放射性鉱物の取扱と保管
敵は何か・・・放出されている放射線を知る
「放射性鉱物」とはいうものの、ではなにが放射線を出しているのか?また、どのような放射線なのかを紹介します。
◎◎放射性鉱物の放射線の素◎◎
- 鉱物の中に含有する自然放射性物質は「ウラン」「トリウム」「カリウム」などがあります。大気中や海洋などにはこれ以外にも放射性物質はありますが、今は前記の3つについて紹介します。
(1)ウラン uranium
- ウランは自然界に3つの同位体を持ちます。「238U:99.275%」「235U:0.720%」「233U:0.0055%」
- 238Uが最も多く235U、233Uは極わずかしかありません。なので、238Uを中心にウランの話しをします。
- 238Uは壊変し234Thへとなり、またこれも壊変し・・・という具合にどんどん壊変を繰り返していきます。この壊変の系列を「ウラン系列」と呼びます(図)。α壊変を8回、β壊変を6回して放射線を出さない安定な物質206Pb(鉛)になります。
- 壊変のたびに放射線を出すので、ウランという物質を考えるときは「238U」だけを見るのではなく「ウラン系列」として見なくてはならないのです。
- では、ウラン系列の放射線とその主なエネルギーを列挙します。(エネルギーの単位はMeV)
α線: | 7.687、6.694、6.003、5.490、5.450、5.304、4.784、4.775、4.688、4.198 |
β線: | 3.27、2.27、1.53、1.51、1.16、1.07、0.73、0.67、0.474、0.199、0.017 |
γ線: | 2.204、1.764、1.238、1.12、0.768、0.609、0.352、0.295、0.242、0.186、0.0532、0.0465 |
(2)トリウム thorium
- 普通トリウムというと「232Th」のことをいいます。これ以外にも天然にトリウムは存在しますが、それは壊変の結果の娘核種としての存在となります。
- 232Thは238Uと同様に次々と壊変をくり回していきます。これを「トリウム系列」と呼びます(図)。α壊変を6回、β壊変を4回して放射線を出さない安定な物質208Pb(鉛)になります。
- 壊変のたびに放射線を出すので、トリウムという物質を考えるときは「232Th」だけを見るのではなく「トリウム系列」として見なくてはならないのです。
- では、トリウム系列の放射線とその主なエネルギーを列挙します。(エネルギーの単位はMeV)
α線: | 8.785、6.779、6.288、6.051、5.685、5.423、4.013 |
β線: | 2.25、2.07、1.80、1.73、1.53、1.29、1.16、0.574、0.0392、0.335 |
γ線: | 2.614、0.860、0.727、0.511、0.300、0.277、0.239 |
(3)カリウム potassium
- カリウムは自然界に2つの同位体を持ちます「39K」、「40K」。しかし、39Kは安定同位体であるので放射線を出しません。
- 40Kは放射性でカリウム中に0.0117%存在します。40Kは2通りの壊変をします。
- 89.3%の確率でβ壊変をし、1.312MeVのβ線を出し安定な物質40Ca(カルシウム)になります。そして、
- 10.7%の確率で軌道電子捕獲(EC)をし、1.461MeVのγ線を出し安定な物質40Ar(アルゴン(気体))になります。
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