NHK交響楽団のトロンボーン奏者として33年間という長い期間活躍され、たくさんの優秀な音楽家を育ててこられた三輪純生先生は、この9月10日、めでたく還暦をお迎えになられることとなりました。これを機に先生のご家族やお弟子さんたちが、お祝いとして企画されたのが「三輪 純生 ヒストリーコンサート」です。当日ステージに載ったメンバーは先生御自身はもちろんのこと、ご家族をはじめ直接トロンボーンの師事を仰いだお弟子さん達、それからアマチュア楽団のトレーナーとして先生の指導を受けた管楽器奏者の面々(筆者もその一人)です。コンサートは前半と後半の2部で構成(プログラム参照)され、第1部はアマチュア楽団の演奏でした。港北区民交響楽団管楽器セクションのファンファーレで開幕し、東京都立大学管弦楽団ブラスアンサンブル、青山シンフォニーオーケストラ・トロンボーンアンサンブル、青山学院大学管弦楽団トロンボーンアンサンブル、ブラスアンサンブル・チャットが日頃の練習成果を披露しました。各団体の入れ替え時は、司会進行役の村田厚生氏による軽妙なおしゃべりと出演者へのインタビューで、会場がなごみました。
第2部は三輪純生先生と音楽との関わりをお話と演奏で紹介するコーナーでした(三輪先生略歴参照)。演奏は先生のご家族、お弟子さん達です。なお、第2部の内容は先生には全く明かされておらず、主賓である先生はかなりいらいらされていたようです。
先ず先生の長女であるピアニスト、三輪 郁さん(写真1)が先生の大好きなキラキラ星のテーマ(モーツァルト/「お母さんきいてちょうだい」の主題による変奏曲)を演奏し、そのまま第2部の進行役に加わりました。
次は次女のバイオリニスト、三輪 愛さん(写真2)によるバッハのシャコンヌです。先生は桐朋学園時代、この曲を教材として一所懸命練習されたそうです。そして奥様との馴れ初めが紹介された後、いよいよご本人の登場。奥様の久恵さんのピアノ伴奏でリムスキー・コルサコフの「トロンボーン協奏曲」より第2楽章をご披露されました(写真3、4)。かなり緊張されていたようで、演奏後のインタビューでもそれがうかがえました。![]()
また、先生の東フィル在籍時代にたくさん演奏したオペラを再現するコーナーでは、こんなシーンも(写真5)。先生は直接指導した優秀なお弟子さん達とトロンボーンアンサンブル「アート・デミーノ」を結成し活動していますが、その演奏も披露されました(写真6)。
フィナーレは会場に集まった先生の門下生18名によるトロンボーンアンサンブル。先生が大好きなワグナーの作品を、先生ご自身の指揮で演奏されました(写真7)。 これで終わりかと思いきや、娘さんから先生に思わぬプレゼントが。先生はN響に入団して間もない頃、画家の菊地精二氏の依頼で絵のモデルをした事があったそうですが、そのとき描いてもらった絵に再び会いたいと、常日頃からご家族に話されていたようです。この度、娘さんがその絵を探し出し購入、この日この会場で先生にプレゼントされ、実に30年ぶりに再会を果たしたのです(写真8)。ご家族みんなに愛され、本当に幸せな先生であります(写真9)。
当日会場に集まった方々は、学生時代の同級生などいずれも先生と縁の深い人達ばかり。ホール近くの中華料理屋で行われた二次会にも多数参加され、先生の還暦をお祝いしました(写真10)。 一人の演奏家がその還暦のお祝いとして、このような大掛かりなコンサートが企画され、家族や門下生達の祝福を受けるという例は、あまり見られないのではないでしょうか。先生のお人柄が偲ばれる有意義でアットホームな夕べでした。三輪先生には、今後も引き続き演奏活動や後進の指導にご活躍されることをお祈り申し上げます。
●リポート 川合岳児(港北区民交響楽団)
本記事は雑誌「パイパーズ」(October 1999 No.218)に掲載されました。