出典: 外務省編『日本外交年表並主要文書』下巻 1966年刊
(国立国会図書館 https://www.ndl.go.jp/constitution/etc/j06.html)
1945年7月26日
米・英・支三国宣言
(1945年7月26日 「ポツダム」に於て)
(1) われら合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート・ブリテン」国総理大臣は、われらの数億の国民を代表し協議の上日本国に対し今次の戦争を終結するの機会を与ふることに意見一致せり
(中略)
(10) われらは日本人を民族として奴隷化せんとせし又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに非さるも、われらの俘虜を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰加へらるへし。日本国政府は日本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障害を除去すへし。言論、宗教及思想の自由並に基本的人権の尊重は確立せらるへし。
(11) 日本国は其の経済を支持し且公正なる実物賠償の取立を可能ならしむるか如き産業を維持することを許さるへし。但し日本国をして戦争の為再軍備を為すことを得しむるか如き産業は此の限に在らす。右目的の為原料の入手(其の支配とは之を区別す)を許可さるへし。日本国は将来世界貿易関係への参加を許さるへし。
(12) 前記諸目的か達成せられ、且日本国国民の自由に表明せる意思に従ひ平和的傾向を有し且責任ある政府カ樹立せらるるに於ては、聯合国の占領軍は直に日本国より撤収せらるへし。
(13) われらは、日本国政府か直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、且右行動に於ける同政府の誠意に付、適当且充分なる保障を提供せんことを同政府に対し要求す。右以外の日本国の選択は迅速且完全なる壊滅あるのみとす。
※1 カタカナはひらがなに置き換え、適宜句読点等を補った。
※2 青字部分が、憲法に関連すると思われる部分
出典: 国立国会図書館
(注)読みやすくするために、カタカナをひらがなに置き換えている。(下線は筆者)
官報 号外 昭和二十一年一月一日
茲に新年を迎ふ。顧みれば明治天皇明治の初国是として五箇条の御誓文を下し給へり。曰く、
(中略)
叡旨公明正大、又何をか加へん。朕は茲に誓を新にして国運を開かんと欲す。須らく此の御趣旨に則り、旧来の陋習を去り、民意を暢達し、官民拳げて平和主義に徹し、教養豊かに文化を築き、以て民生の向上を図り、新日本を建設すべし。
大小都市の蒙りたる戦禍、罹災者の艱苦、産業の停頓、食糧の不足、失業者増加の趨勢等は真に心を痛ましむるものあり。然り雖も、我国民が現在の試煉に直面し、且徹頭徹尾文明を平和に求むるの決意固く、克く其の結束を全うせば、独り我国のみならず全人類の為に、輝かしき前途の展開せらるることを疑はず。
夫れ家を愛する心と国を愛する心とは我国に於て特に熱烈なるを見る。今や実に此の心を拡充し、人類愛の完成に向ひ、献身的努カを効すべきの秋なり。
惟ふに長きに亘れる戦争の敗北に終りたる結果、我国民は動もすれば焦躁に流れ、失意の淵に沈淪せんとするの傾きあり。詭激の風漸く長じて道義の念頗る衰へ、為に思想混乱の兆あるは洵に深憂に堪へず。
然れども朕は爾等国民と共に在り、常に利害を同じうし休戚を分たんと欲す。朕と爾等国民との間の紐帯は、終始相互の信頼と敬愛とに依りて結ばれ、単なる神話と伝説とに依りて生ぜるものに非ず。天皇を以て現御神(アキツミカミ)とし、且日本国民を以て他の民族に優越せる民族にして、延て世界を支配すべき運命を有すとの架空なる観念に基くものにも非ず。
(中略)
一年の計は年頭に在り、朕は朕の信頼する国民が朕と其の心を一にして、自ら奮ひ自ら励まし、以て此の大業を成就せんことを庶幾ふ。
御名 御璽
昭和二十一年一月一日
(以下略)
出典: 佐藤達夫「日本国憲法誕生記」,P205-P241
GHQ草案と現在の日本国憲法の第1章と第2章及び第3章の一部を以下に引用する。なお、GHQ草案の全文は、こちら にある。
※1 GHQ草案は原文(英語)を外務省で文語体に訳したもの。カタカナはひらがなに置き換えた。
※2 訳語の改訂などは除き、変更された部分は青字、追加された部分は緑字、削除された部分は赤字で表している。
図表2a GHQ草案vs日本国憲法(第1,2章)
略称GHQ草案 | 日本国憲法 |
---|
第一章 皇帝 | 第一章 天皇 |
---|---|
第一条 皇帝は国家の象徴にしてまた人民の統一の象徴たるへし 彼は其の地位を人民の主権医師より承け之を他の如何なる厳選よりも承けす | 第一条 天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は主権の存する日本国民の総意に基く。 |
第二条 皇位の継承は世襲にして国会の制定する皇室典範に依るへし | 第二条 皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。 |
第三条 国事に関する皇帝の一切の行為には内閣の輔弼及び協賛を要す 而して内閣は之が責任を負ふべし | 第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣がその責任を負ふ |
皇帝は此の憲法の規定する国家の機能をのみ行ふへし 彼は政治上の権限を有せす又之を把握し又は賦与せらるること無かるへし 皇帝は其の機能を法律の定むる所に従ひ委任することを得 | 第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。 |
第四条 (摂政に関する規定…省略) | 第五条 (同左…省略) |
第五条 皇帝は国会の指名する者を総理大臣に任命す | 第六条 天皇は国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。 天皇は内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。 |
第六条 皇帝は内閣の輔弼及協賛に拠りてのみ行動し人民に代りて国家の左の機能を行ふへし 即ち国会の制定する一切の法律、一切の内閣命令、此の憲法の一切の改正並びに一切の条約及国際規約に皇璽を欽して之を公布す 国務大臣、大使及其の他の国家の官吏にして法律の規定に依り其の任命又は嘱託及辞職又は免職か此の方法にて公証せらるへきものの任命又は嘱託及辞職又は免職を公証す 大赦、恩赦、減刑、執行猶予及復権を公証す 栄誉を授与す 外国の大使及公使を受く 適当なる式典を執行す |
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。 二 国会を召集すること。 三 衆議院を解散すること 四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。 五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。 六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。 七 栄典を授与すること。 八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。 九 外国の大使及び講師を接受すること。 十 儀式を執り行うこと。 |
第七条 (皇室への財産譲渡など…省略) | 第八条 (同左…省略) |
第二章 戦争の廃棄 | 第二章 戦争の放棄 |
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第八条 国民の一主権としての戦争は之を廃止す 他の国民との紛争解決の手段としての武力の威嚇又は使用は永久に之を廃棄す
陸軍、海軍、空軍又はその他の戦力は決して許諾せらるること無かるへく又交戦状態の権利は決して国家に授与せらるることなかるへし |
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを廃棄する。 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は之を保持しない。国の交戦権はこれを認めない。 |
第三章 人民の権利及び義務 | 第三章 国民の権利及び義務 |
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第九条 日本国の人民は何等の干渉を受くること無くして一切の基本的人権を享有する権利を有す | 第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる |
第十条 此の憲法に依り日本国の人民に保障せらるる基本的人権は人類の自由たらんとする積年の闘争の結果なり 時と経験の坩堝の中に於て永続性に対する厳酷なる試練に克く耐へたるものにして永世不可侵として現在及将来の人民に神聖なる委託を以て賦与せらるるものなり | (左記の一部は第11条、他は第97条に移された) |
第十二条 日本国の封建制度は終止すへし 一切の日本人は其の人類たることに依り個人として尊敬せらるへし 一般の福祉の限度内に於て生命、自由及幸福探求に対する其の権利は一切の法律及び一切の政治的行為の至上考慮たるへし | 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 |
第十六条 外国人は平等に法律の保護を受くる権利を有す | (左記は削除) |
第十八条 思想及良心の自由は不可侵たるへし | 第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない |
第二十条 集会、言論及び定期刊行物並に其の他一切の表現形式の自由を保証す 検閲は之を禁止し通信手段の秘密はこれを侵す可からす | 第二一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障する。検閲はこれをしてはならない。通信の秘密はこれを侵してはならない。 |
第二一条 (結社・住居選定等の自由 … 省略) | 第二二条 (移転・職業選択の自由 … 省略) |
第二二条 (学問、職業選択の自由 … 省略) | 第二三条 (学問の自由 … 省略) |
第二三条 家族は人類社会の基底にして其の伝統は善かれ悪しかれ国民に滲透す 婚姻は男女両性の法律上及社会上の争ふ可からさる平等の上に存し両親の強要の代りに相互同意の上に基礎つけられ且男性支配の代りに協力に依り維持せらるへし … 以下省略 | 第二四条 (家族は…の部分は削除)婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならない。 (以下省略) |
第二四条以降 省略 | 第二五条以降 省略 |
出典: Wikipedia「アメリカ合衆国憲法」
(1) 国立国会図書館「日本国憲法の誕生」
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(2) 佐藤達夫「日本国憲法誕生記」、中公文庫、1999年4月18日 (原本は、「時の法令」第169号から187号(1955年5月~同年11月号)
(3) 古関彰一「平和憲法の深層」、ちくま新書、2015年4月10日
(4) 自民党「4つの変えたいこと 自民党の提案」
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(5) 自民党憲法改正実現本部「憲法改正に関する議論の状況について」
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(6) nippon.com「日本国憲法: その特異な歩みと構造」
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(7) 日本弁護士連合会「自衛隊や自衛の措置を憲法に書き加えても何も変わらないの?」
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(8) 日本弁護士連合会「憲法改正による緊急事態条項の創設及び衆議院議員の任期延長に反対する会長声明」
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(9) 木村草太「緊急事態条項の実態は『内閣独裁権条項』である」
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(10) 憲法ネット103「飯島滋明(名古屋学院大学教授)「特措法の緊急事態宣言と安倍改憲の緊急事態条項」
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(11) Wikipedia「国家緊急権」
(12) 青年法律家協会弁護士学者合同部会「緊急声明 自民党改憲案の問題点と危険性」
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(13) 「(憲法を考える) 参院とは何か、尽きない議論 誕生75年、憲法制定以来の宿題」朝日新聞2022/6/28
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(14) 仙台弁護士会の決議
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(15) 憲法ネット103「教育の無償化と憲法改正」
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(16) 自民党憲法改正草案(2012年)
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(17) (出所不明)「自民党の改憲草案で憲法はどう変わる?
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