泌尿器科医・木村明の日記


I先生退職祝い@椿山荘


昨日は3つの会がかち合いました。

横浜市都筑区青葉区港北区の大病院の先生達が世話人を勤めるアトピー蕁麻疹勉強会が新横浜プリンスで。

ホテルニューオータニでは全国から泌尿器科医を集めて行う一大イベントも。

でも最初に案内をもらったI先生退職祝いに参加です。

私が昭和53年に入局した当時の医局長の先生がこの3月定年を迎えられました。

その退官記念パーティーが椿山荘で6時から。

昨日は(も)暇で、2時半には診療終了。カルテの復習の必要もなし。

4時まで、クリニックでパソコンの前で時間をつぶして、センター南駅へ。

日吉駅~渋谷駅~永田町駅~江戸川橋駅。

椿山荘に着いたのが5時40分。

100分かかりました。

時々東大医局の勉強会の案内が届きますが、平日の参加は不可能な事を改めて認識しました。

I先生の研究分野は性腺機能。不妊症や男性ホルモンです。

私が入局した頃のホルモングループの中心にいた先生です。

私が入局した頃は、皆、博士号を取る事を目標にしていました。

専門医制度がまだなかったので、博士様になるのが一人前、という風潮でした。

いろんな研究グループがありました。

ホルモングループは水曜日(?)の午後、ホルモン外来というのをやっていて、男子不妊症の患者さんが多く通っていました。

ホルモングループに属している先生達は、関連病院に勤めている人も、水曜の午後は本郷で診療をしていました。

水曜の午後に暇だと精液検査や精巣生検など見学させてもらいました。

私が属したのはエコーグループ。4人がエコーの研究で博士様になりました。

価値ある研究も、業者が力を入れて一般検査として普及させてくれると、それはもうルーチン検査であって、研究の種にはなりません。

研究グループの消滅の仕方には、

その方法が普及して、研究者の独壇場ではなくなる場合(エコーグループ)、

他の方法で問題が解決された場合(ホルモングループ)、

があります。

男子不妊症は、精子を増やす、という泌尿器科医の努力より先に、産婦人科医による顕微受精が普及してしまいました。

一匹の精子でも妊娠可能となり、ホルモンで性腺を刺激する研究の意義は失われました。

他の方法で問題が解決された場合、のもう一つの典型が結石予防の研究。

尿路結石はシュウ酸カルシウム結石がほとんど。

尿の中でシュウ酸とカルシウムが結合しないために、クエン酸が何をしているか、など熱く議論された時期もあったのです。

開腹手術しかなかった時代、結石が再発するたびに手術していると手術はどんどん難しくなりました

透析になってしまう人もいたのです。結石を再発させないための、食事・薬の研究は大事な研究テーマでした。

ESWLが開発されるまでは。

ESWLは何度でも治療を受けることができます。

効果が不確定な、結石再発予防の食事療法・薬物療法は下火になりました。

今は、癌の早期発見・早期治療の研究が花形です。

でも、進行がんを治せる薬が見つかれば、早期がん診断のプロもゴッドハンドも失業するわけです。
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