サワラ  Chamaecyparis pisifera

サワラ(万博日本庭園(吹田市):2007.6.10.)

サワラ (万博公園日本庭園(吹田市):2007.6.10)

ヒノキ科* ヒノキ属 【*APGⅢ:ヒノキ科】

Chamaecyparis : 矮小なイトヒバ pisifera : エンドウ(Pisum)を有する

サワラはヒノキに非常によく似た日本特産の針葉樹で、意識して区別点を確認しておかないと、つい何もかもヒノキで済ませてしまう可能性があります。

サワラ(2007.6.10:万博日本庭園) ヒノキ(1999.8.25:奈良公園.) ヒノキとサワラの区別点は葉の形にあります。この両者は、平面的に枝分かれした小枝に、鱗のような小さな葉が十字対生していますが、対生する葉のうち、左右の葉と上下の葉で大小の違いがあり、先端がやや丸みをおびている(ヒノキ)か、左右、上下ともほぼ同じ大きさで先端がとがっている(サワラ)かが違っています。このことが原因で、平面的になった枝の裏側をみると、個々の葉の裏側(中心側)にある白い気孔帯の形がヒノキ(左写真:奈良公園 1999.8.25.)ではアルファベットのY字型にみえ、サワラ(右写真:万博日本庭園 2007.6.10)ではX字型にみえます。

サワラはヒノキに比べ変異性に富んでおり、サワラの原種とは似ても似つかぬ葉をつけた様々な園芸品種があります。その中でもヒムロとよばれるものは鱗片葉ではなく針状の葉を密につけた品種で、葉の表面が濃緑色、裏面が銀白色で美しく、また、赤褐色に枯れた古い葉とのコントラストの美しさが好まれて庭園木としてよく植えられています。ヒムロの葉は針のような形に似合わず柔らかく、さわっても痛くありません。これは、種子から発芽した直後に出てくる幼生葉の形態がそのまま成木まで維持されたためです。

ヒヨクビバ(大阪府都市緑化植物園(吹田市):2001.12.16) サワラの品種としてはほかにシノブヒバやオウゴンシノブヒバなどが生け垣や切り枝用としてよく植えられています。また、細長くしだれた枝をつけるヒヨクヒバ(右写真:大阪府都市緑化植物園 2001.12.16.)という品種もありますが、そっくりな形をしたスイリュウヒバというヒノキの品種があり、わたしにはこの両者をきちんと区別する自信はありません。