荒野の声 006

 

フセインと麻原

 フセインが発見された状況が、オウムの麻原とあまりにも似ているので驚いたのは私だけではないでしょう。麻原は天井のねずみ、フセインはモグラの違いだけです。両方とも狭い場所、そして金を持っていたのはおかしかった。両方とも使い捨てられたのだと私は思います。誰かに。

 オウムの村井が殺されたとき、ユダにやられたと言ったと伝えられています。それを上裕は三文字だと訂正しました。これはどういうことでしょうか。オウムはどこかから莫大な資金を手に入れたと伝えられています。それはロシアを経由していたようです。しかし、ロシアの大学の火災によって証拠は消されました。オウムは誰かに支援され、育てられたのです。あの上九一色村のサティアンから運び出される膨大な薬品の入ったドラム缶を見たとき、私はぞっとしました。もしあれが全てサリンになっていたらどうなっていたのか。ではなぜ麻原はその時まで待たないで、少ししか出来ていない状況で地下鉄事件を起こしたのか。もしかしたら麻原の功をあせる気持ちがそうさせたのではないのか。それはもっと巨大な結果を期待していた、誰かの意に反していたのではなかったのか。もし成功していたら、逃亡用に与えられていたロシアのヘリコプターが無駄になることも無かったのではないか。私にはそう思えてなりません。ただし村井の三文字が一つの民族を表していたというのは村井たちの思い違いです。これはすでに民族の域を越えています。もっと巨大な組織です。

 一方、フセインもアメリカに育てられたことは周知の事実です。イラン・イラク戦争のときもアメリカは資金と兵器を供給しました。そして都合のよいときに引っ張り出しては悪役を演じさせていました。しかし、とうとう使い捨てられた。クウエートへの侵攻も、当時のアメリカ大使グラスピーが何度も「イラクがクウエートを叩いてもアメリカは関知しない」と約束し、まるでけしかけるような態度をとったことはイラク側のビデオで世界に知らされました。フセインはまんまと乗せられ、裏切られたのです。

 パナマのノリエガ将軍も同じように利用され捨てられました。私はフセインが善人だとは思いませんが、ブッシュ大統領が言うような単純な話ではないと確信しています。本当に悪いやつは決して表舞台には出て来ないものです。