エゴノキ  Styrax japonica

エゴノキ(場奈良公園:2001.5.19)

エゴノキ (奈良公園:2001.5.19)

エゴノキ科* エゴノキ属 【*APGⅢ:エゴノキ科】

Styrax: stiria「涙」または「滴」(アラビア語) japonica: 日本の

エゴノキの果実(2000.7.8;奈良公園) エゴノキは北海道の一部を含め、本州、四国、九州から沖縄に至る広い地域に分布する 落葉広葉樹で、大阪近辺でもごく普通に見かける樹木です。5月の上旬~中旬にかけて、 枝いっぱいに白い花を咲かせますから、この頃山を歩きますと、 思ったより沢山この木が生えていることに、改めて驚かされます。 7月中旬にもなると果実もふくらみ、緑白色の2cmほどの実がたくさん 枝からぶらさがります(右写真:エゴノキの果実(奈良公園 2000.7.8))

エゴノキの花は春に新しく伸びた枝の上の方や、短枝の上の方から出た総状の花序に 4~6個ついています。合弁花なのですが、花冠が5つに深く切れ込んでいますので、 5枚の花びらがあるように見えます。直径は2~2.5cm、10本のおしべの黄色い葯との コントラストが美しい花です。この花の美しさを観賞するために庭木や公園樹木として 時々植えられていますが、残念ながら幹に虫が入りやすく、寿命はあまり長くないようです。

エゴノキの葉の透視性、ジグザグになった子枝(新梅田シティ:2007.7.7) 花や実のあるときは、他に似た木があまりないので間違えることはありませんが、 そうでない時は、暗褐色をしたなめらかな樹肌、多少ジグザグになった枝、透視性が高く(葉脈が透けて見える)卵形~ややひし形をした葉の形、 葉柄のつけね(葉腋)にできる大小2つの芽などが区別の手がかりになります。 とくに、葉腋にできる芽は黄白色の毛でおおわれていますので大変目だち、 冬に葉が落ちた後でこの木を見分けるときに大きな手がかりになります(右写真:エゴノキの葉の透視性、多少ともジグザグになった小枝(新梅田シティ:2007.7.7))

エゴノキの若い果皮にはエゴサポニンとよばれる物質がはいっていて、 古くから洗剤として用いられてきました。また、魚毒としても有名で、 未熟の果実をつき砕いて川に流し、魚を取るのによく用いられました (いまは禁止されているそうです)。果実だけでなく、樹皮を少し剥がして 噛んでみますとひどくえぐい味がして、なかなかもとに戻りません。 エゴノキという名前もこんなところからきているのかも知れません。 しかし、材は堅くて粘りがあり、ろくろ細工に適しています。抹茶をいれる棗(なつめ)も、 上等なものはエゴノキでつくられていると聞いたことがあります。