中学生たちが作る、idea共有サイトのご紹介         2009年7月8日
                                                 弁理士遠 山  勉

 http://idea.namikikai.com/(川俣純先生管理運営)

この「idea共有サイト」は,単なるアイディアを集めるためのものではなく、学校の枠をこえて,投稿されたアイディアを参考にしてさらに新しいアイディアを生み出すためのインターネット環境を提供しようとするものだそうです。
「これまでの授業では,生徒のアイディアはすごいと担当教師から評価されることはありました。しかし,そのアイディアが次のアイディアにつながるように私たち技術科教師は十分に配慮してきたでしょうか。各学校ごとならば,先輩の作品を写真にとるなどして継承がはかられてきた学校もあるかもしれません。学校を越えてのアイディアは共有はなかなか実現できていなかったように思えます。」との反省を踏まえ、信州大学教育学部の村松浩幸先生が提唱されている,知的財産の学習サイクル・・・・知的財産を取り入れた技術の授業「知の創造,知の共有,知の尊重」を参考に、「アイディアを継承する技術教室を作り上げる・・・との課題を設定し、そのための一手段として、このサイトが生まれたようです。
詳細はここ

「アイディアの連鎖」ということで,参考資料を載せることにこだわっているとのことです。

このサイト運営にも参加されていらっしゃる山口治先生は、ロボットアイディアチャレンジ2008の一環として開催された中学校教員向け「知的財産研修会」 ・・「なるほど!ナットク!アイデア報告書」(講師、村松先生及び小職)、に参加していただいた、熱心な先生です。
その講義で、村松先生と共にお教えした、目的・構成・作用効果分析による発明抽出方法(社会人向け特許明細書作成方法を中学生向けに少々簡易化したもの)を、早速教育現場に取り入れられました。
そして、『アイディアの言語化が苦手な生徒が多いので,「生徒の思い→問題点→目的→構成→効果→分析→新たな課題→生徒の思い」の流れを大切にして,アイディアの言語化できる生徒を育てて行ければと考えています。単純に,虫食い問題のように,自分でキーワードとなることばをいれれば文章になるようなものを作ろうかと考えています。さらに,アイディア発見シートで,知的財産を頭に入れたので,アイディアひらめきシートで知的財産を発散する活動も重視していこうかと考えています。』と意向をお持ちのこと。

「生徒の思い→問題点→目的→構成→効果→分析→新たな課題→生徒の思い」の流れを明確に認識するには、どうしたらよいのか、という点にお答えするため、小職より次のようなメッセージを送らせていただいた。

『「空を飛びたい」という目標があったライト兄弟・・最後には飛ぶことができました。空を飛ぶにはどうすればよいか・・・。いろいろ考えた。着眼すべきは何でしょうか。「機能」・・浮力です。機体を浮かせるにはどうすればよいか・・・。翼の形状が決まります。発明の各構成を、「機能実現手段」と言います。目的→構成→効果の内、効果は空を飛べるです。構成は、そのための構造。構造と効果を結ぶ作用(機能)が重要です。空を飛ぶには、・・空気中で浮けばいいんだよな。浮くにはどうする? 浮くための浮力。翼の形、重量は軽い方が良い。推進力が必要だね。・・・どうでしょうか。願望であった空を飛ぶ・・が具体的な構成物になってきませんか。』

これに対し、山口先生から『「目的,構成,効果」でアイディア発見シートを書かせていると,こんなことに気づきます。「そんな構成では,その効果は得られないでしょう!!」
目的→構成→効果の流れを一貫して説明できると説得力が増すように感じています。中学生は,知識不足なところがあるので,その一貫性をもたせられるようにアドバイスをしてきたのですが,曖昧なアドバイスをしていたところがあります。
 「本当にこの構成で,この効果が得られるの?」とか「これじゃこの効果は得られないよね!!」といった感じで,漠然と説明していました。自分でも構成を考えながらのアドバイスです。
 今回教えていただいた,「機能実現手段」というものが,互いを結びつけるということが,とても参考になります。生徒にアイディアを一貫したものとして表現できるアドバイスがよりできそうです。』とのご返事。

この知財文化・創造と教育の他のページで紹介しているように、「目的,構成,効果」対応関係による発明分析は、大人向けに作ったもので、これがきっちり出来れば、特許出願明細書もクリアになるものです。しかし、大人でも意外に出来ない人が多い。むしろ、頭の柔らかい中学生の方が、飲み込みが早いのではないでしょうか。このような教育を中学のときからやっていただけることに、知財界の者としてうれしい限りです。日本の将来を託すべき若者たちが知財を尊重し、技術・文化の発展に貢献できる人材に育っていただければ幸いです。