トウネズミモチ  Ligustrum lucidum

トウネズミモチ(大阪府立大学:2000...)

トウネズミモチの開花(大阪府立大学:2000.6.30)

モクセイ科* イボタノキ属 【*APGⅢ:モクセイ科】

Ligustrum:イボタノキの古代ラテン名から lucidum:光沢のある

トウネズミモチは中国原産の常緑広葉樹で、その名のとおり、日本のネズミモチに近縁の植物です。上原敬二著「樹木大図説」にはこの種の日本導入は明治初期とされていますが、大阪の公園などでよく植えられるようになったのは20年ほど前からのことで、35年ほど前、わたしたちが樹木に対する大気汚染の影響を調査したころにはほとんど見かけませんでした。この調査のときは、大阪市内の広い範囲でたくさんの学校や公園をまわり、植栽樹種を精力的にチェックしましたから、もし、今ほどたくさん植えられていたとしたら、きっと記憶に残っていたはずだと思います。

トウネズミモチはネズミモチに近いとはいえ、ネズミモチよりはるかに大きくなる樹木です。ネズミモチという名前にとらわれるせいか、日本のネズミモチと同じように生け垣にしたり、強く刈り込んで栽培されることが多いようですが、少し管理の手をゆるめるとどんどん大きくなり、すぐ、幹直径が10cmくらい、高さも数mから10mちかくなってしまいます。

トウネズミモチの果実トウネズミモチの葉(葉の透視性に注意) トウネズミモチと日本在来のネズミモチとは、葉の大きさや樹形がかなり違いますから区別は比較的容易です。とくにトウネズミモチの葉は大きく、表面につやがあって柔らかな感じがしますので、葉が小さく、分厚い感じのするネズミモチとは明らかに違います。両者の間で何よりも違うのは葉脈で、日本のネズミモチは主脈はともかく、側脈が不明瞭でほとんど見えないのに対し、トウネズミモチは主脈も側脈も明瞭で、とくに葉を光にすかせてみると葉の縁と葉脈が白く透けて見えますのでいっぺんにわかります。また、実の形も違い、ネズミモチではネズミのフンのような長い楕円体であるの対し、トウネズミモチの実は球形にちかい楕円体です(左写真:トウネズミモチの葉の透視性(大阪府立大学 1999.7.28)、右写真:トウネズミモチの果実(大阪府立大学 2000.12.18)。

中国ではこの木の果実を干したものを「女貞子」といって強精薬とするほか、この木につくイボタロウカイガラムシから蝋をとる目的で栽培されているそうです。