第41話 ダニーを診てくれますか
絵コンテ 楠葉宏三
作監   佐藤好春

ギベット先生はホテルモントルーから出発するところでした。

馬車が出発する寸前、今にも倒れそうなルシエンがホテルモントルーの前にフラフラでやってきました。「あの・・・ここは・・・ホテルモントルーですか・・・・ギベット先生にお会いしたいんです・・・」そう言うとルシエンは倒れてしまいます。ギベット先生が馬車から降りて名乗り出ると、ルシエンは大喜び。

「ギベット先生・・・!ボクは先生に・・・!」

しかし、そこまで言ったところで、ルシエンは気を失ってしまいました。突然の出来事にギベット先生は驚きながらも急いで処置し、自分が泊まっていた部屋に連れていってあげます。凍り付いた体、袋に入った沢山のお金・・・。ギベット先生は自分を訪ねてやってきた謎の少年を不思議に思いながら、看病を続けます。目を覚ましたルシエンは、ギベット先生を見るや、すぐにお願いをぶつけます。

「ダニーの足を治していただきたいんです!お願いします!ダニーを診てやってください!」

弱った体で必死で訴えるルシエンの話を聞いたギベット先生は、迷いました。ギベット先生は1時間後に出る汽車でローザンヌへ戻らなければならないのです。しかし、そのダニーという少年の診察を断ればこの少年はどんなにガッカリするだろう・・・。心優しいギベット先生にはそれが薄情な事に思われたのです。沢山のお金の出所は気にはなりましたが、一人で吹雪の峠を越えてやってきたというルシエンの話に強く心を動かされたギベット先生は、ローザンヌへの出発を遅らせ、ダニーの診察をすることにしました。

午後になって、ルシエンはギベット先生と一緒に汽車でロシニエールに戻ってきました。駅では知らせを聞いたアンネット、ピエール、マリーお姉さん、おかあさんが駆けつけます。汽車の窓から元気に手を振るルシエンを見て、みんなは大喜び。ルシエンは命がけで、ダニーを治してくれるお医者様を連れてきてくれたのです・・・。アンネットはいてもたってもいられず、列車を追いかけてホームを駆けていくのでした。

「ルシエン!あたし、言いたいことが沢山あるのに、何を言っていいかわからないわ!ありがとう、ルシエーン!!」

ギベット先生はあっさりと「ダニーの足は治る」という診断を下します。ただし、そのためにはローザンヌの病院まで行って手術をする必要があります。ダニーは一人でローザンヌへ行くことを大いに嫌がりますが、アンネットも一緒に着いていくことでギベット先生のところに向かうことを納得するのでした。

一方、ぐっすり眠って命がけの峠越えの疲れを癒したルシエンは、起きたらすぐにペギンじいさんのところへ報告に向かいます。そして、ルシエンの他にももう一人、ペギンじいさんのところに向かっている人がいました。ギベット先生です。「借りていたお金を返すと言われた」というルシエンのお金について思うことがあったギベット先生は、アンネットに案内されてルシエンが仲良くしているという件の老人を訪ねることにします。

ギベット先生は雪の森の中を一歩一歩進む度に、「このおじいさんを知っている・・・・」そう思い始めていたのです。

余りにもあっさりと診断と下すギベット先生。あれだけ匙を投げられまくった割に何という簡単さ。ギベット先生が余程の名医なのか、それとも他がヤブなのか・・・。

しかし、あっさり治ることは、前も言ったように大いに結構なんですよ。ただ、こんなにあっさりやるんだったら、2話分もかけてルシエンが命がけの前フリする必要は全くないですよねぇ。こんなのは全部ひっくるめて1話分で十分。それにしても、ダニーの治療費って幾らぐらいかかるんでしょう。アンネットの家の牛全部売っても足りないってのは・・・・。




第42話 ペギンじいさんの秘密
絵コンテ 杉村博美・斉藤次郎
作監   前田英美

無事にギベット先生を連れてこられたことを共に喜ぶルシエンとペギンじいさん。そこに、ギベット先生がやってきました。ペギンじいさんはギベット先生を見た途端、無愛想に小屋へ戻ってしまいます。ギベット先生は、アンネットとルシエン連れだって、ペギンじいさんの小屋へと入りました。この二人には、何かいわくがありそうです・・・。

「・・・・このお金は受け取るわけにはいきません。ダニーの足を治すのにお金はいりません」
「それは困る・・・!それをワシは借りていた金を返すつもりでそれを渡したのだ・・・ワシの金が初めて人の役に立つ・・・それで十分なんじゃ・・・」
「このお金は受け取る訳にはまいりません。私は命がけで峠を越えてきたルシエンの勇気に打たれ、ダニーを引き受けることにしたのです・・・それに・・・このお金は大金です・・・」
「・・・・」

どうやってこんな大金を作ったのかを詰問するギベット先生に、一言も理由を言わないペギンじいさん。ルシエンはペギンじいさんのお金は決してやましいものではなく、ペギンじいさんが昔の罪の償いのために木彫りで作ったお金なのだと、一生懸命弁護します。ギベット先生はそんなルシエン、そしてペギンじいさんを暖かい目で見つめています・・・。

「別に疑った訳ではありません・・・あなたが私たちと別れて、今日までどんな生活をしていらっしゃったのか、それが知りたくて・・・・・」
「・・・・・」
「もうこれ以上、お互い知らないふりをするのはやめましょう。私たちはお互いが誰であるのか、よくわかっているのですから」
「・・・・・」
「私はあなたを迎えにここへやってきたんですよ、お父さん!
「・・・・・!!!」

なんと、ギベット先生とペギンじいさんは親子だったのです。ギベット先生はずっと、お父さんを出会うことを願っていたのです。そして再会を果たした今、ギベット先生はペギンじいさんにローザンヌに来て共に暮らそうと望みます。ペギンじいさんは息子が自分を愛し続けていてくれたことに驚き、そして涙するのでした。

そして、ギベット先生はローザンヌは帰っていきます。もちろん、ダニーとアンネットも一緒です。これから2ヶ月、アンネットとルシエンは離ればなれになってしまいます。気丈にふるまっていたルシエンでしたが、さすがに我らが女王がいなくなるのは辛いようで、列車が動き始めると「アンネットー!早く帰って来いよー!」と泣きながら叫んでしまうのでした。

アンネットもルシエンと離れてしまって寂しそうです。その点、あれほど連れて行くなと言われていたクラウスを、「勝手に着いてきてしまったんだー」とまたもやうやむやにローザンヌへ連れて行ってしまうダニーはさすがでした。

女王と下僕が2ヶ月も離ればなれに。全然わかりませんわ、この展開。涙涙で別れたところですぐに戻ってくるんだし。物語の最終盤で物語の軸をサブキャラ(ダニー)に移して、メインキャラクター(ルシエン)を不在にし、更に舞台も変えてしまう。何を考えているのでしょうねぇ。もっとも、このイベントがアンネットとルシエンがまだ交戦状態の時に行われたのなら、話は別でしたが。ルシエンの不在がアンネットの心に影響したと思うので、とても効果的だったでしょうに・・・。

こんなことするぐらいだったら、ギベット先生自体出てこなくてもよかったです。
この段階でのサブキャラ親子の和解なんてさほど必要だと思えないし。急に歩きたくなったダニーがルシエン、アンネットと練習して何か知らないけど歩けるようになってました−!って方がよっぽど気持ちいいと思いますが・・・しかし、それだとまるっきり「ハイジ」ですねぇ。



第43話 希望の町ローザンヌ
絵コンテ 楠葉宏三
作監   竹松一生

ダニーとアンネットはローザンヌへ着きました。2人は今日からギベット先生の家で間借りさせてもらうのです。初めてみるローザンヌの町。次から次へとやってくる見たこともない光景に、アンネットもダニーも歓声を上げます。

ギベット先生の大きな屋敷に着いた二人は早速、屋敷の人たちに紹介されます。ギベット先生の奥さんのエレナ、長女のエリザベス。長男のマーク。そして1歳になるクレーヌ。そして執事ウェルナー、お手伝いのスーザン。知らない土地、知らない家、初めての人々。アンネットとダニーは、ギベット先生の家の生活はロシニエールの生活とはまるで違うのにびっくりしてしまいました。見るもの聞くものが二人にとって初めて経験することばかりだったのです。

その夜、ダニーを寝かしつけたアンネットは窓辺で考えます・・・。

今頃みんなは何しているんだろう、アンネットは、ダニーと二人で見知らぬ遠い町へ来ているのだという事をひしひしと感じていました。もうしばらくは懐かしいお父さんやおばあちゃんと会う事はできないのです。そしてルシエンとも・・・。

「ルシエン・・・私、頑張るわ。ダニーの足が治って、ちゃんと歩けるようになるまで・・・私、一生懸命やるわ。応援してね、ルシエン・・・」

いやー新キャラ一挙登場。しかも6人しかも、残りあと6話。大胆ですね。
「お前がアンネットに惚れておることぐらい、わしゃちゃーんと知っておる!」とペギンじいさんに突っ込まれるルシエン。せっかくラブコメやる準備ができているのに、肝心のアンネットは遠く離れたローザンヌ。ああ、おもしろくないよー。

アンネットとダニーがいなくなって突然寂しくなるバルニエル家。先週にもありましたけど、こういうところは「アン」風ですね。



第44話 ギベット家のひとびと
絵コンテ 楠葉宏三
作監   佐藤好春

アンネットとダニーがローザンヌへやって来て、2日目の朝を迎えました。

ダニーは初めての入院を不安に思いながらも、病院に向かいます。ダニーは6人の相部屋に案内されました。最初は見知らぬ子供にとまどっていましたが、そこはダニーです。クラウスをみんなの前で披露して、あっという間にルームメイト達のハートをガッチリ。病院のなかに動物を持ち込むことを禁止しようとするカタブツ看護婦長のパウエルさんも、ダニーの微笑み攻撃の前にあっさり陥落。クラウスを病院で飼うことを認めるのでした・・・。天使パワーはローザンヌでも炸裂しまくっています。

ギベット先生によると、ダニーは一週間後に手術をする予定だそうです。しかし、肝心なのはその後です。述術後はかなりの足の痛みが伴います。甘えん坊のダニーはそれに耐えられるのでしょうか・・・。

検査を受けるダニーと別れて、ギベット先生のお屋敷に帰るアンネット。今日からダニーは病院に泊まります。「寂しくても我慢してね、ダニー・・・・」アンネットは心の中でそっと呟きました。アンネットはダニーと離ればなれに暮らすことになってしまったのです。

「・・・・ギベット家のお家はとても立派で、奥さんは子供さん達もみんな親切です・・・」その夜、アンネット部屋で一人、お父さんとおばあちゃんに手紙を書いていました。その時、アンネットは突然、ロシニエールの家に帰りたくなってしまいました。ダニーと離れ、そしてギベット先生の娘エリザベスにも「私に気安く声をかけないでよ、迷惑だわ!」とあからさまな冷遇を受けるアンネットは、寂しさをこらえきれずにベッドで泣いてしまいます。

泣き声を聞きつけて、ギベット先生の奥さんのエレナがアンネットの部屋にやってきます。エレナはとても優しくアンネットの話を聞き、そしてアンネットを励ましてくれました。奥様はお母さんにそっくりだと言うアンネットの言葉を聞いて、は「ここにいる間は、私をあなたのお母さんと思ってちょうだい」と言ってくれます。奥さんの暖かさに触れて、アンネットにも笑顔が戻ってくるのでした・・・。

ここらへんはダニー以外には感情移入できなくて・・・。アンネットがあれほどヘコむ理由がさっぱりわかりません。エリザベスからは確かに冷たくされていますが、そんなに大したことではないような。ナレーションでは「アンネットとダニーが離ればなれになったのは初めて」と言ってましたけど、夏に山に登った時に離れて暮らしてたし・・・。演出の流れがアンネットの涙へ一直線に進んでいないので、感情が動かされませんねぇ。

しかし、こういうおかしな気分のなるのは必然です。このダニー治療編でアンネットはダニーの足が治る以外では何も得るものがないのです。むしろ、この時点でダニーの足以外にアンネットの心を悩ます問題があってはいけないのです。ルシエンとの最強最大の問題を解決した後では、それ以下の問題で悩むことはいけません。じゃないと展開的に変。アンネットが下手に悩むとルシエンとの問題が希薄になってしまって、ルシエンのキャラ的な位置も不当に低くなってしまいます(実際、そうなりました・・・)。

もし、このダニー治療編でアンネットが役割を背負わなければならないなら、ルシエンとの関係で得た教訓をもって、エリザベスのように頑なで未成熟な同世代の子供を導いてあげることしかないと思います。もし、そういう「ペリーヌ物語」っぽい構造で進んでいれば、同じ展開でももう少し面白くなっただろうと思いますが・・・。