慢性痛と治験審査委員会
前立腺が痛いから前立腺を取ってくれと言われても、癌などの病変がなければ医者は普通手術しません。
ところが最近、 米国の泌尿器科医が、慢性前立腺炎に腹腔鏡下前立腺全摘を行う、という治験を開始しました。
この治験が治験審査委員会の承認が得られたのは、
患者さん個人のQOLが著しく損なわれる病気であること以外に、
アメリカ国内だけでも、前立腺炎の患者が年に延べ200万回医者を訪れ、医療経済上も大変な問題である事、
が関係しているようです。
根治させる治療法がない現状では、慢性痛の患者さんは雪だるま式に増えていきます。
「痛いから取ってくれ」という同意書を書きさえすれば前立腺を取ってしまう、
もう何でもありの状況になってしまいました。
私のクリニックでもレセコンで集計してみると、
3年間の新患(初診料を算定した人、同一人で複数カウントあり、私費診療は含まず)8091人のうち732人(9%)が前立腺炎の患者さんで、
再診患者(再診料を算定した人)を含めた延べ受診患者数19515人のうち2430人(12%)が前立腺炎の患者さんでした。
当院の場合、皮膚科患者さんの方が若干多いでしょうから、泌尿器科患者さんに占める前立腺炎患者さんの割合はそれぞれ20%、25%になるかもしれません。
初診患者さんの数はこのままで推移すると仮定しても、再診患者さんはだんだん増えていきそうです。
慢性痛の患者さんが外来患者さんに占める割合は、婦人科や整形外科や脳外科ではどの程度なのでしょう。
病状を評価するための客観的指標がなく、患者さんの訴えを数値化した症状スコアでしか治療法の優劣を比較できない病気にドクター達はどう向き合っているのでしょうか。
「慢性骨盤痛 婦人科」で検索したら、たまプラーザの産婦人科がヒットしたので、この先生は遠方から来られた慢性痛の患者さんにどう向き合っておられるのか、興味を持ちました。
そんなに先ではなく、お会いしてお話したいです。
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