第48話 小さな希望
脚本・佐々木守
絵コンテ・奥田誠治
その日は朝から、子供達の頭は「プレゼント」で一杯。
昨日おばあさまがくれるといった「素敵なプレゼント」。あのおばあさまのプレゼントですから、普通のものであるはずがありません。山へやってくるプレゼント・・・いや、おばあさまをワクワクしながら待つハイジとクララ。
しかし、やってきたおばあさまは何も持っていませんでした。おばあさまは昨日は山に来たばっかりで疲れていた上に、今日もロッテンマイヤーさんの見送りで、プレゼントを用意する時間がなかったというのです。がっかりする2人。しかし、明日は必ずそのプレゼントはもらえそうです。しかも、おばあさんの口振りではそのプレゼントはモノではないようです。
プレゼントへの期待は明日への持ち越し。ハイジはペーターのいる山の上へ、そしてクララはおばあさまと、おのおの過ごすことになりました。クララはおばあさまに「たまには本を読まないといけない」と言われ、おばあさまに本を読んで聞かせます。しかし、おばあさまはクララの話を聞きながら船をこぎこぎ。お疲れの様子のおばあさまに、思わず微笑むクララ。クララは一人で本を読むことに・・・。
その時、事件が起こりました。
群れからはぐれた牛が、クララの目の前に現れたのです。クララは気にせず本を読もうとしましたが・・・はたと目があう牛とクララ。すると、その牛は一声いななくとクララの方に足を向け、ズンズンと向かってくるではありませんか!しかし、クララは動けません!
「きゃああああああ!」
クララの悲鳴に、目を覚ますおばあさま。おばあさまが立ち上がるとその牛はあっさりと向きを変えて行ってしまいました。その時、おばあさんは牛よりももっと驚くものを目にしたのです。
クララが立っていたのです。
クララは迫ってくる牛に驚いて、思わず立ってしまったのでした。おんじの言うとおり、クララは立てるのです。おばあさまは涙を流して大喜び。そして、もう一度クララを立たせようとします。しかし、クララは自分がどうやって立てたのかわからないのです。おばあさまに立って立ってと言われても、怖くてできません。パニックになるクララに、おんじはとりあえず今日はゆっくり休むように言うのでした。
クララが立った!
そのニュースは帰ってきたハイジに、そしてペーターにも知らされます。みんなお祝いされて、半信半疑だったクララも徐々に自分が本当に立って歩けたらと期待に胸が膨らんでくるのでした。
そして次の日。子供達におばあさまから素晴らしいプレゼントが贈られました。それは山の上の湖へのピクニックでした。村人達の手助けで、子供達とおばあさまは山の高い高いところへ。そして、ハイジとペーター達がいつか見つけた山の湖へとやってきました。高い山の美しい湖。フランクフルトの家に閉じこもりきりだったクララが、とうとうこんな所まで来られたのです。それを思って、クララの胸はいっぱいになるのでした・・・。
おんじ:「ハイジ、クララ、食事だよ。顔を洗ってきなさい」
ハイジ&クララ:「ハーイ!」
↑何だか笑える会話。おんじも娘が一気に2人もできて、家事にもさぞやる気が出るでしょうねぇ。ロッテンマイヤーさんがいなくなり、「風の音と会話するのが日課」だった男が可愛い女の子2人と同居ですよ!これで意気に感じない訳がない。はっきりいって、終盤に行くに従ってハイジよりおんじの方がどんどこ目立ってきます。
第49話 ひとつの誓い
脚本・佐々木守
絵コンテ・富野喜幸
山の湖でのピクニックが終わり、おばあさまも明日でデルフリ村を離れることに。
クララが立てるとわかったおばあさまは、自分の家には帰らずラガーツの温泉で待機して、クララの吉報を待つことにしました。そして、クララとハイジに毎日手紙に書いてくれと頼むのでした。おばあさまは「クララが立てるようになった」と書いてある手紙を待っていると、嬉々としています。
しかし、おばあさんの期待は、そのままクララにとっての重荷でした。
その夜。クララは不安な気持ちをハイジに告白します。おばあさまはクララが立てると思っているからこそ、ラガーツの温泉で待機するのです。しかし、クララには本当に自分が立てるのかどうかわかりません。もし、おばあさまの期待通りにならなかったら・・・クララにはそれが不安でたまらないのです。しかし、ハイジは「絶対治るに決まってるわ!」と言ってクララを励まします。ポジティブ至極のハイジの言葉に、少し安心するクララでした・・・。
しかし次の日、おんじが「明日からクララの歩く練習を始める」と聞いたクララは、またも不安になってしまいます。練習すれば、本当に歩けるようになるのかしら・・・?一方、ハイジは「赤ちゃんだって練習して歩くようになる!」と事も無げ。その上ハイジは、クララの手を引っ張って車椅子から立たせようとしました。この強引なやり方に、クララは怖くて怖くて少しも動けません。クララにとって立つということは途方もないことのように思えるのでした・・・。すっかり元気がなくなってしまうクララ・・・。
そして、夕方。おばあさまの最後の夜に、おばあさま自らが主催するパーティが始まりました。子供達に内緒で準備されたパーティ、ハイジの冬の家の庭は見違えるようになっていました。リンゴの木に数え切れないほどのランプがかけられ、テーブルには沢山の料理。そして、楽団の演奏。ムードは完璧。
パーティにはデルフリ村の子供達も招待されました。ますます華やかになるパーティ。そして、いつしか鬼ごっこが始まりました。遊び回るハイジと子供達。そして、イスに座ったままのクララ。走り回る自分と同じような年頃の子たちを、クララはじっと眺めていました・・・。おんじはそんなクララを抱き上げ、鬼ごっこの子供達が見渡せる高い場所に連れて行きました。おじいさんはクララの揺れる気持ちを知っていたのです。
「・・・クララもああしてみんなと一緒に走り回りたいかね?」
「ええ・・・でも・・・」
「いや、心配ないよ。お前が心から立ちたい歩きたいと思って一生懸命努力すれば、必ず足は治る」
「ほんとう?」
「本当だとも。もちろん、慣れない事をするのだから思うようにいかないだろう。痛いかもしれない。すぐには立てないかもしれない。だがそれでも挫けちゃいけないよ。今、クララに一番必要なのは頑張りだな。明日から立つ練習を始めてみようじゃないか」
「ええ・・・」
パーティは楽しく幕を閉じ、おばあさまは子供達に別れを告げデルフリ村を後にします。おじいさんの励ましで心を決めたクララは、おばあさまの馬車に手を振って誓うのでした。
「おばあさま!きっと立てるようになるわ!立てるようになったってお手紙書くわー!」
ほら。おんじが早速活躍。
クララの不安や悩みをいち早く感じ、それを受け止めて力になろうとするおんじ。元はひきこもりだけあって、人の弱いところにはセンサーが働くおんじです。こうやってみると、一日中子供と一緒にいられるってのは強い、と思います。仕事で家を空けてばっかりでおみやげと調子のよい言葉だけしか娘に与えられないゼーゼマンさんの3万倍はお父さんらしい感じですよ、おんじは。
第50話 立ってごらん
脚本・佐々木守
絵コンテ・奥田誠治
そして、クララの立つための練習が始まります。
朝からクララは不安げ。一方、ハイジはもうノリノリです。ハイジはもうクララが立てるものだと疑わないのです。気がはやるハイジは朝一、早くもベッドからクララを一人で下ろそうとします。しかし、クララとハイジはまとめて床に転倒。やはり、いきなりうまくはいきません。
おんじはゆっくりやるつもりでした。まず、クララの足の筋肉をつけていくため、クララの足を手で動かす運動を始めます。もちろん、ハイジはその運動も自らかってでます。「1!2!1!2!」 結果を性急に求めるハイジ。しかし、早速その運動の効果が。一日運動をした後、クララが足に一生懸命力を入れると、ほんの少しですが足が動いたのです。一気に明るい気持ちになるクララとハイジ。
クララはそれから毎日毎日、痛みをこらえて一生懸命練習に励みました。足を動かす事、物につかまる事。少しずつクララは練習をしていきます。しかし、なかなか立てるようにはなりませんでした・・・。
そして、今日も仕事帰りのペーターがいつものセリフ、「クララ、立てるようになった?」そして、ハイジもいつものセリフ「まだ」。明らかに残念な様子のペーター。そして、おばあさんからの手紙にも「クララが立った夢を見た」と書いてあります。四方八方からのプレッシャーに、クララはとうとう泣き出してしまいました。
「みんなが立て立てって言って!でも、もし立てなかったらどうするの!」
みんなの期待に応えられないことに、クララ自身苦しいのです。とうとうクララはフランクフルトに帰ると言い出しました。おんじが「みんなはクララのためを思っているのだ」と言っても、クララは聞く耳を持とうとしません。 そこでおんじはクララを草の上に座らせます。
「クララ。練習する前はクララはここへ置かれたら、向きを変える事もできなかったね・・・。しかし、今はできる。それはクララが一生懸命練習したからだよ」
「・・・でも・・・」
「いくらやっても練習し始めの頃のように目に見えて進歩しない、いや、練習すればするほど立てないような気がしてくる。こんな事をしてて、本当に立てるようになるんだろうか?」
「おじいさん・・・どうしてそんな事が?」
「はっはっは。何を習ってもそういう時があるものだよ。・・・クララ。お前は本当にフランクフルトに帰りたいのかね?」
「・・・・・・」
「いやいや、クララはそんなことを考えるはずはない。クララは立ちたいんだ。立ちたいからこそ、なかなか思うようにいかなくて、泣いたり怒ったりするんだ」
「おじいさん・・・・・!」
おんじの膝にすがって泣くクララ。おんじはクララの不安を優しく取り除いてあげます。クララの足は必ず立てると決まっている、それがいつかはどうでもいいのだ、と。その言葉で、クララはもう一度頑張ることにするのでした。おんじはクララのために、村一番バターを調達し、自ら山へ登って良い草を集めます。ハイジもおんじもペーターも、クララの足が治るために一生懸命でした。
アルムの夏も次第に深まり緑の色も一段と濃さを増す頃、クララは何とかつかまり立ちができるようになっていました。しかしそれでも、相変わらずクララは立てませんでした。
そして、今日もクララはつかまり立ちの練習をしています。しかし、手を離すといつものように倒れてしまいます。クララは手を痛めてしまいました。ハイジはまだ練習を続けようとしますが、クララはまたも泣き言を言ってしまいます。
「おじいさんだって、ゆっくりやれって仰ったじゃないの。それにダメなのよ、この足っ。ハイジが言うみたいにすぐには立てないんだわ、きっと・・・」
その言葉にハイジは遂に・・・・。
「クララのバカ!」
「・・・!?」
「何よ、いくじなし!一人で立てないのを足のせいにして!足はちゃんと治っているわ!クララのあまえんぼ!恐がり!いくじなし!どうしてできないよ!そんなことじゃ一生立てないわ!それでもいいの?」
「!」
「クララのいくじなし!私もう知らない!クララなんてもう知らない!」
「ハイジ!ハイジー!ハイジー!」
癇癪を起こしたハイジはクララを置いて、駆けだしました。坂を下りたところでハイジ。そして、ハイジが振り向くと・・・・クララが立っていました・・・
「クララ・・・・」
「私・・・私・・・立ったわ・・・」
「クララが・・・立ってる・・・・うわーん!!」
遂に、遂にクララは自分の力で立ったのです。ハイジは駆け戻ってクララに抱きつきました。そして、2人はいつまでも喜びの涙を流すのでした・・・。
ちょ〜有名な回。前にも言ったように、ここら辺は「ハイジ」全体としては、ある意味エピローグ的な部分なんですけど、ここまで盛り上がるのはスゴイですねぇ。
とにかく展開が多い回です。超高密度。普通だったら、これ2話分のストーリーだと思いますねぇ。でも、バタバタした印象がない。それはやっぱり最後のシーンのインパクトで全て忘れてしまうからなんでしょうねぇ・・・。とにかく、ハイジのクララが立った時の反応が最高ですよ。ただ泣く。ハイジがただ泣いた時ほど、引き込まれることはないですね。この回もおんじが重要な役割をしていましたけど、最後の一押しをハイジがする当たりはやはり主役としては譲れないところ。
ただ、ちょっ〜とだけ、この回作画が悪いような・・・。
第51話 クララが歩いた
脚本・佐々木守
絵コンテ・富野喜幸
「一人で立つってホントに頼りないのね・・・地面がとっても遠いの・・・」
遂にクララは一人で立てるようになったのです。おんじも、そしてペーターもクララが一人で立てたことに驚き、そして大いに喜ぶのでした。
俄然、意気上がるアルム。クララはラガーツの温泉で吉報を待つおばあさまには、自分が立てるようになったことをまだ知らせないで秘密にすることにします。いっそのこと、歩けるようになってからおばあさまに知らせて、もっと驚かせてやろうと思ったのです。立てる喜びに満ちたクララにとって、今や歩くこともすぐ手に届くところにあるように思えたのです。
「私、歩けるようになるわ!きっとよ!」
そして、次の日からはクララの歩く練習が始まりました。ハイジとペーターの肩に捕まって、一歩一歩踏み出す動きを覚える訓練です。勿論、すぐには歩けるようにはなりません。しかしそれでも練習を重ねていくウチに、何とかクララは柵に捕まって歩けるようになってきました。
練習は順調。やる気マンマンのクララは一つの決意をします。もう車椅子を使わないことに決めたのです。車椅子があると、つい乗ってしまいたくなる。そして、その気持ちは練習のさまたげになります。クララはおんじに車椅子を片づけてしまうように頼みました。ハイジは本当に大丈夫かと心配そうですが、おんじはクララの決心を尊重し、車椅子を納屋に片づけることにしたのでした。
「車椅子さん、長い間ご苦労様!」こうして、クララは生まれて初めて身体一つで生活することになりました。早速、クララはハイジの肩を借りて、ヤギの小屋まで歩いていきます。クララが車椅子なしでここまで移動したのは初めてです。車椅子を使わなくなった効果は確かにありました。
疲れた様子のクララに、ハイジがヤギのお乳を取りに小屋へ戻りました。そして、一人になったクララは・・・ふと自分一人でも歩けるのではないかと思いました。クララの気持ちはすっかり大きくなっていました。車椅子がなしでも、ここまで何とか歩いてこられた。一人でもきっと・・・。クララは柵から手を話して、そっと足を踏み出しました。一歩、二歩・・・・クララは進んで行きます。クララは一人で歩けたのです。
「歩けた!歩けたわ、おばあさま!」
しかし、喜びはほんの束の間でした。次の瞬間、クララはバランスを崩してしまいます。地面が、空が、グラグラと揺れ、クララをパニックに陥れます。クララは悲鳴を上げてその場に転倒。戻ってきたハイジはクララが倒れているのを見てビックリ。ハイジはクララが柵から離れているのをみて「クララ、歩いたのね!」と感嘆します。しかし、起きあがったクララの様子が変です・・・。
「・・・怖い・・・」
その日以来、クララはふさぎこんでしまいました。外にも出ず、歩く練習もやめてしまいます。食欲もすっかり無くなってしまいました・・・。転倒の時に味わった恐怖は、クララにとって大変なショックでした。歩くということは、思った以上に恐ろしいことだったのです。心配するハイジに、おんじは今は何も言わずそっとしておいてあげるように言います。「あんなに堅い決心をしたんだ。すぐに立ち直るさ。クララを信頼しなさい」
しかし、おんじがそういっているまさにその時。小屋で一人留守番しているクララはもう一度車椅子に乗りたいと思っていたのでした。車椅子に乗っていた頃の方がずっと自由だった・・・。納屋にある車椅子が恋しい・・・。
クララは立ち上がり、納屋に向かいました。机を離れ、ドアに寄りかかり、そして、外の壁を伝い・・・クララは知らない間に、今まで歩いたことのない距離を歩いていました。そして、ようやく納屋の車椅子のところにたどり着いたクララ。懐かしい車椅子・・・。クララは納屋から出そうと車椅子を押します。しかし、なかなか車椅子は思うように動いてくれません。そして、段差に乗り上げた車椅子はクララの手を放れ、納屋から飛び出してしまいました。その先は坂道です。クララを残して、勢いよく坂道を下りていく車椅子。そして車椅子は岩に当たり、粉々に砕けてしまいました・・・。
その音を聞きつけたハイジとおんじは、何事か起こったのか、と山小屋へ駆け戻ります。すると、そこには納屋の入り口で放心しきったクララが・・・。ハイジはクララが一人で歩いてこんなところまでやってきた、と大喜び。しかし、クララは何も言わず泣いていました・・・・。おんじは坂の下でバラバラになった車椅子を見つけ、クララが何をしようとしたのか知ります。
「おじいさん・・・私・・・恥ずかしい・・・!」
そんなクララに、おんじは優しく声をかけます。
「いやいや、恥ずかしい事なんかちっともないさ。よくわかるよ、クララの気持ちは・・・」
そしておんじは、みんなで山の上の牧場にピクニックに行こうと提案するのでした。久しぶりに山の牧場にあがった子供達。山の空気に触れたクララは再び元気を取り戻し、山の上でもう一度歩く練習を始めるのでした。そして、ハイジとペーターの助けを離れたクララは一人、たどたどしい足取りで岩場に近づき・・・そして、花を摘みました。いつかクララの望んだことが、今実現したのです。
「摘んだわ・・・生まれて初めて、自分の足で歩いてお花を摘んだわ!」
3たび、おんじの独壇場!もう誰が主人公かわかりませんわい!「アルプスの少女 ハイジ」というか、「アルプスのおんじ おんじ」ですよ。 やはり、クララのネガティブな感情の揺れは天真爛漫なハイジでは受け止められないのでしょうか・・・前回と比べると見ている子供的にもちょっと難しいかも知れませんねぇ。個人的にはこの話は非常に好きな話の一つです。
今回は前回よりも更に展開が多いです。あらすじが長くてスイマセン。序盤あれだけまった〜りと進んでいたんだから、もう1話分ぐらいぐらいこっちに回してくれてもよかったとすら思います。しかし、何より驚くのは、それでも30分でちゃんとまとまっていること。ストーリーに必要な情報と不必要な情報の取捨選択のさじ加減が素晴らしいです。ビバ・富野。
第52話 また会う日まで
脚本・佐々木守
絵コンテ・奥田誠治
「でも、あの娘が自分の足で立っている姿を見ることはできないんですねぇ・・・」
「本当に私はこの目でちゃーんと見たんだよ?」
「でもねぇ、クララが健康になっただけでも十分ここによこした甲斐があったというものですよ」
「まぁ・・・そうなんだけどねぇ・・・」
山で過ごすクララに会いに、ゼーゼマンさんとおばあさまがやってきました。
何とクララは、おばあさまに自分が歩けるということをまだ知らせてなかったのです。本当はクララは練習を重ね、どんどんと長い距離を歩けるようになっていました。そして今日は、お父さんとおばあさまを驚かせてやろうと考えていたのでした。子供たちはゼーゼマンさんとおばあさまがやってくることを心待ちにし、そして小さなサプライズイベントに胸を膨らませていたのです。
「クーララー!これがあの弱々しかったクララかね!?まるで信じられないよ!そうだ、お前のお母さんそっくりだよ!」
山小屋に到着したゼーゼマンさんは、イスに座ったままで手を振って迎えるクララにいつものように美辞麗句。元気で過ごしている様子のクララにゼーゼマンさんは感激しました。フランクフルトで暮らしていた頃のクララとはまるで別人のようです。ゼーゼマンさんとおばあさまはおんじのところに駆けつけ、感謝の言葉を投げかけます。
「おじいさん、ほんと何とお礼を申してよいかわかりません・・・クララがあんな明るい元気な子になってるとは・・・おじいさんのおかげです!」
「いや、それをおっしゃるなら、このアルムの山と、ハイジやペーターに言ってやってください。それに、お礼を言われるのはまだ早いですよ・・・子供達を見てやってください」
「おばあさまー!パパー!」その時、子供達の呼ぶ声が聞こえました。振り向いたゼーゼマンさんとおばあさま・・・。そこには信じられない光景が。
イスに座っていたクララが、立ち上がったのです。
「立った・・・クララが立ち上がった・・・」
「クララが、クララが一人で立っている・・・」
余りの出来事に呆然とするゼーゼマンとおばあさん。そんな2人の元に、クララが歩いてこちらへ向かって来るではありませんか。あのクララが、立って、そして歩いているのです。ゼーゼマンさん、おばあさま、クララは抱き合い、涙を流して喜びあいました。
「歩けるのよ・・・・歩けるのよ!パパ!」
もう一度、ゼーゼマンさんとおばあさまは、おんじに、そしてハイジとペーターに更に大きな感謝を捧げました。おばあさまに抱きしめられたハイジも、いつのまにか泣いていました。
「クララ・・・よかったね・・・クララ・・・」
「ええ、ハイジ・・・私・・・幸せよ・・・!」
アルムの短い夏は、ゼーゼマン家に永遠に続く喜びを与えてくれました。
そして、クララは山を下りることになりました。クララの身体では厳しい冬は越せません。そこで冬の間はフランクフルトに帰って、家で歩く練習をすることにしたのです。そして、来年の春には、クララはもっと歩けるようになってアルムの山にまたやってこられるでしょう・・・。
そして、お別れの日。
ヨーゼフに、山小屋に、ヤギに、山に、モミの木に別れを告げたクララはおんじに背負われ、山を下りました。再会を誓ったクララを乗せた馬車が出発します。ハイジとペーターは、クララの馬車が見えなくなるまで、どこまでも追いかけて行くのでした・・・。
「きっと来年の夏、また会おうねー!」
アルムの夏は終わり、子供達は日常に戻っていきました。ハイジとペーターは学校に行き、クララはすっかり優しくなったロッテンマイヤーさんと一緒に歩く練習を重ねる毎日。そうして、子供達は春を待ち望んで過ごすのでした。また会う日を夢見ながら・・・。
まさに大団円ですなぁ。
最終回に来てアルムでの新メニュー、バーベキューが加わりました。
前半のクララが立つくだりはもうほとんど演劇のよう。ハイジやペーターの動きに、もともとオーバーアクションのゼーゼマンさんも加わって、紋切り表現の嵐って感じですね。安心感が漂ってます。それに対して後半部分は今見るとものすごく変わったムードです。この回の前半は非常にインパクトがあるのでよく覚えていましたが、後半はこんなに静かだったのか、と久しぶりにみて印象を改めました。どことなく寂しげ、と言ってもいいぐらいです・・・。
で・・・変わらないのはペーターのおばあさんのみということに・・・最終回までネガティブすな〜。ロッテンマイヤーさんですら、あんなに優しくなったのに。そんでもってハイジのベッドをもらって、例によって「お前はなんて優しい子なんだろう!」・・・濡れ落ち葉ですね。