撮影地:サウスアリゲーターリバー

● サウス・アリゲーターの愉悦
乾期から雨期への移行期にあたるこの季節、過去3回の訪問(いずれも乾期の始まりの4, 5月)と比べ明らかにカカドゥの様相は異なっていた。公園の手前、アデレード・リバー周辺の湿原地帯に群れる野鳥の数が極めて多い。これまでの訪問では野鳥の姿はまばらだった。期待に胸が膨らむが、天気は悪い。青空は姿を見せず、降ったり止んだり不安定な空模様だ。「既に移行期を過ぎ、本格的な雨期に入ってしまったのでは?」、テロ事件の影響を懸念して出発を一週間遅らせたことを後悔した。実際、カカドゥ滞在2日目の夕方まで満足できる写真は撮れてない。その夕方、湿原の撮影を終え、キャンプに戻ろうとした時、西の空の異変に気付いた。厚い雲は消えて薄日がさしている。「これはいける!」。ワシは10km先のサウス・アリゲーター・リバーの氾濫原へ急いだ。広大な氾濫原の向こうに沈む太陽は雲に隠れて姿こそ見せぬが、薄い雲を茜に染め、雨に濡れた道路が空の紅を反射する。この光景を前にワシの心の雲は消えた。「さあ、始めよう!」、2001年のカカドゥの始まりを告げるカットである。

Nikon F4 with MF-23,
Ai AF Zoom Nikkor 28-85mm F3.5-F4.5S,
Fujichrome Velvia ISO 50 (RVP)
Aperture-Priority Auto @ F11
South Alligator River, Kakadu National Park, Northern Territory
October, 2001

2001.12.18 掲載
2002.11.06 レイアウト変更・文章修正
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