● 野火
この日はツキが無かった。テナント・クリークへの道中、ダリー・ウォーターのパブで長居し過ぎて先を急ぐ最中、右後輪がバースト。炎天下、四駆用の重いタイヤを交換するのは並大抵のことではなかった。交換を終えた時点で既にその日の体力を全て消費してしまった感じである。気を取り戻して再び南下を始めると、写真のように煙が高々と立ち上る様子が見えてきた。かなり遠くから見え始めたので、相当大規模に何かが燃えていると察せられる。時あたかも、アメリカでのテロ事件直後、ワシは「すわ、飛行機の墜落か!?」と不安な気持ちに駆られた。かなりの距離を走り、ようやく現場へとたどり着く。広大な範囲の大地が黒こげになっている。たとえジャンボが墜落してもこんなに広い範囲が燃えることはあるまい。オーストラリア名物ブッシュ・ファイアである。アウトバックを走ると道端が燃えていることは日常茶飯事であるが、これは今まで見た中でも相当大きい部類に入る。ワシが通りかかった時点でも火は各所でくすぶり、窓を閉めなければ煙と熱気で具合が悪くなるほどだ。空には、隠れ場を焼かれた小動物などを狙って、多くの猛禽類が旋回している。自分が望まなくとも次々と予想もしないイベントが起きる。結局この日はテナント・クリークへは到着できず、小さなロードハウスのキャンプ場に泊まった。まあ、これも一興、荒野の旅に退屈はない。

Nikon F4 with MF-23,
Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D (IF),
Fujichrome PROVIA 100F (RDP III)
Aperture-Priority Auto @ F11
Stuart HWY., South of Daly Waters, Northern Territory
October, 2001


2002.04.26 掲載
2003.09.04 アクセス解析対応