各疾患ごとに策定され、日常診療のよりどころとなる診療ガイドライン。だが、その改訂は数年ごとに行われるため、ガイドラインでは「十分な根拠がない」とされている治療が新しいエビデンスによって突如、脚光を浴びることもある。本特集では、エビデンスが出たばかりでガイドラインに記載されていなかったり、新薬の陰に隠れて顧みられなくなったが実は効果が高いといった、治療の“裏ワザ”を紹介する。
生活習慣病の複数の危険因子が合併するメタボリックシンドローム。胆汁酸吸着薬にそれら危険因子を同時に改善させる効果があることが分かってきた。
日本医大の鈴木達也氏は、「血糖が高い人ほど、肥満度が強い人ほど血糖や体重が下がりやすいのもコレスチミドの特徴」と話す。
昨年4月に始まった特定健診で、メタボリックシンドローム(MetS)を指摘される人が増えている。MetSの診断基準を満たさなくとも肥満や脂質異常症、耐糖能異常を合併し、その予備群とされる人も少なくない。
このような患者に対し、日本医大付属病院老年内科で肥満・糖尿病外来を担当する鈴木達也氏は、胆汁酸吸着薬のコレスチミド(商品名:コレバイン)をよく処方する。最近の研究により、同薬には効能のコレステロール低下作用のほか、血糖や内臓脂肪を低下させる作用があることが分かってきたからだ。
鈴木氏らが、脂質異常症を合併した2型糖尿病の入院患者(33例)を血糖降下薬のアカルボース群とコレスチミド群に分け、投与前後の血糖日内変動を見た結果、両群とも同等の血糖低下効果を示した(図1)。