撮影地:レインボー・バレー、アリススプリングス南方

● 野生の懐
レインボー・バレーには簡易キャンピング・グラウンドが設置されている。キャンピング・グラウンドと言っても駐車スペースと簡易トイレ、そしてバーベキュー台が一つあるだけで、ほとんど野宿状態である。管理人もいないし、シャワーもない。夜が訪れ、星の輝きが増すと、地平に遠雷が怪しく光った。以前はびびって、「あれが来たらどうしよう」と心配していたが、旅を重ねるうちに慣れっこになった。しかし、慣れないことも...。食事中、キャンパーの排水を受けるバケツからガタガタと妙な音がする。見てみると、中でネズミが暴れてるではないか。水を目当てにバケツに入り、出られなくなったようだ。そのまま逃がしてやったが、事はそれだけでは済まなかった。夜中、今度はキャンパーの中で異音がする。残飯を入れておいたビニールの中でネズミが餌を漁っているのだ。昔の探検隊はネズミ対策に、食料を木から吊しておいたという話を思い出した。しばらく放っておいたが、気になるのでビニールごと車の外に出すことにした。朝までその中でおとなしくしていてもらおうと、袋の口を縛る。それからどの位 経ったろう、今度は外で音がする、そしてかすかに羽音が聞こえた。何かが飛び去る音。ビニールは裂かれ、ネズミの姿はなかった。あの羽音はフクロウか何か夜行性のハンターだったのだろうか。野生は眠らない。餌を狙っていた者が一転して餌になる。身近に起きた弱肉強食に今自分が野生の懐にいることを改めて思い知らされた。

Nikon F4 with MF-23,
Ai AF Zoom Nikkor 28-85mm F3.5-F4.5S,
Fujichrome Velvia ISO 50 (RVP)
Aperture-Priority Auto @ F11
Rainbow Valley, 97km south of Alice Springs, Northern Territory
October, 2001

2002.03.27 掲載
2002.12.05 アクセス解析対応