ナラガシワ  Quercus aliena

ナラガシワ(長居植物園:1999.10.9)

ナラガシワ (長居植物園:1999.10.9)

ブナ科* コナラ属(コナラ亜属)【*APGⅢ:ブナ科】

Quercus:良材 aliena:類縁のない、変わった

わたしがナラガシワという木の存在を知ったのは随分あとのことで、 木や草の名前を知ろうとがむしゃらに野山を歩き回っていた学生時代ではもちろんなく、 北海道のサロベツ原野で砂丘の上に、みごとな風衝形の林をつくっていたカシワの木を見たときより ずっと後のことでした。ですから、どこの山だったか公園だったか忘れましたが、一見、 カシワかと思うほど大きな葉をつけたこの木を見て、大阪という気候条件から考えてカシワであるはずがないと 直感的に判断したものの、そしたらこれは一体何者かというのが大きな問題でした。 今でこそ図鑑類や写真集もいろいろ出ていますから、何冊か調べれば大体の見当はついたはずですが、 当時は使える図鑑といえば牧野植物図鑑の旧版しかなく、この図鑑にはナラガシワが記載されていなかったのです。 ですから、私は長い間ナラガシワという名前すら知りませんでした。

だんだん目が肥えてくると、それまでコナラの化け物くらいで済ませていたナラガシワが、 場所によってはかなりまとまって生えていることも分かりました。 そんな中でも枚岡公園は特にナラガシワの多い場所のような気がします。 また、泉北ニュ-タウンの公園の中などにも時々植えられていますから、 本当のところは、コナラほどではないにせよ、かなりふつうに生えていると考えてよいでしょう。

ナラガシワは葉の形や大きさからすぐに柏餅のカシワの葉を連想しますが、 両者は葉柄の長さや鋸歯(きょし)の様子でかなりはっきり区別できます。 すなわち、カシワの方は葉柄がほとんどないといってよいほど短く、 また鋸歯が広く丸いのに対し、ナラガシワでは1~2cmのはっきりした葉柄があり、 また鋸歯の先端が多少ともとがった感じになります。 それと、多分気候的な成育条件にずれがあり、夏の暑い大阪の平地や低山帯でカシワを見ることはまずありません。 といっても、大阪にカシワが全くないわけではなく、桑島正一著「大阪府植物目録(近畿植物同好会刊)」 によれば能勢の鴻応山などで採集記録があります。 しかし分布は稀であると記載されています。