でんでんむしむしかたつむり…。子供たちがまだ幼いころ買った童謡の絵本に、大きなアジサイとカタツムリの絵がかいてあったのを覚えています。アジサイといえば梅雨、梅雨といえばアジサイとカタツムリ。アジサイはクチナシとともに梅雨を代表する植物といっていいでしょう。
アジサイという名前のつく植物はヤマアジサイ、ツルアジサイなどいくつかありますが、いわゆるアジサイは伊豆半島や伊豆諸島などの海岸部に自生し、また、庭にも良く植えられているガクアジサイから出たものです。ガクアジサイのガクとは額のことで、花序の周辺部にある花のガク片が花弁状の飾り花になり、額縁のように花序を取り囲んでいることからきたことばといわれます。アジサイはガクアジサイの全ての花が飾り花になったというわけです(写真:交野市私市(2000.6.24))。
アジサイに紫陽花という漢字を当てるようになったのは平安時代にさかのぼるそうですが、太陽のように丸い紫の花という意味ならよく植物の感じを表現していると思います。アジサイの花色の基本は青色ですが、その成育条件によってやや赤みがかったり、色が濃くなったり薄くなったりします。これは花の色を出すアントシアンという色素が、それと結び付く鉄やアルミニウムなどの金属の量や土壌の酸性度(pH)によって微妙に色を変化させるためです。ですから、気にいった花色のアジサイの枝をもらって挿し木で増やしたのに、同じような花色にならなかったということはよくあることです。
ヨーロッパで改良されたアジサイが西洋アジサイとかハイドランジアという名前で日本に逆輸入されたのは明治時代だそうですが、鉢植えのものを大量に見かけるようになったのは比較的最近のような気がします。花色がびっくりするほど豊富で、赤から黄色がかった色までまじったカラフルな花は、今までのアジサイのイメージを一変させるものでした。これらは日本特産のアジサイやガクアジサイ、ベニガクなどをもとに作り出されたものですが、本家の日本では、こういう方向への品種改良の努力はあまり行われなかったようです(写真:セイヨウアジサイの一種(東京大学小石川植物園(2000.6.3))。