨と遺影を携えて傍聴した。南幌中の同級生が卒業記念に作った美紗さんを含むクラス全員の名前入りTシャツとショールなどでくるんだ遺骨を抱えた母親の裕美子さん(36)は公判後、「これからも美紗と一緒に裁判に通い、判決を見届けたい」と語った。
起訴状によると、荒川被告は○三年九月一日、南幌町の交差点で法定速度を四十五キロ上回る時速約九十五キロでトラックを運転中、自転車で通学途中の美紗さんをはねて死亡させた。
<写真:白倉美紗さんの遺骨を抱え札幌地裁岩見沢支部に向かう、母親の裕美子さん(左)と遺影を持つ父親の博幸さん=1日午後、岩見沢市>

交通事故から3年  裁判始まる

事故からまもなく3年。ようやく裁判が始まりました。南幌町で女子中学生がトラックにはねられて死亡した事故で業務上過失致死の罪に問われた運転手の裁判が開かれました。死亡した女子中学生の両親はどんな思いで裁判に臨んだのでしょうか。
南幌町の白倉博幸さんと妻の裕美子さんです。娘の遺骨を胸に抱え裁判所を訪れました。2003年9月、白倉さんの長女・美紗さんは、自転車で学校へ向かう途中、トラックにはねられ死亡しました。警察は当初、「美紗さんが道路に飛び出しだ」のが原因としてトラックの運転手に過失はなかったという判断を示しました。 (白倉さん)「だからどこでぶつかったのよ」 美紗は悪くない。
白倉さんは、なぜ事故が起きたのか、自分たちで調査を進める一方、警察に再捜査を要請しました。その結果、去年12月、スピードの出しすぎと前方不注意でトラックの運転手が業務上過失致死で起訴されました。白倉さんの執念でした。
そしてきょう、1回目の裁判では運転手が出していたスピードと、美紗さんをどこではねたか、この2つが焦点となりました。裁判で運転手は過失を認めましたが、美紗さんが車道のセンターライン付近を走っていたためにはねてしまったなどと起訴事実の一部を否定しました。
これに対し検察は、運転手がスピードを90キロ以上出していたこと。また、歩道にいた美紗さんをはねたと指摘しました。(白倉さん)「最後に見ているのは本人。真実を話して欲しい」
「なぜ事故は起きたのか」、「いったい何が本当なのか」、この疑問が裁判で明らかになるのか、白倉さんは不安を胸に裁判所を後にしました。
(2006年6月 1日(木)STV「どさんこワイド180」より)

2006/07/14 北海道新聞
公判前手続き2例目 中3交通死訴訟結審 地裁岩見沢支部

【岩見沢】二○○三年九月、空知管内南幌町で中学三年の白倉美紗さん=当時(14)=をトラックではね死亡させたとして、業務上過失致死の罪に問われた北広島市西の里東一、無職荒川周一被告(46)の論告求刑公判が十三日、札幌地裁岩見沢支部(岡部豪裁判長)で開かれ、検察側は禁固三年を求刑し、結審した。
 判決は二十七日で、道内二例目の公判前整理手続き適用事件は六月一日の初公判から約二カ月で結論が出される。全国でも異例の法廷への遺骨の持ち込みが認められ、白倉さんの両親は初公判から結審まで五回の公判に美紗さんの遺骨と遺影を持参して傍聴した。
論告などによると、荒川被告は○三年九月一日、南幌町の道道交差点で法定速度を四十五キロ上回る時速約九十五キロでトラックを運転中、自転車で通学途中だった美紗さんをはねて死亡させた。

朝日新聞  2006/7/28
交通死の14歳 両親働きかけ起訴 被告に執行猶予判決 速度超過認定

空知支庁南幌町の道々交差点で03年9月、自転車で通学途中の中学生白倉美紗さん(当時14歳)が、トラックにはねられ死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた北広島市の無職、荒川周一被告(46)に対する判決公判が27日、札幌地裁岩見沢支部であった。岡部豪裁判長は禁固3年執行猶予5年(求刑禁固3年)を言い渡した。
事故後、美紗さんの一方的な過失とされることに危機感を抱いた両親が、専門家に事故鑑定を依頼したり、検察に公正な捜査を求めたりした結果、事故から2年8ヶ月後に荒川被告が起訴された。審理を早める公判前整理手続きもとられた。公判では、荒川被告は衝突地点や車の速度などについて、起訴事実の一部を否認して争っていた。
判決によると、荒川被告は被害者を発見した後も制限速度を28.8キロ以上超えて走行していたと認定。衝突地点は検察側が主張する反対車線だったとした。
判決後、記者会見した遺族は「執行猶予がついた判決は不満。公判前整理手続きが行われた事で証拠調べが不十分で、遺族の意見陳述も制止された」と述べた。また、荒川被告と当時の勤務先の会社に対し7500万円の損害賠償請求を求める民事訴訟を札幌地裁に提訴した事も明らかにした。

読売新聞 2006/7/28
南幌の死亡事故「暴走とは言えぬ」猶予付き判決
禁固3年 トラック時速78km認定

北海道南幌町で2003年9月、トラックを運転中、自転車で通学途中の白倉美紗さん(当時14歳)をはねて死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた北広島市西の里東1、 荒川周一被告(46)の判決公判が27日、札幌地裁岩見沢支部であった。
岡部豪裁判長は「わずか14歳で突然この世を去ることを余儀なくされた被害者はあまりに哀れ。遺族らの処罰感情も峻烈だが、暴走とまでは言えない」などとして、禁固3年執行猶予5年(求刑禁固3年)を言い渡した。
刑事裁判の公判前に争点を絞り,審理を迅速にする「公判前整理手続き」が道内2例目で行われた。争点はトラックの走行速度と衝突地点の2点。走行速度について、検察側は時速95キロ以上、弁護側は70キロと主張したが、岡部裁判長は再計算の結果、時速78.8キロ以上と認定。衝突地点は、荒川被告の車両の反対車線内だったとする検察側の主張を認めた。
判決後、会見した両親の博幸さん(35)と裕美子さん(36)は「真実とはほど遠い」と批判。公判前整理手続きについて「新たに証拠を出せず悔しかった。検察は控訴して真実を明らかにしてほしい」と涙を浮かべた。両親は、荒川被告と当時の雇用会社を相手取り、7500万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こしている。

北海道新聞 2006/07/28
南幌・中3交通死 「暴走と言えぬ」 被告に猶予判決

【岩見沢】空知管内南幌町で二○○三年九月、中学三年の白倉美紗さん=当時(14)=をトラックではね死亡させたとして、業務上過失致死の罪に問われた北広島市西の里東一、無職荒川周一被告(46)の判決公判が二十七日、札幌地裁岩見沢支部で開かれ、岡部豪裁判長は禁固三年、執行猶予五年(求刑・禁固三年)を言い渡した。道内二例目の公判前整理手続き適用事件で、争点を被告の車両の速度などに絞った。岡部裁判長は判決理由で、時速九十五キロ以上出ていたとの検察側の主張について「科学的根拠に欠ける」として退け、七八・八キロ以上だったと判断。「被告の過失は重いが暴走とまでは言えない」と述べた。
判決によると、荒川被告は○三年九月一日、南幌町の道道交差点で、自転車で通学途中の美紗さんをはね死亡させた。美紗さんの両親は全国でも異例の法廷への遺骨の持ち込みが認められ、美紗さんの遺骨と遺影を持ち傍聴した。
判決後、両親は「公判前整理手続きは被害者をかやの外に置いている。公判の内容も、執行猶予付きの判決にも納得いかない」と述べ、検察側に控訴を求めた。また、荒川被告と事故当時、同被告が勤務していた運送会社に計七千五百万円の損害賠償を求め、同日までに札幌地裁に提訴したことも明らかにした。

時速78キロ暴走と言えぬ猶予判決に両親無念

自転車の女子中学生をトラックではね死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた元運転手荒川周一被告(46)に、札幌地裁岩見沢支部(岡部豪裁判長)は27日、禁固3年、執行猶予5年(求刑禁固3年)を言い渡した。被害者の白倉美紗さん=当時(14)=の両親は娘の遺骨を持ち傍聴、判決後に父親の博幸さん(35)は「一緒に判決を聞いた美紗も悔しいと思っているだろう」と無念さをあらわにした。
制限速度50キロの現場でどれだけの速度が出ていたかが争点となっていた。岡部裁判長は、時速95キロ以上との検察側主張を「科学的根拠に欠ける」として退け、78・8キロ以上だったと判断。その上で「被告の過失は重いが、暴走とまでは言えない」と判決理由を述べた。
(共同通信) - 7月27日20時3分更新

[ 札幌テレビ放送 ]

真実は明らかにならなかった」と両親は怒りをあらわにしました。3年前、南幌町で女子中学生がトラックにはねられ死亡した事故で、業務上過失致死の罪に問われた運転手に対し、裁判所は執行猶予つきの有罪判決を言い渡しました。
南幌町の白倉博幸さんと妻の裕美子さんです。きょうも娘の遺骨を胸に抱え裁判所を訪れました。(白倉裕美子さん)「ただ力不足な部分もあったので、美紗にごめね、と…」
2003年9月。白倉さんの長女・美紗さんは自転車で学校へ向かう途中、トラックにはねられ死亡しました。警察は当初「美紗さんが道路に飛び出した」のが原因としてトラックの運転手に過失はなかったという判断を示しました。
(白倉裕美子さん)「だからどこでぶつかったのよ!」「美紗は悪くない」―。娘を失った白倉さんは自分たちで調査を進めながら警察に再捜査を要請しました。その結果、去年トラックの運転手はスピードの出しすぎや前方不注意という業務上過失致死の罪で起訴されました。白倉さんの執念でした。1回目の裁判で運転手は過失を認めました。しかし、裁判では美紗さんとの衝突地点や運転手が出していたスピード、そして、どの時点で運転手が危険を認識したか、という部分が争われてきました。きょうの判決で裁判所は争点となっていた「衝突地点」や「危険認識の場所」について検察の主張に近いデータを採用しました。しかしスピードについては「暴走」とまではいえないとしたほか、判決理由について「不十分ながらも被告人なりの謝罪がみえる」として運転手に執行猶予つきの有罪判決を言い渡しました。
(拝野記者)「きょうの判決で裁判長が不十分ながらも被告人なりの謝罪がみえる、と判決理由を述べると母親は、何を言っているのと叫び怒りをあらわにしました」
(白倉裕美子さん)「私たちの考えとはほど遠い考えをもった裁判官だと思った」
両親の執念が実を結ぶ形で開かれた一連の裁判。しかし、両親が納得できない部分が、なお残る結果となりました。「娘の死の無念を晴らしたい」ー両親は、今後先週起こした民事裁判のなかで真実を明らかにしていきたいと話しています。
(2006年7月27日(木)「どさんこワイド180」)

北海道新聞 2006/8/4
検察側が控訴 南幌の中3交通死

【岩見沢】空知管内南幌町で二〇〇三年九月、同町の中学三年生白倉美紗さん=当時(一四)=がトラックにはねられ死亡した事故で、札幌地検岩見沢支部は三日、業務上過失致死の罪に問われた北広島市西の里東一、無職荒川周一被告(四六)に対し、禁固三年、執行猶予五年(求刑・禁固三年)を言い渡した札幌地裁岩見沢支部の判決は量刑不当として、札幌高裁に控訴した。
七月二十七日の判決は、事故当時のトラックの速度を時速九五キロとした検察側の主張を退け、同七八.八キロ以上と認定、「暴走とまで言えない」とした。同地検は猶予つき量刑に加え、この速度認定を事実誤認として、控訴を決めた。

控訴の報を受けて

検察庁が8月3日、量刑不当と速度についての事実誤認を不服として、控訴したと検事から連絡が入った時には、涙があふれました。求刑禁固3年に対し、禁固3年を維持した上での執行猶予5年の地裁判決であった事から、正直、検察庁が控訴審議に入ってくれるかどうか不安でした。諦めていたわけではないのですが、何をすればいいのか分からずにいたところ、助言等を頂き、上申書を提出。判決不服申し立てなどを行っていました。

地裁判決が事実誤認として控訴となったことは、当然!・・・・と、言いたい所ですが、一生懸命力を尽くしてくれた検事に感謝しています。これからも、ご支援の程よろしくお願いいたします。
8月4日 白倉博幸 裕美子

読売新聞 2006/12/10
法廷に遺骨 地裁でOK、高裁で不許可 南幌の交通死亡事故

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北海道新聞 2006/12/11 夕刊
南幌中3交通死「法廷に遺骨はダメ」遺族申し入れに札幌高裁

二○○三年九月、空知管内南幌町の中学三年生白倉美紗さん=当時(14)=がトラックにはねられ死亡した事故の刑事裁判で、二審の札幌高裁が、法廷への美紗さんの遺骨の持ち込みを不許可とすることを遺族に伝えていたことが十一日までに分かった。一審の札幌地裁岩見沢支部と札幌地裁での民事裁判では認められていたため、遺族は四日、不許可の理由を求める上申書を同高裁に提出した。高裁は「回答時期は未定」としている。
美紗さんの父博幸さん(35)によると、十月八日に遺骨持ち込みの要望を高裁に申し入れたが、今月一日、不許可との連絡があった。博幸さんは「犯罪被害者支援の動きが広がっている中で、理由も示さず不許可にするのはおかしい」と話し、「刑事裁判は二審で終わりになると思う。裁判の行方を最後まで美紗と一緒に見届けたい」と訴えている。
一審では元トラック運転手の男に禁固三年、執行猶予五年(求刑禁固三年)の判決が言い渡され、検察側が控訴した。

2006/12/20 北海道新聞
遺族「実刑に」南幌中3交通死 控訴審初公判

空知管内南幌町で2003年9月、中学3年生白倉美紗さん=当時(14)=をトラックではね死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた北広島市西の里東1、無職荒川周一被告(46)の控訴審初公判が19日、札幌高裁(長島孝太郎裁判長)で開かれた。
一審と同様に遺骨を抱いて傍聴したいとの申請を不許可とされた両親が、遺影を手に傍聴した。母親の裕美子さん(37)は、意見陳述で「一審の初公判まで謝罪しなかった荒川(被告)への恨み、憎しみは消えない」と述べ、執行猶予付き有罪とした一審の札幌地裁岩見沢支部判決を見直すよう要望。父博幸さん(35)も「実刑判決を心から望みます」と訴えた。
閉廷後、両親は「当事者(美紗さん)が法廷にいないのはおかしい」と話し、美紗さんの遺骨の持ち込みを求める上申書を再度、高裁に提出することを明らかにした。控訴審初公判で検察側は、「一審判決は事実誤認で、量刑も著しく軽すぎて不当」と主張。弁護側は控訴棄却を求めた。
争点となっているトラックの速度について、高裁が再現場実験を提案。検察側は次回公判までに実験の可否を判断する。

12月19日の控訴審初公判において、
本当にたくさんの方に御支援いただき、とても心強く、そして何より感謝の気持ちで一杯です。
静岡から駆けつけてくださった方や旭川からなど遠方から駆けつけてくださった方・・・・・
そして、来ていただいた全ての方々に心より感謝いたします。ありがとうございます。

「一審での電柱折損速度の0kmという認定に対し、実験などで立証できないか」と検察に対し、電柱折損速度を含めた速度認定が事件の真相解明の点においても重要との見解を裁判所から言われたこと、公判前整理手続きの効力は、あくまで一審までの事とし、高裁での新たな証拠申請が認められたこと・・・・など
少し希望が持てた初公判でした。

そして、その中での意見陳述で、思いをあらためて言う事が出来ました。90人収容の法廷が、満席となり傍聴できない方が十数名居たと聞き、感謝と申し訳ない気持ちです。
本当にありがとうございました。皆さんの力に支えられてここまできたのだと再認識しました。
第2回公判(1月16日午前11時から 鑑定士、警察官の証人尋問)に付きましても引き続き、御支援いただけますようお願いいたしますと共にこの皆さんのご支援の中、真実が少しでも明らかになり被告に実刑判決が下ることを目標に今後もがんばっていきます!!

12月19日  白倉博幸・裕美子

2007/1/16
控訴審 第2回公判報告(前田記)

1月16日、11時~、札幌高裁で行われた控訴審第2回公判。傍聴者は報道も入れて約60人。時間は約40分でした。
検察側証拠の鑑定(主に速度について)を行った山崎氏と、現場での同時期同時間での通行車両の速度などを調査した栗山署警部補が証人尋問を受けました。
後者の尋問では、通学時間1時間の通行車両115台の平均速度が58.97キロで、80キロ以上は3台だけであったことなどが示され、被告が如何に危険速度で暴走していたかが明らかにされることとなりました。今後、電柱折損のエネルギーと速度の関係の嘱託鑑定の可否を近日中に確認し、それに基づいて次回日程が決められることとなりました。 引き続き支援をお願いします。以下は白倉さんからのメールコピーです。

今日の公判前、被告と裁判所の入り口で目が合ったのですが被告は私たちを無視し通り過ぎていきました。
法廷でも悪びれた様子ひとつなく、大股開いて座って居ましたが、裁判官の入廷と同時に急にうなだれ反省したような態度への急変には、開いた口がふさがりませんでした。
元旦が月命日の私たちが、どんな思いで一年を追え新年を迎えたのかなど全く考えていない・・・と体が震える程の怒りが込み上げてきました。
速度鑑定の是非が19日に分かるという事で、今後の裁判期日が未定のままで今日の審理は終了となりましたが、今は鑑定に至ることを願うしかありません。
事件から3年4ヶ月、鑑定となると更なる時間を要します。真実、真相解明のためなら・・・・・と考えていますが、なぜここまでという気持ちも大きくなっています。

ですが、この長期間の戦いを支えてくださっている皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。美紗の想い、そして美紗を想ってくれている皆の気持ちが必ず事件の真実解明へ繋がると信じています。課題、問題の多い交通犯罪の実情の訴え等を引き続き行いながらがんばっていこうと思っています。
今後とも引き続きのご支援のほどよろしくお願い致します。
(2007/1/16 白倉博幸、裕美子)

2007/5/29
控訴審 第3回公判報告(前田記)

第3回公判は、前回検察側が、電柱衝突時のコンピューター実験ができる鑑定人をみつけたということで、延び延びになっていましたが、ようやく札幌高裁にて行われました。遠くは旭川からも駆けつけていただきましたが、傍聴支援本当にありがとうございます。
約50人の傍聴者が見守る中、鑑定を行った岸のりみつ氏(室蘭工業大学、建築システム工学)への証人尋問が約1時間にわたって行われました。白倉さんの粘り強いとりくみで、真実に基づいた裁きに近づきつつあります。審理内容や、傍聴へのお礼について白倉さんからメールが届いていますので紹介します。
なお、次回(結審)公判は6月19日、13:30~ (札幌高裁、8階5号)です。引き続き、よろしくお願いいたします。

鑑定のため休廷していた裁判が約4ヶ月ぶりに再開しました。地裁では0kmとされた電柱衝突速度が被告に有利に計算しても電柱衝突時で19kmあったとの鑑定結果が出ました。時間は掛かりましたが、また少し真実に近づいていると感じます。
これだけの鑑定を行い、それでもまだ鑑定を否定する司法で無いことを祈るばかりです。裁判長交替を受けて、再度美紗の傍聴を上申していましたが、また理由もなく「不相当です」で終わってしまったことは残念です。
被害者救済の動きが少しずつ動き出していますが、まだ被害者の心は理解されていないと実感しました。
今回の裁判も、お忙しい中本当にたくさんの方に裁判傍聴に来て頂き、心より感謝申し上げます。次回の6月19日で結審のようです。19日には13歳になった美紗の妹の紗穂が意見陳述を行います。皆さんの暖かな支援をよろしくお願い致します。本当に長い時間が掛かっていますが、先が見えてきました。
今は、美紗の命を奪った被告に執行猶予の無い実刑判決が下ることを願うばかりです。
(5月29日 白倉博幸 祐美子)

2007/6/19
控訴審 第4回公判報告(前田記)

第4階回公判が札幌高裁(矢村 宏 裁判長)で行われました。傍聴支援の方ありがとうございました。
傍聴者約40人の見守る中、先ず、美紗さんの妹さんの意見陳述が行われました。中学生になってお姉さんと同じ制服で同じ中学校へ通うようになってからの新たな悲しみや家族の悲嘆、実刑を望む思いなど、涙ながらに最後までしっかり述べました。
「お姉ちゃんと同じ14歳を迎えるのが怖い。14歳の誕生日が来なければ良い。どうしてお姉ちゃんを私たち家族から引き離したのか。お姉ちゃんを今すぐ返して下さい。私は絶対に許さない・・・」切々たる訴えに、すすり泣きの声が漏れ、被告人席以外の法廷全体が厳粛な空気に包まれました。
続いて、検察の論告が行われ、「電柱折損のエネルギーからの速度鑑定を加えると、被告有利に見積もっても、時速90キロ以上(という暴走運転)が充分推認できる。峻烈な被害者の思いからも(一審の執行猶予を破棄し)実刑を」と主張しました。
今回で結審。判決は、9月6日(木)10:00~札幌高裁8階2号法廷となりました。白倉さんからの傍聴支援へのお礼のコメントは以下です。

お忙しい中、傍聴支援いただきありがとうございました。今日の娘の意見陳述で、初めて知った娘の気持ちもありました。そんな心情にも気付かずに、私自身の感情コントロールがうまく出来ない事で辛い思いをさせていたな・・・と落ち込んでいます。
今日の被告弁護人の弁論には、開いた口がふさがりませんでした。トラック重量のことに関しても、現場の通行量と平均速度の調べに対してもこじ付けにもならない、何とも馬鹿げた弁論だとしか言いようがありません。
速度に関しても、『被告側主張の摩擦係数0.6でも検察主張の0.63でも、81km~83km弱にしかならず、地裁判決の78.8kmから、たった2~3kmしか変わらないから暴走とはいえないので、控訴棄却相当』との言葉には、いくら仕事とはいえ、このような非常識極まりない言葉を法廷で述べる法曹者がいることに驚きました。
普通に走行していて、法廷速度30km超過で捕まった場合でも、免停になる。そして罰金が科せられるのに・・・最低でも法廷速度31~33km超過で人を殺しているのに、「暴走とはいえない」など信じられません。このような主張が通るはずのない国であって欲しいものです。
判決が9月6日(木)午前10時~と、思っていたより期日が開いたこと、美紗の4回目の命日9月1日までに判決を聞けないことが残念です。
4年の月日の間、様々なことがありましたが、検察主張の速度が認められ、実刑になると信じて待つしかありません。9月まで・・・長いですが・・・引き続きの皆様の暖かいご支援のほどよろしくお願い致します。
(6月19日 白倉 博幸 裕美子)

2007/9/6
控訴審 判決公判報告
不当判決! 札幌高裁は一審の執行猶予判決を支持

札幌高裁、矢村宏裁判官は9月6日、不当な原審を支持し、控訴を棄却しました。
判決後、執行猶予となった加害の運転手は、美紗さんと遺族に一瞥もなく、何食わぬ様で法廷を後にしました。
主文に続いて件の裁判官が述べた判決「理由」には、何一つ真実はなく、これでは裁判所は茶番劇の舞台でしかありません。裁判所は加害者の速度を、一審の78.8キロを改めましたが、90キロ以上とする検察の主張も退け、82.7キロと判断しました。
この認定自体承服しかねる判断ですが、法定速度を32.7キロも超過し、結果として人を殺めた危険運転がどうして執行猶予なのか、甚だしく不当極まりありません。矢村裁判長はこの危険速度を何と「暴走とは言えない」と言明。そして、制御を失い、美紗さんのいる反対側にハンドルを切り(向かって行き)反対側歩道上で美紗さんを轢いた殺人運転を、「飲酒運転や無免許、薬物の影響などによる無謀運転ではない」と言い放ちました。挙げ句の果てに、交差点を渡っていた美紗さんに過失があるかのような言。

裁判所の姿勢、裁判官の資質が真に問われます。クルマが「効率」よく運行するには、人命の犠牲もやむを得ないとする「クルマ優先社会」は、こうした「腐った司法」にも支えられているのです。白倉さんご家族は、奥さんが体調を崩しながらの傍聴でしたが、悲嘆の中、怒りを次のたたかいへぶつけるべく記者会見に臨み、その足で弁護士とともに上告の要請を行うため検察庁に向かいました。
検察は即刻上告すべきです。このような不当判決を許しては、市民の安全は護られません。傍聴支援された皆さん、本当にありがとうございました。こんな不公正と不条理を許すことは到底できません。
今後も支援を強めましょう。(9月6日 前田)

高裁判決について

今回の控訴審判決は、ある意味地裁判決よりも著しく常識外であり、一般常識、社会通念のないものであったと、強い憤りと悲しみの中にいます。このような裁判官がいるこの国での裁判員制度実施は、絶対に成り立たないと確信しました。
判決内容も、事件の本質から大きくかけ離れており、今後、判決不服申し立て、高裁・最高検への上申書を提出します。
■道幅3mの狭い道路を、9tという大型車が82・7km以上の速度で走行した事実は「超高速」ではあるが「暴走ではない」
■「左右確認をしたことが被告に渡らないと誤解させた」(運転手は渡ると判断し減速するのが当然の義務です)
■「遺族へ謝罪しているとは言えないが、不十分ながら謝罪している」(意味が分りません)
■「被害者を反対車線で跳ねているが、それは遅かれど回避しようとした結果」
などなど・・・・

被告は美紗が左右確認しているのを見たのが交差点手前4~500mと言っています。それだけ距離があれば、だれでも横断できると判断すると思います。それを過失と言うのですから、「裁判長および裁判官は馬鹿だ」「社会をもっと知れ、世間知らずだ」と言うことでしょうか・・・・・
そして「横断している美紗」に気がついて、制動をかけたのが交差点手前約53mからです。制限速度を守っていれば、絶対に事件は起きていなかったという根本的な事実に目を向けずに、下された禁固3年執行猶予5年の判決には、断固抗議していく所存です。
悔しくて悔しくて、声を張り上げてたくさんの涙を流しました。そしていま、新たな行動を起こそうと動き出しました。結果はどうなるか分りませんが、今後ともご指導、ご支援のほどよろしくお願いいたします。
(9月9日 白倉博幸 裕美子)

2007/09/06, 北海道新聞夕刊
南幌中3交通死 二審も猶予つき判決 「トラック暴走」認めず

空知管内南幌町で二○○三年九月、中学三年生白倉美紗さん=当時(14)=をトラックではね死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた北広島市西の里東一、元運転手荒川周一被告(47)の控訴審判決公判が六日、札幌高裁で開かれた。矢村宏裁判長は禁固三年、執行猶予五年とした一審判決を支持、検察側の控訴を棄却した。矢村裁判長は争点だったトラックの速度を時速八二・七キロと認定、検察側の時速九十キロ程度との主張を退けた上で、「暴走とまで断じることはできない」と指摘した。判決によると、荒川被告は○三年九月一日、南幌町の道道交差点で、自転車で横断中の白倉さんを反対車線側ではね、死亡させた。一審の札幌地裁岩見沢支部は、全国でも異例となる遺骨の法廷への持ち込みを遺族に認めたが、札幌高裁は許可しなかった。

2007/09/06  STVニュース
娘の交通事故死・・・両親の願い届かず

両親の願いは届きませんでした。4年前、南幌町で女子中学生がトラックにはねられ死亡した事故の裁判で、制限速度を30キロ以上オーバーしていた運転は、「暴走ではない」と裁判所が認定し、厳罰を求めた両親の控訴は棄却されました。南幌町の白倉博幸さんと妻の裕美子さんです。
白倉さんの長女・美紗さんは2003年9月、自転車で学校へ向かう途中、トラックにはねられ死亡しました。しかし、警察は道路に「飛び出した美紗さんに事故の原因」があり「運転手に過失はない」と判断しました。事故の真相を知ろうと白倉さんは自分たちで調査を進め、警察とは異なる検証結果を導き出しました。検察は、事故から2年3ヵ月後に過失がないとされたトラックの運転手を起訴ー。一審では、「美紗さんの飛び出しでは無い」ことを認定し、運転手の荒川周一被告に対し執行猶予つきの有罪判決を言い渡しました。しかし、検察はこれを不服として控訴していました。

(白倉裕美子さん)「(被告に対し)執行猶予の無い、実刑判決を強く望みます」
(小林記者)「今日の裁判、札幌高裁は一審で認定されたトラック78.8キロ以上のスピードを暴走とするのか、運転手に執行猶予がつくかどうかが焦点となります」
札幌高裁は、トラックのスピードを82.7キロ以上とし、「飲酒、薬物、無免許などの暴走と同じとはいえない」と認定しました。また、「美紗さんにもわずかながらも落ち度はある」として、検察側の控訴を棄却し、一審通り禁固3年執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。

(白倉博幸さん)「82.7キロのスピードで人を殺しておいて、それが暴走ではないという裁判官の考え方を疑っています」
(白倉裕美子さん)「どうして美紗が悪く言われなければ言われるのか、納得出来ない」
事故から4年。白倉さん夫婦にとっての真相を知る戦いは実を結びませんでした。
(2007年9月 6日(木)「どさんこワイド180」)

9月14日
北海道交通事故被害者の会が上告を求める上申書提出

北海道交通事故被害者の会は、不当な札幌高裁判決に対し、上告手続きをすることを求め、9月14日札幌高検に上申書を提出しました。なお、白倉さんは9月10日、札幌高検および最高検察庁に上申書を送付しています。

2007/9/16 毎日新聞 
南幌・中3死亡事故 両親が上告求め上申書 「32キロオーバーでも暴走じゃないの!」

画像をクリックで大きな記事をご覧いただけます。

2007/9/20 毎日新聞
中3死亡事故 札幌高検が上告断念 運転手に猶予判決 両親、対応を批判

空知管内南幌町の町立南幌中3年白倉美紗さん(当時14歳)をトラックではね死亡させたとして業務上過失致死罪に問われ1,2審で禁固3年執行猶予5年の判決を受けた北広島市の運転手の男(47)について、札幌高検は19日、上告を断念した。上告を求めてきた白倉さんの両親は「国民のため、被害者のための検察庁とは思えない」と無念さをにじませた。
両親はこの日、担当検事から上告断念を告げられた。母裕美子さん(37)は「検事は判決に不服で内容も納得できない言っておきながら、上告しないと言い張った」と検察側の対応に疑問を呈した。父博幸さん(36)は「真実を求めてやってきたが、真実が全くない裁判になってしまった」と語った。
粂原研二次席検事は「ご遺族の心情は十分理解しているが、適法な上告理由が見当たらず、上告は断念せざるを得ないとの結論に至った」とのコメントを出した。事故は03年9月1日午前、同町南14線西4の道道交差点で発生。検察側が量刑不当と事実誤認を理由に札幌高裁に控訴したが、同高裁は6日「控訴理由がない」として棄却した。【芳賀竜也、写真も】
写真説明:上告断念を告げられ、落胆する白倉博幸さんと裕美子さん=札幌市中央区の北海道司法記者クラブで19日

2007/9/20 朝日新聞 
14歳交通死  高検、上告断念へ 両親「司法に矛盾と憤り」

空知支庁南幌町の道道交差点で03年9月、自転車で通学中の中学生白倉美紗さん(当時14)がトラックにはねられて死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われた北広島市の無職荒川周一被告(47)の裁判について、札幌高検は19日、上告を断念する方針を固め、白倉さんの両親に伝えた。
両親は、一審の札幌地裁、二審の札幌高裁が示した禁固3年執行猶予5年(求刑禁固3年)という判断には事実誤認があり、判決が軽すぎるとして高検に最高裁への上告を求めていた。
記者会見した両親は「被告は自由に上告できるのに、被害者は検察に頼まなければ上告すらできない。私たちには被告に与えられている権利も保護もなく、どこまでも被告に有利な司法の世界に矛盾と憤りを感じる」と訴えた。

上告断念を受けて

上告してもらうことを願い、札幌高検に粘り強く要請したのですが、9月19日、担当検事に一方的に席を立たれ、高検として「上告断念」のコメントを発表されたことは、裏切れた思いでした。誠意ある対応もなく「交通事故は被告側が上告しても棄却される。札幌高等検察庁として『ダメもと裁判』はしない」と言われた瞬間、交通犯罪軽視の捜査機関を垣間見た気持ちでした。
18日には、札幌高等裁判所長官宛上申書に対する電話での返答も頂き21日には、最高裁判所に提出した上申書の返答が届きました。
被害者と共に歩むべき検察庁が、一番被害者遺族等の思いを判ろうとしない『被告のための検察庁』であり、被告保護のための法律しかない実情を突きつけられました。
何より矢村裁判長の、裁判記録を見てるとは思えない「想像判決」には裁判官としての資質が全くないと言うしか言葉が見つかりません。証拠も供述も無視し、勝手な憶測で判断されたのです。罷免すべき裁判官だと思います。
どこまでも、「当たりハズレ」のある司法に最後まで苦しめられました。所詮、最初から真実ではない証拠で起訴したのですから、良くここまで頑張ったと検事を褒めたほうがいいかもしれません。私達の4年の闘いは、最悪の幕切れでしたが、支援いただいた多くの方々に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
刑は確定しましたが、私共はまだ諦めてはいません。必ず真実を明らかにします。そして今後も、現在の司法のあり方を正し、被害者無視の法律を変えるため、被害者の権利の充実のため、交通犯罪撲滅のため、活動を続けていきます!!!
それが美紗のため、美紗が生きている証となると信じています。
(9月29日 白倉博幸 裕美子)

不当な刑事裁判終結。
真実解明、知る権利確立へ新たなたたかい

白倉博幸 裕美子

たくさんの方々の力を頂きながら、真実を求め4年間頑張ってきましたがその願いは叶わず禁固3年執行猶予5年の刑が確定しました。トラック走行速度82.7km以上、美紗が殺された場所はトラックの走行車線とは全く無関係な場所と認定しながら「飲酒・薬物使用等の悪質運転とは異なる」という矢村宏裁判長に対し不信感と強い憤りで未だ怒りが収まりません。更には被告側から損害賠償請求裁判を起される始末。美紗の血痕で汚れたのだからと道路清掃費、更にはトラックが折損させた電柱修理費等を支払えというのです。検察にも多くの鑑定証拠等を隠され、真実が捻じ曲げられたまま平然と進行する日本の裁判。なぜ真実を追求するべく捜査、裁判で『被害者に有利になる証拠』を被害者の味方であるべき検察が隠すのか。杜撰な交通事件の初動捜査を否定すれば裁判に勝てないと警察捜査の追随を行う事が検察庁の仕事であるなら、捜査権限を持たず裁判で警察捜査資料を基に闘うことを仕事とすればいい。被害者が何よりも望む「真実」よりも「勝ち負け」にこだわるが故にたくさんの捜査資料を「不提出」とし闇に葬り、犯罪者を野放しにしている司法をこのままにはしておけません。

私たちは現在「裁判不提出記録」の全面開示の請求を行い、2つの鑑定書を入手しました。1つは「横断中に右からはねられた」との警察見解と矛盾する『自転車の左側に付着したトラック塗料の鑑定書』。もう一つは私共の「トラックが操作不能に陥り反対車線に侵入したのではないか」との疑問に対し、検察が空港滑走路において行った『トラックの走行実験鑑定書』です。鑑定書には『トラックが急制動を掛けタイヤロックした状態でブレーキを踏み続けた場合、トラックは右に曲がって行く』と実験結果で明らかとなっていたのです。この鑑定書は「被告が自らハンドル操作をして右に行った」という供述と反するので隠したのでしょう。このように捜査機関の面子を保つため、杜撰な捜査を取り繕うための結論ありき捜査の実態、捜査機関による証拠隠滅の現実が明らかになりました。被害者の知る権利の保障なくして、被害者救済など有り得えません。

今後、犯罪被害者等基本法18条にある被害者の刑事裁判参加が認められても、いつ、どのような形で被害者等に調書開示が行われるのかも決まっていません。早期の調書開示は捜査機関に対する監視にもなりますし、捜査機関による証拠隠しの根絶にも繋がっていく重要な事です。辛くても被害者が声を張り上げ、被害者が望む「被害者支援」とは何なのか国に対し伝えていかなければいけないと思っています。私たちのような被害を受ける方が今後出ないためにも訴え続けなければ二次被害は繰り返されます。裁判員制度成功を目的とした現法律も変えなければ密室裁判が横行し、被害者は置き去りのままです。刑事裁判は終わりましたが、私共のやるべき事はまだまだあると思っています。進行中の民事裁判での真実解明、犯罪被害者の知る権利の確立、早期の調書開示の実現などです。美紗と一緒に生きていく為に頑張っていこうと思っています。最後に「美紗は悪くなかった」この事だけは覚えていてください。今まで沢山の温かい御支援をいただき心より感謝申し上げます。
(「北海道交通事故被害者の会」会報25号(2008年1月10日発行)p10より)

「サンデー毎日」(2008年7月20日号)が白倉事件をルポしました。
「裁判員制度」の重圧、第5弾「3日で終わる裁判」の罪深い落とし穴 
告発「娘はこの制度の犠牲にされた」

という見出しで、白倉事件の検証を行いながら、公判前整理手続きの問題点などを鋭く突いています。
「サンデー毎日」記事の【PDF】

続いて・・・「週間現代」(2008年7月26日号)で、柳原三佳さんが白倉事件をルポしました。
短期集中連載「葬られた”変死体”事件簿」最終回
交通死亡事故でも杜撰な捜査が。遺族による執念の調査の末・・・
「頭部骨折」「抜け落ちた歯」遺体が証明した「死の真相」

「週刊現代」記事の【PDF】

2009年3月6日「北海道新聞」
南幌中3死亡事故 運転手ら5800万円賠償 札幌地裁判決「重大な速度違反」

空知管内南幌町で二〇〇三年九月、同町の中学三年生白倉美紗さん=当時(14)=がトラックにはねられ死亡した事故で、業務上過失致死罪で禁固三年執行猶予五年の判決が確定した北広島市の運転手(48)と運転手が勤めていた運輸会社に対し、遺族が約七千五百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が五日、札幌地裁であった。橋本修裁判官は「重大な運転操作の誤りがあった」として、約五千八百万円の支払いを命じた。
この事故は当初、美紗さんの飛び出しが疑われたが、両親が独自に調査して検察に働きかけ、札幌地検岩見沢支部は〇五年十二月、運転手を起訴した。検察は時速九十五キロ以上の速度と主張したが、一、二審判決は、時速約八十キロ前後で「暴走とまではいえない」として猶予判決を言い渡した。
橋本裁判官は判決で、加害車のブレーキ痕などから車両速度を時速約九十キロと認定。運転手側が主張した約八十三キロを上回る「重大な速度違反」と判断した。一方で、判決は「加害車両の動静に十分注意すべきだった」として美紗さんの過失も認め、過失割合を5%と認定した。
五日記者会見した母親の裕美子さん(39)は、この日の判決の速度認定を評価しながらも、「美紗にも一部過失があるとされるなど、納得できない面もある。初動捜査の不備が今も影響している」と話した。

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