徳島県の黒沢湿原を代表する花、サギソウです。花の名前とその姿が見事に一致した花で、まるで白鷺が飛んでいるように見えます。一般の人でもこの花の名前は何度か聞いたことがあるでしょう。
白い花びらに目を奪われますが、花の後ろに細い管のようなものが伸びている点にも注目してください。ここを距(きょ)といい蜜を蓄える部分となっています。虫たちは蜜を吸うために花にとまって長い口を伸ばさなければならないのですが、その際にしっかり虫に花粉を付けるような構造になっているのですね。
花の中心部は複雑な形をしています。雄しべと雌しべが合体して「ずい柱」を形作っています。下の写真を見ると、まるで肘掛け椅子のような姿をしていますね。肘掛け部分の飛び出た先が白くなっていますが、これは粘着体と呼ばれる部分です。肘掛けの上側、黄色くなっているのは葯室で中に花粉が入っています。また背もたれクッション部分は嘴体、下の緑色のマフラーのような部分が柱頭です。嘴体は柱頭の1つが変化したものです。
サギソウは今では黒沢湿原の夏の風物詩ですが、もともと自生していたサギソウは絶滅したと考えられています。現在黒沢湿原に咲いているものは人工的に増殖したものを移植したものです。
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