第28話 森へ行こう
脚本・佐々木守
絵コンテ・山崎修二

なんたる奇跡!このようなことが現実の出来事として信ずることができるであろうか!」

ある朝、いつものようにやってきた家庭教師の先生は衝撃の光景を目にします。何と、ハイジが本を読んでいるのです。おばあさまが持ってきた絵本のおかげでハイジは文字が読めるようになったのでした。あまりの出来事に前後不覚の先生、そして驚くロッテンマイヤーさん。

してやったりのおばあさまは、更に縦横無尽。クララのお昼寝中は部屋で軟禁状態のハイジを連れ出し、遊び倒します。しかし、ロッテンマイヤーさんに叱られてハイジはしょんぼり。しかし、全然めげないおばあさまは、ハイジを「魔法のお国」へと招待します。

「魔法のお国」というのは、お屋敷の本棚の裏に作られた秘密の隠し部屋でした。珍しい品物が満載のその部屋にハイジは圧倒されてしまいます。なかでもハイジの目を捉えたのは、壁にかけられた一枚の大きな絵。それには白いひげをたくわえたキリストとヤギ飼いが描かれ、その後ろでは高い山々がそびえたっているのでした。それはハイジがいつもそこに帰りたいと思っていた、まさにその光景でした。ハイジは涙が止まらなくなってしまいました。

「山が・・・山が燃えてる・・・!ヤギがないてる!ヨーゼフが・・・ペーターが・・・おじいさん・・・・!」

泣き続けるハイジを見て、おばあさまは都会で苦しみハイジを何とか喜ばせてあげたいと思いました。そして、おばあさまが考え出したアイデアは・・・森へピクニックに行くことでした。ハイジにも、そしてクララにも太陽の下で遊ぶことが何よりの薬になると考えたのです。

おばあさま自画自賛のビッグアイデアに、ロッテンマイヤーさんは当然大反対。

「奥様はせっかく私が今日まで大切にしてきたものをブチ壊そうとなさるんですか!」
「ロッテンマイヤーさん、いつでも自分だけが正しいと思っちゃいけないわ。ま、試しに一度私の自由にさせて下さいな」
「そうですか・・・ようございます。その代わりどんなことになっても奥様が責任をお取り願います!」
「やれやれ・・・可哀想なお人だこと

憎々しい視線を送り続けるロッテンマイヤーさんを後目に、楽しそうに出かけるおばあさまとその一行。久しぶりに自然の中に帰ったハイジ。初めてのクララ。二人の心は空高く舞い上がるヒバリのようにどこまでもどこまでも高く飛んでいくのでした。

おばあさま絶好調。ハイジの心をガッチリですね。ついでにロッテンマイヤーさんも救ってやってくれませんか?ロッテンマイヤーさんには結構冷たいの・・・。こういうところは今見ると2元論的なんですね。

しかし、本棚の裏が秘密の部屋になっているとは、趣味性が高いっ。僕も家を建てるようなことがあったら秘密の部屋とか屋根裏部屋とか、掛け軸の裏から庭の倉に繋がる地下道とか是非作ってみたいですねー。




第29話 ふたつのこころ
脚本・佐々木守
絵コンテ・富野喜幸

天気は上々。
森は花が咲き鳥や蝶々が舞い、ハイジとクララはピクニックを満喫します。

蝶々を捕まえようとしたハイジ。走り回って蝶を追いかけますが、なかなか捕まえられません。そこでハイジはそこで出会った男の子たちに加勢を頼みます。その様子をじっと見つめる動けないクララ。すると、楽しそうなハイジをみてクララの心のなかで沸々とイライラが・・・。ハイジはようやく蝶々を捕まえてクララに見せようと戻ってきました。しかし、クララは・・・・。

「楽しそうねハイジ・・・・」
「あの子たちに手伝ってもらってやっと捕まえたのよっ」
「どうせ、私はお手伝いできないわ、足が悪いんですもの」
「どうしたの・・・クララ?」
「あなたはみんなと一緒に走り回っていた方がいいんでしょ。あたしなんかの相手してるより、ずっとその方がいいんだわ!そうよ、きっとそうだわ!私なんかもうダメなんだわ!ハイジ、嫌だったら山に帰っちゃってもいいのよ」
「クララ・・・ごめん・・・ごめんね、私、そんなつもりじゃなかったのよ」
「ウソ!私のことなんか忘れて、よその子とはしゃぎ回っていたクセに!
「クララ・・・・」
「もういいのよ!どうせ私は死ぬまで一人ぼっちなんだわ!」

突然の癇癪を起こしたクララに、ピクニックムードは台無し。クララはもうお屋敷に帰って、ハイジを山に返すようにおばあさまに頼み始めます。ジェラシーに燃えるクララにハイジはとまどいながらも、帰るために馬車を呼びに行きます。しかし、離れていくハイジを見て途端に不安になったクララは、急にハイジに呼び戻してそばに来るようにいいます。ジェットコースターのようなお嬢様の心です。

夕方。大いに遊んで大満足の一行はお屋敷に帰還。楽しく今日は終わりになるはずでした・・・しかし、そこに異変が。クララが高熱を出してしまったのです。楽しいムードは一変、お医者様が駆けつける事態になってしまいます。

「奥様!こうなったのは誰の責任かよくおわかりですね!奥様がいらしてからなさったことは、あのアーデルハイドのゴキゲン取りのようなことばかり!」

ロッテンマイヤーさんはここぞとばかりに大攻勢。しかも、ロッテンマイヤーさんが全ての元凶としているのはハイジなのです。おばあさまとロッテンマイヤーさんの話を聞いて、ドへこみのハイジ。「クララ・・・・私のせいなの・・・?クララが外で楽しんじゃいけないの・・・?」全ての責任を自分のせいと感じているハイジをお医者さまもおばあさまも慰めてくれます。が、ハイジは不安でなりません。

そこに、 ベッドで寝ているクララがハイジを呼び出します。断固たる態度でロッテンマイヤーさんを追い出したクララは、ハイジの手を握って言いました。

「どこにも行かないで・・・。森であんな事を言ってしまったけど、山には帰らないでね・・・」
「クララ・・・」
私、心細いのよ・・・急にハイジがいなくなったらどうしようかと思って・・・・どこにも行かないでずっと私の側にいて・・・」
「行かない!私ずっとクララのそばにいるわ!」
「ハイジ・・・ありがとう」

ハイジは本当にクララを可哀想だと思いました。そしていつまでもクララの側にいてあげようと思ったのです。その時ハイジは、山の事もおじいさんの事もみんな忘れていました。

僕も、はしゃぎ過ぎてその夜に具合が悪くなるような子供でした・・・。林間学校に行っても1日目の夜に徹夜で遊んで2日目に。みんなが焼板作りをしているなか、先生に看病(しかも男)されながら旅館で寝ていたものです・・・まあ、僕の話はどうでもいいんですが。

この話のキモはハイジとクララの痴話ゲンカ。登場人物が男と女だったら、ラブコメみたいです。いやー、クララは可愛いですねー。態度と裏腹な本音がすぐ見えてしまう娘は良い。クララのかぶっている帽子が演出で巧く使われています。




第30話 お陽さまをつかまえたい
脚本・佐々木守
絵コンテ・斎藤 博

ベッドで安静を余儀なくされたクララ。ハイジはそんなクララのために、ロッテンマイヤーさんの例の「とんでもない!」攻撃にもめげず頑張るのでした。そして、ハイジはクララのお医者様のもとを訪ねましす。クララがどうしたら早く元気になるか知りたかったのです。

お医者様のアドバイス:
「身体を治す本当の力というのはね、その人の身体のなかにあるんだよ。ご飯をお腹一杯食べなくちゃいけない。そのためには身体を動かしたり、お陽さまの光に当たることが大事なんだ。お陽さまはね、生き物の身体のなかに眠っている力を呼び起こす大切な働きがあるんだ」

「そうだわ・・・クララにお陽さまを持っていてあげればいいんだ!」何やらグッドアイデアを考えたハイジ。ヨハンに森へ向かうように指令。叱られると嫌がるヨハンでしたが、そんなことハイジの前では知ったことではありません。馬車は森へと向かいます。森でハイジは花をつみはじめました。いつぞやあった男の子たちも動員して、ハイジはバスケットにせっせと「お陽さま」をつめるのでした。

大きなバスケットを抱えて帰ってきたハイジ。ロッテンマイヤーさんはまた妙な生き物を持ち込んだかと警戒・・・。バスケットをクララの部屋に運び入れたハイジは、上に乗っていた木のフタを取りました。

バスケットの中には、花と蝶々が一杯に入っていました。部屋一杯に舞う蝶。ハイジの贈り物にクララは大喜び。「ステキなおみやげね!ありがとうハイジ!ああ、私また森へ行きたくなっちゃったわ!」

そんなハイジの努力もあって、クララはすっかり元気になりました。その様子をお医者様と一緒に目を細めて眺めるおばあさま・・・。しかし、おばあさまにもそろそろお屋敷を離れなければならない時が近づいていました・・・。

久々ジス・イズ・ハイジって感じの話。

ハイジって、本当に理想の子供。というか、「大人にとって望ましい子供」ですね。無邪気だけど頭が良くて、破天荒だけど憎めなくて、しかも気が回って大人をうやまう。ちょうど、アンもそんな感じ。対照的にクララは見た目はハイジよりもよっぽど大人びてますが、自分勝手で気分屋でわがまま。こっちはマルコと同じで、より現実の子供に近い子供像で描かれていますね。
ロッテンマイヤーさんにとってはどうだかわかりませんけど、年を取れば取るほどハイジはより可愛く見えてきます・・・。



第31話 さようならおばあさま
脚本・佐々木守
絵コンテ・奥田誠治

おばあさまがあと数日で帰ってしまう!?

突然のニュースがハイジとクララを襲います。別荘の仕事があるために、おばあさまは自分の家へと帰らなくてはならないのです。何度も繰り返された別れにあきらめムードのクララに対して、都会生活の唯一の光だったおばあさまを失うことはハイジにはどうしても受け入れられません。ハイジはおばあさんに部屋に飛び込みます。

「行っちゃいや!おばあさま!行っちゃいや〜!」
「・・・そうかい・・・誰かに聞いてしまったのかい・・・」
「いやよ!行かないで、あばあさま!」
「ハイジ・・・私も本当に楽しかった。ありがとう、ハイジ・・・。人間ってね、どんなに楽しい事でも、いつかは別れねばならない時が来るものなんだよ。悲しいけれど仕方がないのよ」
「おばあさま・・・・」

おばあさまの言う通り、ハイジがどれほど抵抗しようとも別れの時は確実にやってきます。食事の時もお通夜のような雰囲気のハイジとクララを見て、おばあさまは2人と公園へ散歩に連れ出します。ひとときの楽しい時間を過ごす3人。教会の前では結婚式が行われていました。夢見るような目で花嫁を見つめるクララを見て、おばあさまは「お嫁さんごっこ」を提案します。

家に帰ったおばあさまは、お屋敷で働く人全員を狩り出してお屋敷で部屋即席の結婚式を開きました。勿論、花嫁はクララです。綺麗なウェディングドレスに身を包んだクララを囲んで、変装をした一同が花がまき、ダンスを踊ります。いつかのオルガン弾きの少年や大道芸人もやってきて、それはそれは華やかなムードがお屋敷を包みました。

ふと回りをみたハイジは、おばあさまがいないことに気づきます。おばあさまは2人に内緒でそっとその場を抜け出していたのでした。ハイジは部屋を飛び出して階段を駆け下り、外へ。おばあさまを乗せた馬車はもう走り出していました。馬車を追いかけるハイジ。

「おばあさまー!おばあさまー!おばあさまー!」
「ごめんね、ハイジ!クララをよろしくねー!」
「おばあさまー!」
「さようなら、ハイジ・・・・」


夕闇に消えていく馬車を見送ったハイジ。トボトボとお屋敷に帰ってみると、もう既にパーティーは終わっていました。さっきまでいた人たちはみんな追い出されてしまい、もう誰もいません。さっきまでセバスチャンと楽しそうに踊っていたチネッテも、ビジネスライクな顔に戻って後かたづけをしていました・・・。

「もうさっきまでのこの家とはまるで違うんですからね。あんまり世話を焼かせないでもらいますわ!」

火が消えたように静かなお屋敷で寂しく食事を取るハイジとクララ。そこには、再びリーダーに返り咲いたロッテンマイヤーさんが仁王立ち。ハイジはロッテンマイヤーさんの小言を聞きながら、ボソボソとスープをすするのでした・・・。

祭りが終わっちゃった・・・。
おばあさまが去った後の屋敷の静まりようったら・・・。何だか次から見るのがヤになりますな。でも、このままおばあさまが居続けてしまったらアルムのことを忘れてしまうかも知れないから、これで良かったのです。

クララの花嫁姿が可愛いですー。ハイジにも何か着せてやってくれればよかったのですが、ハイジはいつも通り・・・。パーティーのシーンでは、珍しくチネッテが笑顔でセバスチャンと踊るところなんかが見られます。しかしチネッテ、おばあさまの元でも楽しくやり、おばあさんが去ればすぐさまロッテンマイヤーさんの手足。すげぇバランス感覚だ。




第32話 あらしの夜
脚本・佐々木守
絵コンテ・山崎修二

全てが、元に戻ってしまった生活。

「帰りたい・・・おじいさん・・・」ハイジは楽しかったおばあさんとの生活のリバウンドで、またもや脳内アルム状態になってしまいます。「赤ずきんごっこやろうよ!」とクララがやってきても、やる気ゼロ。おばあさんがいなくなってもハイジがいるクララと違って、おばあさんがいなくなってしまったハイジには何もないのです。

いつもふさぎ込み、食欲もなくなってしまったハイジ。クララは里心のつきまくったハイジの気を引こうと頑張ります。クララはハイジの気が紛れるかと、森へ行って花を摘んでくるように頼みますが、チネッテに見つかって万事休す。なお悪い、ロッテンマイヤーさんは「お嬢様が外に出られないのに、自分だけは外に行こうとして!」とハイジを叱るのでした。ハイジにプレッシャーをかけまくるロッテンマイヤーに、遂にクララが爆発

「あなたに私の気持ちなんてわからないのよ!!」
「・・・お嬢様?」
「ハイジがいなくなっちゃうわ・・・このままではハイジは山が恋しくていつかきっと逃げ出してしまうわ・・・そうなったら・・・」
「お嬢様・・・お嬢様、そんなにあの子が・・・」
「好きよ!ハイジが大好き!ハイジがいなくなったら・・・私死んじゃうわ!」

クララに思いのたけをぶちまけられたロッテンマイヤーさん。多少心を改めたロッテンマイヤーさんはミラクルな決断をして、ハイジの元に行きました。ハイジは例の秘密の部屋のキリストの絵の前で口笛を吹き、ヤギの物まねをし、自作自演の劇を演じて自分を慰めていました。ブレインフィーバー。もう、行きつくところまで行っています。そんなハイジを見て、何とロッテンマイヤーさんはハイジに山のことを考えることを禁止します。クララをこれ以上心配させないように、もうアルムは忘れて都会の子として割り切ることを求めたのです。

ハイジが山のことを話すと、クララが心配して病気が重くなってしまう!このロッテンマイヤーさんの言葉がハイジの心に重くのしかかります。しかし、アルムのことを考えまいと思うと、余計にアルムのことが恋しくなってしまいます・・・。ダブルバインド状態に苦しむハイジ。

「おじいさん・・・ペーター・・・大きな声で呼んじゃいけないの・・・クララの病気が重くなる・・・」

そんなある夜。
お屋敷に不気味な事件が起こります。幽霊が出たのです。チネッテの悲鳴に飛び起きたセバスチャン達。白い影が徘徊するのを見たという証言のもと、お屋敷中を捜索しますが怪しいものは見つかりません・・・。しかし、閉めたはずの玄関の鍵が開いていました・・・。

日を追うごとに、ハイジの様子はますます酷くなってきました。アルムに帰ることもできず、思い出すことすら禁じられたハイジはすっかり自暴自棄。そして、心配するクララに対しても心を閉ざしてしまうのです・・・。ハイジの顔はロボトミー手術を受けたように無表情になっていきました。

そしてまたもやお屋敷に幽霊が出ました。
見張りについていたセバスチャンとヨハンが例の白い影が動いているのを目撃します。また、扉の鍵が開いていました・・・。震え上がる男2人。一体、お屋敷で何が起こっているのでしょう・・・・。

ハイジのほっぺの丸が消えてしまいました。
フランクフルト編の最後を飾るこの話と次の話は「ハイジ」で一番暗いところ。
普段が明るいだけに、はっきり言って辛くて見てられませんわ・・・。

そんなハイジの元に「赤ずきんごっこやろうよ!」って言ってくるクララの無邪気なこと。ハイジにいてもらおうと綺麗な服をあげようとするクララと、クララに気を遣うあまりに病気になるハイジ。ここでも性格の違いがくっきり。「理想の子供」は大変。ハイジに少しでもわがままなところがあったら、すぐさまアルムに帰れたのでしょうが・・・。