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山形米沢の12ヶ月
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米沢高原の春は4月1日に始まる。暦やカレンダーがどうあれ、春はこの日に始
まる。この日にはスキー場の林間コースが除雪される。車でペンションの前まで
乗り付けられるようになり、雪に閉じこめられた冬から解放される日だ。
林間コースの除雪は米沢高原の春の風物詩だ、除雪ブルドーザーのグゥオー、
ガクンガクンという音は、春がやってくる足音だ、と私は思っている。雪の中に
響く音は心地よい。
春の気配は3月中旬にはあり、林間コースのまんさくの黄色い花が色づく。こ
の頃にはゲレンデも所々雪がとけて地面がむき出しになり、ふきのとうが顔を出
す。スキーをしながらふきのとうをむしり取っているスキーヤーもいる。
除雪が終わり、車で買い物に出かけ、春が始まる。この月は忙しい。冬の後始
末をしなければいけない。スノーモービルや除雪機を片づけ、雪囲いを片づけ、
雪で壊れた所を補修してと、やることはたくさんある。
日本には雨期や乾期はないが、米沢高原にはある。四月がそうだ。この月には
雨が全く降らない。雨が降ったら休もうと作業に精を出していた最初の年、晴天
が続くのでぶっ通しで働いていたら身体をこわした。ありがたいようなありがた
くないような天候だ。
花壇の雪がとけた時、植木が枯れていた。雪で枯れたのかと思っていたら、雪
がとけるにつれて、緑に色づき葉をつけた。プロバンスブルーだった。これには
驚いた。枯れてみっともないから引っこ抜こうと思っていた草木が葉をつけ、花
をつける様子は、魔法を見ているようだった。自然の生命力の神秘を垣間見る思
いだった。
春といえば山菜採りだ。わざわざ出かける必要はない。ふきのとうは目の前の
斜面一面に生えている。食べ尽くせる量ではない。たらの芽やこしあぶらもあち
こちに生えている。食べたくなった時に家からちょっと出て摘んでくる。自然の
家庭菜園に囲まれているようだ。スキーシーズンが終わり、これからは葉っぱを
食べて暮らすのよと近くの女将がいう。
ふきのとうは花に成長しても、そのまま天ぷらにして食べられる。たらの芽も
旨いが、なんといってもこしあぶらだ。天ぷらにして手軽に食べられるそれらの
山菜は、野趣溢れて自然そのままの味と香りがする。春の香りだ。