ホスホジエステラーゼ5阻害剤と前立腺肥大症
今日はバイアグラが前立腺肥大症に効くかもと言うお話です。
でも登場人物を減らすことができなくて、トルストイの小説のような難解な内容になってしまいました。
なので、医学・薬学の勉強をしたことがない人は、
バイアグラとハルナールはともに高血圧治療薬として開発され始めた薬だった、
ハルナールが前立腺肥大症に効くのだから、バイアグラも前立腺肥大症に効くかも、という内容のブログだった、
ということで、後はスルーして下さい。
バイアグラ・レビトラ・
シアリスは、ホスホジエステラーゼ5阻害剤と呼ばれます。
ホスホジエステラーゼはサイクリックGMPを加水分解する酵素で、
ホスホジエステラーゼ5阻害剤は、ホスホジエステラーゼ5を阻害してサイクリックGMPを蓄積することで陰茎血管の平滑筋を弛緩させます。
陰茎への血液流入量を増大させ、陰茎の勃起を助ける働きをします。
サイクリックGMPが前立腺の平滑筋を弛緩させるとの実験結果が蓄積されつつあります。
バイアグラ・レビトラ・シアリス、もしくはその類似物質が前立腺肥大症治療薬として認可される日が来るかもしれません。
前立腺肥大症治療薬のハルナールは、降圧剤の開発中に見つかった薬です。
αブロッカーに分類される降圧剤は、アドレナリンの阻害剤で、血管の平滑筋を弛緩させて血圧をさげます。
αブロッカーの1種のハルナールには、前立腺の平滑筋を弛緩させる作用が、血管の平滑筋を弛緩させる作用より数段に強い、という特徴があったのです。
バイアグラも降圧剤として開発されている時、ペニスが勃起してしまう、という副作用が多発した事から、
ED治療薬として開発されることになりました。
降圧剤 = 平滑筋弛緩薬 = 前立腺肥大症治療薬
と考えれば、
バイアグラ・レビトラ・シアリスが前立腺肥大症にも効果があります、
と言われても、納得できます。
αブロッカー(ハルナール)とホスホジエステラーゼ5阻害剤(バイアグラ)の合剤を、
「男性骨盤健康(male pelvic health)」のための薬として、販売しようとしているアメリカの研究グループにはまだ違和感を感じますが。
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