第31話 峠へつづく道
絵コンテ 楠葉宏三
作監 竹松一生
ルシエンが荷馬車に積んである干し草の上で寝ている間に荷馬車は出発。ルシエンを乗せて荷馬車はどんどん進んでいきます。目を覚ましたルシエンは、自分がどんどん村から離れていってしまうのに気づき、一瞬不安になります。が、学校に行く気も起こらないので、このまま行けるところまで行くことにするのでした。
学校では今日も来ていないルシエンの事で話はもちきり。ジャンやフランツ、アントンも口々にルシエンのことを先生に報告します。ルシエンはどうなったのだろう・・・。授業中もルシエンのことが頭から離れないアンネット・・・。
荷馬車の主人に見つかってしまったルシエン。でもそのおじさんは、ルシエンを叱りつけるようなことはせず逆に「自分も昔はいじめられていた」とルシエンを勇気づけてくれるのでした。馬車から下ろしてもらったルシエンは、一度村に戻りかけます。しかし、ルシエンは、急にさっきのおじさんに自分のことを何もかも打ち明けたくなって、もう一度荷馬車を追いかけるのでした。
学校が終わった後、ジャン達はいなくなったルシエンを探しに森へ行くことにします。待ち合わせをしたジャン達を待ちきれずに先に森に入ったアンネットは、森をさまよううちにペギンじいさんと出会うのです。ペギンじいさんは、ここのところルシエンの様子がおかしい理由をアンネットに尋ねます。アンネットはルシエンが木彫りを展覧会に出さなかったことを話すのでした。
「そうか・・・ルシエンは木彫りを展覧会には出さなかったのか・・・。アンネット、お前はあの木彫りが壊れた理由を知ってるかね・・・?」
「い、いえ・・・知りません・・・・ワタシは何にも知りません・・・」
「わしにはルシエンがガッカリする気持ちがよくわかる・・・ルシエンは心を込めてあの木彫りを作っておったからな・・・アンネット、ルシエンはあの木彫りを作っているとき、これは展覧会のために作るんじゃない、お前やダニーのために作るのだと言っておったよ・・・・」
「・・・ルシエンが・・・そんなことを・・・?」
「お前やダニーのことで随分と辛い思いをしてきたが、それを乗り越える勇気を持とうと一生懸命じゃった。ルシエンはお前とダニーに愛されたいと願っておるのじゃ」
「・・・・・・・・・・」
ペギンじいさんからのルシエン○秘トークを聞かされたアンネット・・・・。別れ際にペギンじいさんに「ワタシ、ルシエンときっと仲直りできると思います」 とアンネットは言うのでした。ルシエンに会おう・・・。ルシエンに会って本当の事を話さなきゃいけないんだわ。そうしなければ、私の犯した罪は消えやしない。そうだ、勇気を持とう。アンネットは心の中で堅く誓ったのです。
ルシエンは荷馬車を追いかけるうちに、峠までやって来ました。ルシエンはこの峠をこんなに間近で見るのは初めてでした。いつもは何気なく眺めている峠なのに、この時ルシエンの心はこの峠に引きつけられました。ルシエンには、この峠が自分の住み慣れた所とは全然違った世界に入る入口のように思われたのです。いつの間にか、ルシエンは峠に向かって歩きだしていました・・・。
引き続き、ルシエンドロップアウト編です。
あんまりこの話は見所はないんですけど、唯一の見せ場は、授業中知らず知らずのうちに 「Lucien Lucien Lucien」と石板に書きつづってしまうアンネット。下僕に心が占領されてしまっています・・・かなり弱ってますなあ。
第32話 伝えたい真実
絵コンテ 楠葉宏三
作監 佐藤好春
この峠の向こうには僕の知らない世界がある。
僕やアンネットを全然知らない人たちがいる。
そこに行けば、僕は自由に暮せるかもしれない。
歩き続けたルシエンは、遂に峠を越えます。峠の向こう側はルシエンが見慣れたロシニエール村と同じ景色でした。しかし山と森と牧場の遙か彼方にキラキラ輝く大きな湖がありました。ルシエンにはその湖の輝きが、ルシエンの自由を約束してくれる輝きのように思えました。「イヤッホー!ボクは自由だ!」大喜びで駆け出すルシエン。しかし・・・。
「母さんを忘れる訳にはいかないよ・・・バカだなボクは・・・・」
と5秒で改心したルシエンは村へ引き返すことに。
その頃、森ではルシエンが峠にいることなぞ思いもしないクラスメイト達による捜索が引き続き行われていました。手がかりもなく探し回ることに一同はすっかり疲れて、ささいなことからケンカになってしまいます。ギスギスした雰囲気に責任を感じたアンネットはますます悲しくなり、森の奥で泣くのでした。「ワタシのせいだわ・・・何もかも、ワタシが悪いんだ・・・うぅうううう・・・・」
一方、ルシエンは道に迷ってしまいます。遅くなったので森のなかを近道しようとしたのが、裏目にでてしまったのです。モレル家では、余りにルシエンが帰るのが遅いので「ルシエンが二度と帰ってこないような気がするんだよ・・・・」とまたもやネガティブシンキングをするお母さん。そこで、マリーお姉さんがアンネットのお父さんと一緒にルシエンを探しに荷馬車で出かけます。その馬車を見送った後、おばあちゃんはルシエンが学校に行かないのは何か辛いことがあったのだと、ダニーに言うのです。
「ダニー、お前は辛いことがあったらどうするんだい?」
「う〜ん・・・泣いちゃう・・・」
「泣いても、辛いことがなくならなかったら、どうする?」
「そのときは・・・おばあちゃんやお姉ちゃんにも一緒に泣いてもらう!」
「そう、辛いときは思いっきり泣けばいい。でも、泣いた後は胸のなかのモヤモヤを取り除くようにしなければ・・・でないといつまで経っても辛いままでいなければならないからね」
かわいいダニーの受け答えを聞きながら、アンネットは考えます。
「ワタシの心のなかのモヤモヤはいつになったら晴れるのかしら・・・。ルシエンに何もかも話せば、本当に晴れるのかしら・・・」
結局、 マリーお姉さん達はルシエンを見つけることはできませんでした。しかし、心配ご無用。ルシエンは森の中で迷っているところを、村で飼われているルドルフというセントバーナード犬に助けられ、その犬の道案内で無事に家まで帰り着くことができたのでした。
翌日、2日間の欠席の果てに遂にルシエンは学校へとやってきました。その昼休み、勇気をふりしぼったアンネットはルシエンを呼び止めます。
「ルシエーン!」
「・・・・・・」
「 あの・・・ルシエン・・・アタシ・・・あなたに話さなきゃならないことがあるの・・・」
「・・・・・・」
「ルシエンの木彫りの馬のことなんだけど・・・あれは・・・アタシが・・・」
「いいんだ、もう!」
「・・・・・・えっ?」
「その話は二度としたくないんだ!!思い出すのも嫌だ!!」
話す間も与えず、走り去るルシエン。
一人残されたアンネットは、悲しみで涙が止まりませんでした・・・。
この回も大部分は大したことないんですが、最後のシーンは必見。
ルシエンに泣かされるアンネット。
下克上も遂にここまで来ました。「ルシエンに真実を話せばまた友達同士になれるはず」というアンネットの甘い期待を灰燼に帰す下僕の一撃。この回の最後のシーンは、実は「アンネット」でもっともスリリングなシーンではないでしょうか。
しかし、アンネットのお父さんはルシエンの保護者も兼ねているんですかねぇ。ルシエンに限らず、ピエールおじさんは何度人命救助に向かわされることか。一人山岳救助隊ですね。まあ、本当に人命救助できたことはあんまりないですが・・・。
第33話 勇気ある告白
絵コンテ 清瀬二郎
作監 前田英美
ルシエンの拒絶を受け、アンネットは授業にも全く身が入らず、心の中は苦しみと悲しみで千々に乱れていました。そして、ルシエンはルシエンで、ジャン達と一緒にいたずら三昧。何かにとりつかれたように享楽的に過ごす毎日です。ロシニエール村に秋が駆け足で通り過ぎようとしていました・・・。
いたずらに使うカエルを釣る竿を探してを納屋を探していたルシエンは、いつかの木彫りの馬をお母さんがとっておいたのを見つけて、大激怒。
「捨ててくれよ!こんなもの、もういらないんだよ!」
「だって、お前が一生懸命作ったもんじゃないか。今はそんなこと言っていても、いつかヤル気が出て・・・」
「やらないよ!もう木彫りなんか、絶対にやらないんだ!」
木彫りを地面に叩きつけて、まっぷたつにするルシエン・・・。ペギンじいさんに顔を合わせることもできず、ルシエンは今日も遊びほうけます。クラスメートが次々とルシエン・ジャン・アントンのいたずらの餌食に。
そして、いたずらの標的は遂にアンネットに。「アンネットが来るぞ・・・」「まずいなあ・・・アンネットは後が大変だから・・・」ジャンとアントンはビビリ気味。しかし、ルシエンは「アンネットのどこが怖いんだ!ボクはちっとも怖くなんかないぞ!」と単独でアンネットにカエルけしかけ攻撃。
「イヤアアアアアアアア!」
まんまとカエル作戦は成功!しかし、ジャンの言う通り、アンネットの恐ろしい反撃が。ジャン達が木の上に隠れているとみるや、投石。ひるんだところを木の上によじ登ってキックで男どもを木から突き落とし、「弱い女の子ばっかり脅して遊んでたのね!そんなの人間のクズだわ!卑怯者よぉ!」 と罵声付きで木の枝で全員をしばきあげます。
やられっぱなしのジャン達。しかし、ルシエンはひるみません。「じゃあ、アンネットは卑怯者じゃないって言うのかい!?自分は悪いことやったことないって言うのかい!?」と逆にアンネットの弱みをタテにして詰問。追いつめられたアンネットは何にも言い返せず、その場を逃げるように立ち去るのでした。しかし、アンネットに勝っても、ちぃとも気分の晴れないルシエンです・・・。
「どうしたらいいのかしら・・・」
夕方、おばあさんは暖炉の前でアンネットが囁いているのを聞きます。
「どうしたらいいかわからないの・・・いつも息が詰まりそうで、胸が痛くて苦しいの。だから忘れよう思うけど、ダメで・・・油断してるとすぐにあの時のことが頭に浮かんできて、ワタシを苦しめるの・・・ワタシはルシエンに謝ろうって思ってるの、ごめんなさいって・・・心から謝ろうと思ってるの・・・・でも、ルシエンはワタシの言うことを聞こうともしない・・・・」
苦しみの果てに、アンネットはルシエンの木彫りの馬を壊したことをおばあちゃんに告白します。自分は心が狭くて、意地悪で、意固地で、嫉妬深い子だと・・・・。おばあちゃんはそんなアンネットを勇気づけ、励まします。そして、ルシエンに謝り、話しあう機会を持つようにアンネットに言い聞かせるのです・・・。
「お前は賢い子だ、私はお前を会ったときから好きだったし、今だって大好きだよ。」
暖かい言葉に触れて、おばあちゃんの胸でいつまでも泣くアンネットでした・・・。
一方、柄にもない放蕩のバチが当たったのか風邪をひいてしまったルシエン。4日も寝込んで、そして1週間が過ぎてようやく外に出ることができたルシエンは、自分が捨てた木彫りを見つけます。その木彫りを拾ったルシエンは、突然決心しました。元気になったらペギン爺さんの所に行くんだ。そしてまたあの山小屋で木彫りをやるんだ。そしてまた、最初から何もかもやり直そう・・・。
前回に続いて、ルシエンの余りにも早い改心が気持ち悪い回です。
字で書くと結構いい感じの話なんですが・・・。この話もテンポがあんまり良くないですねぇ。 アンネットが馬を壊してから以降の回は全部もう一声の話ばっかりで、物語の佳境中の佳境なのに、もったいないです。ここら辺りがもっとスムーズにこじれていたら、35話が更に輝いたと思うんですが・・・。
しかしまあ、ルシエンがあまりアンネットより上位に立っているのは気持ち悪いので、速攻元に戻ってくれるのはありがたいのですが・・・。
第34話 さようならフランツ
絵コンテ 楠葉宏三
作監 竹松一生
おばあちゃんに全てを打ち明け、勇気をもってルシエンと話しあうことを説かれたアンネット。しかし、アンネットはルシエンが話を聞いてくれなかったら・・・という不安でどうしても話をすることができません 。せっかく木の上にいたルシエンと話ができそうなチャンスも、ジャン達の茶々が入ってしまってうやむやに。
そんなある日、先生がクラスで重要な発表をします。フランツがローザンヌの学校へ転校することになったのです。寂しく思うクラスメイト達。特にフランツにホの字のマリアンは悲しそうです。
フランツの転校がどんどん近づくある日、フランツはアンネットとルシエンを呼び出して言います。「実はボク君たちにお願いがあるんだ。君たち二人に仲直りして欲しいんだ!」フランツは大切な友達二人がいつまでも仲直りできないことを、とても残念に思っていました。そして、とまどう二人に友情がどんなに大切なものかを語るのでした。
その翌日から、ルシエンは毎日ペギンじいさんの山小屋へ通いました。フランツの為に木彫りを作って、プレゼントしようと考えたのです。フランツがローザンヌへ出発する日までに木彫りを仕上げようと、ルシエンは昼も夜も夢中で彫り続けました。ルシエンはかけがえのない友達のために一生懸命だったのです。
そしてフランツが出発する日。ルシエンの木彫りは無事完成しましたが、疲れたルシエンはまんまと寝坊。泡を食ったルシエンは大急ぎで駅へと向かいます。
間一髪、ルシエンはフランツの出発に間に合いました。立派な木彫りを渡したルシエン。「僕たち、いつまでも友達でいような!」ホームの端まで走る列車を追いかけるルシエンとアンネットです。
「フランツ、ワタシきっとルシエンと仲直りするわ・・・。だって、ルシエンはワタシの・・・大切な友達ですもの。」
この回いらん。見ないことを強くお勧めします。
これはいつもの演出云々ではなく、この話の存在自体が間違っています。だって、この話は前の回とほとんど同じことをしているだけ。しかも前回おばあちゃんが励ましたところを、今回はフランツがやるんで、キャラの重要度を考えてもモチベーションが後退してます。
この回がアンネットが馬を壊す前、もしくはフランツがもっとキャラ的にたっていれば、まだ良かったと思うんですが。はっきり言ってフランツはアントン以下のキャラクター。アンネットがおばあちゃんという重要キャラに告白した時点で、アンネットのすることはそれ以上の上位キャラ、ルシエンへの告白しか残ってないはずです。それなのに、ここでフランツごときにもう一度同じことを誓わされるのは我慢できません。アンネットのクラスメートで何か言う権利があるのは、せいぜいジャンかマリアンのみです。後でこんな重要な役割を与えるのなら、フランツのキャラ立てをもうちょっと気合い入れてやっておいてもらわないと・・・。
しかもこの転校騒ぎで、アンネットとルシエンの間も中途半端に和解が進んでしまって・・・。こういうのは、ここまでこじらせておいた準備を全部台無しにするだけで、圧倒的によくない。せっかく、この次の回でクライマックスを迎えるというのに、こういう中折れはちょっと勘弁ですねぇ。こんなことするぐらいなら、前回の話を前後編でやってくれる方が余程よかったです。何か、佐藤好春に美味しいところを回すためだけの時間稼ぎにしか思えない。
全く、解せませんね。
第35話 心の扉をひらいて
絵コンテ 清瀬二郎
作監 佐藤好春
クリスマスがまたやってきました。
バルニエル家にとって、クリスマスはとりわけ大事な意味があります。クリスマスの夜、優しいお母さんのフランシーヌが天国に召されました。そしてダニーが生まれました。そしてもう1つ、クリスマスの朝、クラウスがダニーのスリッパの中に入っていたのです。クリスマスが巡って来るたびに、アンネットはバルニエル家の幸せがいつまでも続くように念じたのでした。
クリスマスのミサに参列したその夜、アンネットは夢を見ます。雪のなかをさまよう旅人が、助けを求めて閉ざされた家の扉を叩いているのです。「開けてあげて・・・開けてあげて・・・・」うなされて目覚めたアンネット。ふと、窓の外を覗くと家の外にクラウスがいるのが見えました。気にもとめずに寝直すアンネット。
翌朝、アンネットが起きてみると、ダニーがワンワン泣いています。クラウスがいなくなってしまったというのです。ダニーはクラウスもお腹を空かせているとご飯も食べません。アンネットは、昨日確かにクラウスを見ていたのですが、どうせそのうち帰って来るに違いないと思って黙っていました。
しかし、クラウスは帰ってきませんでした。ダニーがあんまり心配するので、アンネットは夜になって一人でクラウスを探しに出かけて行きます。一生懸命探すアンネットでしたが、クラウスは見つかりません。・・・・雪のなかをさまよっているうちに、アンネットはふと昨日の夢を思い出していました。昨日のあの人は、イエス様だったのかも知れない・・・。はるばる遠くからいらっしゃったのかも知れないのに、どうしてあの家の人は扉を開けなかったのかしら・・・。アンネットは急に胸を締め付けられるような気がしました。戸を開けなかったのは、ひょっとしたらワタシ自身だったのかも知れない・・・。ルシエンもあの人と同じように、長い間辛い思いをしたに違いない・・・。
ドサッ!
考え事をしていたアンネットは凍った橋の上で滑って転んでしまいました。足をくじいてしまったようです。「いたた・・・こんなとこにいても仕方ないわ・・・とにかく一度お家へ帰らなくては・・・」
バッシャーン!
なんとヘッポコなことに、痛めた足で歩こうとしたアンネットは足を滑らせて橋から下の川へ落っこちてしまいます。何とか川から這い上がったアンネットでしたが。足は動かず、体はズブ濡れ。そして雪。一気に凍死の危機に。
「誰かー!誰か来てー!」
どれほど呼んでも、森のなかでは誰もいようはずはありません。このままでは家まで帰れません。絶望的な気分になるアンネットでしたが、そこに遠くで木こりのベルドッヅさんの家の窓が光っているのを見つけます。助かった・・・。「明かりが点いてるから、きっと起きてるはずだわ・・・」
力を振り絞って、ベルドッヅさんの家まで4つん這いでやってきたアンネット。「ベルドッヅさーん!ベルドッヅさーん!開けてくださーい!早くして!凍え死んじゃうわ!」しかし、返事はありません。鍵もしまったままです。・・・・誰もいません。窓の明かりは泥棒よけにつけておいたものだったのです・・・。力つきて階段を転がり落ちるアンネット。
「誰か・・・誰か・・・・助けてちょうだい・・・・」
万事休すと思われたその時、アンネットは近くを滑るスキーの音を聞きます。アンネットは渾身の力で呼びかけます。「助けてー!動けないの!助けてー!行かないでー!お願いー!」・・・しかし、スキーの音は遠くへと去っていってしまいました・・・。
「・・・・ん?」
スキーの音の主は、ペギンじいさんの家から帰る途中のルシエンでした。一度は通り過ぎてしまったルシエン。しかし、何となく声がしたような気になったルシエンは、ベルドッチさんの家の前まで引き返してきます。そこでルシエンは・・・雪のなかで行き倒れになった少女を見つけるのです。
「アンネット・・・・・・!」
「・・・・・・ルシエン・・・・・あなただったの・・・・戻ってきてくれたのね・・・」
ルシエンは急いでアンネットを助け起こし、木のウロに移して自分の着ていたコートやマフラーをかけてあげます。そして、ルシエンは歩けないアンネットのために、家までソリを取りに行くことにします。
「ボクが帰ってくるまで、絶対に眠るんじゃないよ、わかったね!」
「ありがとう・・・ルシエン・・・あなたが来るまで・・・ここで待ってるわ・・・」
「それじゃ、行って来るよ!」
雪の中をルシエンは脱兎のごとく行ってしまいました。ルシエンを見送ったアンネットは・・・全ての決意をし、そして神様に感謝します・・・。
「イエス様・・・・私は今、私の心の扉を開きます。今まで心の扉を閉めていた事をお許し下さい・・・・。どうぞ、私の心の中にお入り下さい。そして私があの木彫りの馬を壊した事をルシエンに正直に話す事ができるよう、勇気をお与え下さい・・・。ルシエンを私の所にお送り下さった事を感謝します・・・・」
ルシエンはあっと言う間にソリを持って帰ってきました。急いでソリに乗せて運ぼうとするルシエンを制したアンネットは、長い間言うことができなかった告白をするのです。
「私・・・あなたの木彫りの馬をわざと壊したわ・・・。あなたが展覧会に出すはずだった木彫りは、私が壊したのよ・・・。私、あなたがご褒美をもらうのが悔しかったのでわざと壊したの・・・・」
・・・アンネットの言葉を聞くルシエンは、不思議と安らかな気持ちでした。
「話しってそれだけ・・・?」
「それだけよ・・・?どうして笑ってるの、ルシエン?」
「嬉しいからさ!アンネットがその事を僕に言ってくれたのが、嬉しいんだよ」
「ルシエンは怒らないの?私が木彫りを壊した事を怒ってないの?」
「怒ったさぁ!さんざん怒って・・・・もう怒り飽きちゃった!」
「私、本当に悪い事をしたと思ってる・・・。心からあなたに謝りたいと思ってる・・・ごめんなさいね・・・ルシエン」
「もういいんだ、アンネット。僕たち友達じゃないか」
「ルシエン・・・」
・・・・2人の長いしこりは解けました。2人はやっと、昔のアンネットとルシエンに戻ったのです。今、2人の顔は喜びで輝いていました・・・・。
実質的な最終回。
この回は大いに盛り上がります。弱り切った4つん這い女王アンネットに、ピンチにやってきて逞しく助け出す下僕ルシエン。演出も大いに良し。佐藤好春氏もキャラクターデザインを完全に無視した完璧な作画。ついでに、ダニーもめちゃくちゃ可愛いし、いやー言うことありません。見てくれとしか。
さて、決着がついたのになぜかまだ13話も残ってますよ。
この後からどうしましょうかねぇ。