荒野の声 007  2004・1・4

北朝鮮一見

 私は昨年暮、中朝国境地帯を旅し、北朝鮮の実情を垣間見てきた。これは私が北朝鮮と関わる3回目の旅であった。今回も幾人かの脱北者と会い、生々しい実情を聞くことが出来た。

 

なんと言う馬鹿馬鹿しい国家であろうか。なんと言う愚かな指導者であろうか。国民の大多数が飢餓線上にあると言うのに自分は贅沢の限りを尽くし、国民に自分を賛美させることに汲々としている。

ある夫婦は北から逃れてきて、国境地帯の山中に3年間隠れ住んだという。彼らを助けたのは国境地帯にある教会の人々であった。

ある夫婦は、夫は中国人だが妻は北朝鮮人である。詳しく書けないのが残念だが彼らも毎日、身分のばれるのを恐れながら暮らしている。夫が中国人でも妻のことがばれると送還される。その妻の両親は北朝鮮で今にも飢えて死ぬかもしれないと語っていた。気が気ではなく夫が脱出の手段を尽くしているのだがあまりにも危険なのだという。

我々の仲間があるとき車で道を走っていると少年二人と老人が歩いていた。彼らが脱北者であることはすぐに分かった。足には靴とはいえない手作りの足袋のようなものを履き、それも破れて足が凍土に直接触れていた。彼らを車に乗せ食物を与えても安心とうれしさで泣くばかりで食べられなかったという。金を与え、知り合いのところに送り届けた。この少年たちは老人とは何の関係も無いのだが見るに見かねて中国に連れてきたのである。

中朝国境は豆満江と鴨緑江という二つの川によって設定されている。それらの川は所によってはほんの数メートルしかない。ある場所で向こう岸を見ていると、突然茂みの中から北の兵士が現れた。一瞬緊張したが、彼は中国語で「タバコをくれ」と言った。そこは観光地のようなところで、おばさんがリヤカーでタバコやビスケットを売っている。我々の仲間の中国語に堪能な者がタバコを買い(1カートン30元約390円)そっちに行ってもいいかと聞くと良いという。川の中ほどの氷の上でタバコを渡すと、ビスケットも欲しいと言う、別のものがビスケットをもって行くとうれしそうに抱えて向こうの詰め所に持っていった。まだ童顔の若い兵士だった。それは彼らにとって良い収入になるのだろう。日本とは比較にならないビスケットも彼らには御馳走なのだと近くの人が教えてくれた。

この写真は早朝のものだが、真ん中のちょっと明るい場所がそれである
 

鴨緑江の河口、丹東と言う町から、夜、北朝鮮を見ると、ほとんど電気のつかない真っ暗な対岸に、一箇所だけ煌々と灯りのついた場所がある。それは金日成の銅像がある場所だと言う。実に象徴的な風景であった。

こちら側はネオンがまぶしい観光地だから向こう側から見るとさぞかし明るいだろうと思った。

この旅の間中、北朝鮮の金体制に激しい憤りを禁じえなかった。何とかならないのか。何で世界は北朝鮮の人民を見捨てているのか。なお、私は北朝鮮難民への援助団体に協力しているので、もし救援金を送りたい場合は以下にお送り戴きたい。


「新川宣教師を支える会」
 郵便振替口座 00160−2−658852
 郵便貯金口座 10550−49052011