第1話 アルムの山へ
脚本・吉田義昭
絵コンテ・?
スイスのデルフリ村に不機嫌な顔をした女性と、その彼女に手を引かれた、モコモコに服を着込んだ女の子がやってきました。女性の名前はデーテ、女の子の名前はハイジと言いました。
みなし子のハイジは5才。生まれてすぐに両親をなくし、色々なところをたらい回しにされてきたハイジ。育ての親の叔母のデーテは、フランクフルトの街で働きに出るために、ハイジをまたもや他所へ預けようとしていたのでした。
デーテが向かう先は、デルフリ村から更に山の上の山小屋に住むおじいさんのところです。アルムおんじと呼ばれるそのおじいさんは、気むずかし屋で街中に住まず、山に小屋を建てて一人で住んでます。要するに「ヌシ」的な存在。ハイジをアルムおんじに連れていくという話を聞いて村の人々は驚きます。
「若い頃、人殺しをしたって言うじゃないか」「もし一本道でおんじと会おうもんなら、女子供は薄気味悪くて逃げ出しちまう」村人達が止めるのも聞かずどんどん山を登ったデーテは、おじいさんに会ってハイジを世話するように頼みます。
「今度はおじさんの番だわ、この子の一番の身内と言えば、おじさんでしょう?もし、引き受けるのが嫌ならどうとでもしたらいいわ。どうなったっておじさんのせいなんだし、だからってそれを気に病むようなおじさんじゃないでしょうからね!」
すっかり所帯やつれのデーテのハイプレッシャーな依頼におじいさんは激高。
「帰れ!よーくわかった!お前はさっさと山に降りろ!もう二度とここへは姿を見せるな!」
デーテがベソをかかされて帰った後に一人残ったハイジ。さてさて、これからどうなるのでしょうか?
おなじみの第一回ですが。ホント、何遍見てもまっこと素晴らしい出来でございますな。ファーストシーンでデーテに手を引かれたモコモコ厚着姿のハイジは窮屈そうに歩いていて、いささか不機嫌そう。ナレーションによると「色々なところに預けられていた」ようで、今回の移動も気が進まないことがよくわかります。それがアルムの山に近づくにつれ、その顔が徐々に明るくなり、つまづいてこけたのをきっかけにその厚着を全部脱ぎ捨ててシャツとパンツだけになって一気に駆け出す、その爽快感、そのカタルシス。
セリフは少なく、表情と仕草を中心にした作り方はまさにアニマを感じます。こんな地味な話でもこれだけ楽しく見せられるのだという見本。さすがに高畑&宮崎。
第2話 おじいさんの山小屋
脚本・吉田義昭
絵コンテ・?
一緒に住むことになってしまったハイジとおんじ。超コワモテのおんじですが、ハイジは子供らしさ全開でマイペース。おんじがどれほど無愛想にしようがお構いなし。早速屋根裏で干し草を見つけて大喜びです。
「わたし、ここに決めたわ!」
「・・・・」
「このフカフカした干し草の上に寝るわ、さ、寝床を作らなくっちゃ!」
「・・・・」
「おじさんシーツを持ってきて!ベッドはシーツをしいてその上に寝るモノよ!」
「・・・・」
「ねぇ、早くー!」
「ん・・・?そ・・・そうか・・・」
「早くよー!」
「ああ」
・・・おんじは干し草ベッドを作ってやることに。おじいさんが手際よく作ったベッドをみたハイジは、「わーステキステキ!これなら王様だって泊めてあげられるわね!」と褒めそやします。そうなるとおんじも「そうとも、この山小屋は王様の住むお城なのだっ!」とご満悦の様子。会って数分で「一緒にご飯でも食べんか?」となってしまいます。恐るべきハイジです。
ペーターもヤギ飼いの仕事から帰ってきて、白ヒゲじじいが迎えてくれるのと少女が迎えてくれるのでは余程モチベーションが違う模様。おんじ、ペーター、ヨーゼフ。早速サポーターに囲まれたハイジ。今までは至るところで邪険に扱われてきたハイジですが、アルムでの生活は理想的なものになりそうです。
アニメ史上最強の老人ヒーリングマシーンのハイジ、みのさんや毒蝮さんも裸足で逃げ出すフェロモンの前では「風の音が俺の話し相手(本人談)」というひきこもりのおんじなぞ相手になりません。おんじはハイジ用の椅子までその日のうちに作ってしまいます。まったく、銀座のホステスなんぞ目じゃないですな。前の家では子守りのおばあさんに邪険に扱われていたみたいですけど、信じられませんね。
それにしても、とろけるチーズがさっそく出てきて美味しそう。夕方にベンチに座ってパンを食べてるところはめちゃくちゃ気持ちよさげです。あー、スイスにいって現実忘れたい。まあ、ボクは喘息持ちなんで、こんな高地じゃ住めないと思うけど。
第3話 牧場で
脚本・吉田義昭
絵コンテ・?
新鮮な山での生活。ハイジはペーターのヤギ飼いの仕事に付いていって、山の上まで行くことにします。「いいか、ハイジが岩から落ちたりしないように気をつけるんだぞ」とお弁当を渡しながらペーターに言い聞かせる、昨日の今日で完全に保護者のおんじです。
山の上はキレイな花がいっぱい咲いて、更に上にいくと「かわいいの」や、大ツノのダンナがいて、ハイジにとってそれはそれは楽しい場所でした。鷹とニアミスして崖から落ちそうにはなりましたがドンマイです。そして二人はその素敵な場所でお弁当を食べました。ハイジがペーターにパンをあげるとペーターはびっくりします。ペーターは今まで人からものをもらったりしたことがなかったからです。パン一つで、もうペーターはハイジに参ってしまった感じです。
山の上で新鮮な体験をしたハイジは、夕食の間ずっとそのことを話していました。おんじはハイジが山であった鷹の話をしてくれます。「鷹は下に向かってあざけっているのだ、私のように高い空を飛んでにいれば幸せになれるぞ、とな・・・」と鷹になぞらえて自分を正当化するおんじ。ハイジのような明るく屈託のない子が、おんじやペーターのようなストーカーに陥りやすい孤独な境遇の男たちと共に暮らすのは困ったものだと思うのですが、相変わらずハイジはマイペースなのでした。
この話マジで山に上がって降りるだけの話なんですよ。でも、楽しい。ペーターがやっていた、ヤギのおっぱいから直接乳飲み敢行。新鮮なんだろうけど、ボクらは下痢になっちゃいそうですな。アルムの山のシーンは総じてのどかなんですけど、画面のすみの方でいっつも崖みたいなのが映っていて落ちやしないかとドキドキしています。実際、この回では落ちそうになるシーンがあるんですけど、ここら辺でサブリミナルに単調を避ける画面構成になっているんですね。
そういえば、「ゆきちゃん」というヤギがドイツの話なのに日本名なのはおかしいって話が昔結構言われてましたけど、原作でも「雪」なんですね。それより、原作では「うそ」だったのが、アニメでは「アトリ」になってる方がわかんない。
第4話 もう一人の家族
脚本・吉田義昭
絵コンテ・富野喜幸
毎回毎回新しい体験をするハイジ。今日は嵐です。
「わー気持ちいいー」と喜んで雨に打たれていたハイジも目の前で雷が落ちたのにはビビってしまったご様子。そんな嵐の後、ハイジはケガをした小鳥を見つけます。「食ったらうまそうだ!」というペーターを一喝して、ハイジは弱っているこの鳥を育ててあげることを決意、その日からせっせと世話とします。
ペーターもおじいさんもとても育ちそうにないと言いますが、ハイジはその小鳥に「ピッチー」を名付けてやる気満々。前回、つんだ花が枯れてしまって「ごめんね、もうつんだりしないわ」と殺生を自ら禁じたハイジでしたが、ピッチーのためと虫の虐殺も開始。
ピッチーに夢中のハイジはペーターと山の上に一緒に行くことも止めてしまいます。パンをくれるぐらい優しかったハイジの余りにもあっさりとした翻意に、ペーターは「わしゃ鳥以下かい」と面白くありません。「へん!そんなの明日にゃ死んじまうさ!」と捨てぜりふ。二人はケンカをしてしまいます。
しかし、ハイジはペーターの気持ちは意にも介さず、小鳥をせっせと育てるのでした。
鳥が堂々ペーターにライバル宣言。ペーターのヤキモチも、この年齢なら可愛いで済みますねぇ。ハイジみたいなマイペースな方は、こういう波紋を無意識のうちに投げてしまいますね・・・。誰とでも分け隔てなく楽しく話をする女性ってのはやたら惚れられるようです。特に無口で自意識過剰な男にはモテモテです!僕は学生時代はおんじみたいなタイプだったのでよくわかりますよ、ハイ!
それにしてもゆきちゃんは我が家で飼っている犬に似てて可愛すぎます。
第5話 燃えた手紙
脚本・吉田義昭
絵コンテ・黒田昌郎
相変わらずピッチーに夢中のハイジにメラメラのぺーターです。「ちぇ!どうせ山には行かないんだろー!」というペーターの懸命の駆け引きにも、ハイジの返答は「あ、ピッチー!ピッチー!」。聞いちゃいません。
しかし、「飛べるようになったから上に行くわー!」とハイジが山の上に来てしまったら、もう怒りはグラグラ。更に「ほら、お弁当も持ってきてあげたわー」のハイジの優しいダメ押しにはぺーターあっさり陥落。「お・・・(ピッチー)、かわいいな・・・」と敵に塩を送る始末。完全にハイジペース。
それどころか、ペーターはピッチーを襲おうとする鷹にブルースウィルスよろしく半裸で体当たり!ハイジに「ペーター!ありがとう!強いのね!」と抱きつかれて、ペーターも得意そう。まあ、ハイジはペーターではなく、ピッチーのことで喜んでいるのですが。困ったもんですね。それどころかペーターは、ハイジにかまけてる間にヤギを見失なってしまいます。霧のなかをハイジに見得を切って探しに行ったのはいいのですが、二人して迷子に!もう何をやっているのだか。
すっかり困り果てたところに現れたのはおんじ!ハイジはおじいさんに喜んで抱きつきます。おじいさんの包容力の前に、半人前ぶりを思いっきりさらしてしまってたペーター。職務怠慢を咎めようするムードのおんじをハイジが説得して許してもらうというおまけ付きでございました。めでたしめでたし。
・・・・しかし、大いに男を発揮したおんじはその夜、デーテからのハイジを都会へ迎えたいという手紙を燃やしているのでした・・・。
ペーター・・・おんじ・・・泣かせるぜ。
やっぱりどんな場所にも女の子は必要だ!
第6話 ひびけ口笛
脚本・吉田義昭
絵コンテ・山崎修二
すっかり山の子になったハイジ。自分もペーターのような羊飼いになろうと努力を開始します。しかし、まだまだ巧くはいきません。
ハイジが山の上で鳴らない口笛を鳴らそうとしている間、おんじは一人山を下りていました。自分の作ったチーズと引き替えにパンなどを調達するのです。その姿を見せるだけで、村人達はおんじの陰口をたたきます。それもそのはず、実際おんじはそういうタイプの男だからです。早速、パン屋でチーズと引き替えるパンの数が合わないと論争を開始。おんじはパンの値上げが行われていることを知らかったのです。元は自分の勘違いから起こったことですが、そこはおんじ、「この店はインチキだ!もう頼まん!」と自らババを引いて更に下の街へ。厄介ものです。
出かけるときよりも更に険しい顔で帰ってきたおんじ。そんなおんじにハイジは乳搾りができるようになったこと、口笛が吹けるようになったことを自慢。更に「おじいさんは口笛吹けるのー!?口笛吹いてー!吹いてー!わー、よく響くー!もっと吹いてー!」とおんじに口笛を何度も何度も吹かせます。あれほど手強いおんじをジャイアントロボよろしくアゴで操るハイジ。おんじはハイジのために乾し肉やパン、更にペロリンキャンディまで買ってきてくれました。ヤギ飼いはまだ巧く出来ませんが、ハイジは無敵なのでした。
前回でインケツだったペーターですが、意外と有能なヤギ飼いであることが今回ちょっと証されます。しかし、ハイジは言うことをきかないヤギを涙でコントロールするという荒技を披露。動物にもフェロモン通用するんですねぇ。
しかし、おんじの村人達からの噂のされようもすごい。自業自得ですが。教会にも行かない人ってのはこの時代では、かなり変わり者でしょう。